健康診断で「肝臓機能のγ-GTPが高いですよ」と言われても、痛くもかゆくもないし、どうして高くなったのか全然分かりませんよね。
昔は「肝機能が悪い=アルコールの飲み過ぎ」と思われていましたが、お酒を飲まない方でもγ-GTPが上昇する場合はあります。γ-GTPが高いと言われたときに注意したい病気や、数値を下げるためにはどうしたらよいのかを見ていきましょう。
γ-GTPは何を表す数値なの?基準値は?
γ-GTP(ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ)は、腎臓や肝臓で作られ、たんぱく質を分解・合成する酵素です。そのため、肝臓や胆道に異常があると血液中にあふれ出てしまい、血液中の数値が上昇します。
この酵素は、肝臓や胆道に異常があるときに異常値を示します。特に、アルコールによく反応することで知られているため、アルコール性肝障害を判断する指標として聞いたことがある方も多いことでしょう。
γ-GTPの基準範囲
- 男性 0~50 IU/L
- 女性 0~30 IU/L
51~100 IU/Lで要注意(保健指導判定値)、101 IU/L以上で異常(受診勧奨判定値)とされます(「厚生労働省|標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年版】」より)。精密検査の指示を受けた場合、速やかに医療機関に行き、検査を受けるようにしてください。
健康診断でγ-GTPが異常値だった場合、どんな病気が疑われる?
γ-GTPは、肝臓や胆道に異常があると数値が上がります。そのため、数値が高いときには、アルコールの過剰摂取やそれによって起こるアルコール性肝障害、薬物性肝障害、急性肝炎、慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変、胆石症、胆汁うっ滞などを疑います。
それぞれについて、簡単に説明していきましょう。
アルコール性肝障害
お酒が原因で肝臓の機能に障害が起きてしまった状態をいいます。
長期にわたって多量の飲酒を続けていると、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝になってしまいます。それを放っておくとアルコール性肝炎やアルコール性肝線維症(肝臓内の組織が線維化する)からアルコール性肝硬変(肝臓が硬くなる)、さらにはアルコール性肝がんを引き起こし、死に至ることもあります。
アルコール性肝障害は、飲酒量が多ければ多いほど、そして飲酒期間が長ければ長いほど発症しやすくなります。しかし、自覚症状は出ないことも多いです。したがって、検査結果が異常値であった場合、早急に検査を受けることをおすすめします。
薬物性肝障害
薬物により肝機能障害を起こした状態をいい、アレルギー性と中毒性に分けられます。
アレルギー性の場合、ある特定の薬物に対して肝臓が過剰反応し、障害を起こします。そのため、少量の使用であっても問題が生じることがあります。
中毒性の場合は、原因となる薬物自体が肝臓に対して有害である(肝毒性)ため、その薬物を服用すると肝臓が処理することができなくなってしまいます。身近な薬であっても、決められた用法・用量を守らずに服用した場合などに肝機能障害が出ることがあります。
アルコール性肝障害同様、軽症の場合には自覚症状が出ないことが多いです。
急性肝炎・慢性肝炎
肝臓に起こる炎症を総称して肝炎と呼びます。肝炎ウイルスへの感染が原因となることが多いです。
急激に炎症が起こった状態を急性肝炎、炎症が6ヶ月以上持続した場合を慢性肝炎といいます。慢性肝炎が長引くと、肝硬変や肝がんになりやすいといわれます。
- 急性肝炎の原因:A型・B型・C型肝炎ウイルス、薬物など
- 慢性肝炎の原因:B型・C型肝炎ウイルス
このうちB型・C型ウイルスでは、一度感染した後にウイルスが排除されず、持続的に感染した状態の「キャリア」と呼ばれる人たちがいます。自覚症状はなく、自身で気付くことは難しいです。しかし上記の通り、感染が続くと肝硬変や肝がんになるリスクが高くなります。
肝硬変
肝炎ウイルスやアルコールなどによって肝臓の炎症が続くと、肝細胞が破壊されます。その細胞の再生が間に合わず、肝臓が線維化して硬くなった状態が肝硬変です。
徐々に、黄疸や腹水といった症状が出て来るようになります。また、一度硬くなった肝臓は元には戻りません。
胆石症
胆のうや胆管内に結晶ができた状態です。コレステロールの増加などが原因で起こります。
胆石が胆管を塞ぐと痛みや吐き気・嘔吐などが生じますが、胆のう内にとどまっている場合は無症状です。
胆汁うっ滞
肝臓で作られた胆汁がうまく流れない状態をさします。肝臓病のほか、胆管内の結石や、膵炎(膵臓の炎症)が原因で生じます。
尿の色が濃くなる、黄疸が出る、便の色が薄くなる、全身がかゆくなるなどの症状がみられることがあります。
γ-GTPの数値を下げるにはどうすれば良いの?
肝臓は、アルコールの分解以外にも様々な役割を果たしている臓器です。お酒の飲み過ぎによって機能が落ちてしまうとそれらの機能も果たせなくなってしまうため、アルコールをたくさん飲む方は禁酒もしくは節酒が原則となります。
どうしてもお酒を飲む場合でも、下記に注意してください。
- 空腹状態でお酒を飲まない
- アルコール度数の高いお酒を飲まない、もしくは薄めて飲む
- 週に1~2日程度の休肝日を設ける
- できるだけゆっくりと飲む
- 複数の種類のお酒を一度に飲まない(ちゃんぽんをしない)
- 深酒は控える
- 二日酔いになったときに迎え酒はしない
- お酒と一緒にカロリーの高いおつまみや食事を摂らない(カロリーの摂り過ぎに注意)
なお、1日のアルコールの適正量は、ビール中瓶1本500ml程度、日本酒1合弱(160ml)・焼酎コップ半分(100ml)ワインではグラス2杯弱(200ml)とされています。
アルコールを飲まないのにγ-GTPが高い方は、栄養過多による脂肪肝も疑われるため、以下のように生活習慣を見直す必要が出てきます。
- 暴飲暴食をしない
- 野菜を多く摂る
- 揚げ物や油っこいものは控える
- 適度な運動を始める
まとめ
γ-GTPだけが高い場合は、生活習慣やアルコールの量などをコントロールすれば数値が改善することがあります。肝臓が病気になってしまう前に何とかしたいものです。一方、γ-GTPは明らかな原因がないのに上昇する場合もあるので、改善しない場合は肝臓専門医の診察を受けることをおすすめします。
いずれにせよ、異常値であった場合にはすでに何らかの異常が生じている可能性も高いです。要精密検査との指示が出た場合は、速やかに医療機関で検査を受けるようにしてください。