急にガタガタと震えがしたり、背中や足元がゾクゾクする寒気といわれる症状。寒気の後に高熱が出ることもあれば、熱も出ず風邪のような症状もないことも。こうした寒気はどうして起きるのでしょうか? 寒気の原因となる病気について解説します。
寒気の原因として考えられる病気
寒気はなぜ起きるのでしょうか?
人間の身体はウイルスや細菌などが侵入すると、それらと戦うために体温が上昇(発熱)します。
体温が上昇すると侵入したウイルスや細菌の活性が低下する一方、人間の免疫力は高まります。人間の身体は発熱時には体温を外に逃さないように血管を閉じ、体表面の血流を低下させます。
このように、ウイルスや細菌と戦うための生理機能によって寒気は起きるといわれています。
寒気は発熱に伴う症状ですが、体温調節機能や免疫力には個人差があり、何℃以上になると寒気が出てくるという目安はありません。
高熱を伴う寒気の原因
1.感染症
呼吸器感染症
鼻から咽頭、喉頭、気管支、肺までの呼吸器に細菌やウイルスなどの病原体が侵入することによって起こる感染症です。
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって起こる呼吸器感染で、寒気を伴う高熱のほか、関節痛、倦怠感の症状が現れます。このほか代表的な呼吸器感染症には急性咽頭炎や肺炎などがあります。
尿路感染症
尿道口から膀胱、尿管、腎臓までの尿路に細菌やウイルスなどの病原体が侵入することによって起こる感染症です。
膀胱炎は大腸菌などが膀胱に侵入することによって起こる尿路感染症で、女性に多く見られます。
膀胱炎について詳しくはこちらの記事「女性は特に要注意。膀胱炎ってどんな病気?」をご参照ください。
また、腎臓に感染が及んだ状態が腎盂腎炎であり、一般的に膀胱炎よりも発熱や全身倦怠感などの症状が強く見られます。
消化器感染症
食道から胃、小腸、大腸が細菌やウイルスなどの病原体が侵入することによって起こる感染症です。食中毒に代表される細菌性腸炎は、嘔吐、下痢、腹痛とともに発熱の症状が現れます。
2.脳疾患
体温を調節する中枢機能は脳の視床下部(ししょうかぶ)にあります。脳梗塞や脳出血によって脳に障害を来たすと、意識障害や運動麻痺とともに発熱の症状が現れます。重度の熱中症も体温中枢の機能が低下することによって高熱を来たします。
3.その他
腫瘍熱は悪性腫瘍(がん)そのものが発熱を引き起こすもので、腫瘍の大きいものや他臓器に転移や浸潤しているものなど、重度の病状において比較的多く見られるものです。
膠原病(関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど)も発熱が見られる病気ですが、高熱には至ることは少なく、38℃以下の微熱が持続することが特徴とされています。
高熱を伴わない寒気の原因
1.女性ホルモンとの関連
生理周期による変化
排卵後から次の生理までの黄体期と呼ばれる期間は、黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きが活発になることから体温が上昇します。黄体期は受精卵の着床に備えて体温を高く(37℃前後)維持しようとするため、体表の血管を閉じ、熱を逃がさないようにしています。生理が始まると、黄体ホルモンの働きが弱くなるため体温は下がります。
人によってはこの体温の差が1℃以上あり、ホルモンバランスの変化がもたらす様々なストレスによって過敏に反応し、生理前や生理中に寒気を感じやすくなります。
更年期障害
更年期障害とは、卵巣機能の低下によって女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が低下することによって起こる様々な症状です。
なかでも自律神経の失調は、体温調節バランスを乱し、温度に対する感覚の不調を来たします。ホットフラッシュと呼ばれる急なほてりや発汗はこうした自律神経の失調症状のひとつです。更年期障害による寒気は、このホットフラッシュの反動、または表裏一体の現象として起こると考えられています。
2.ストレスとの関連
心因的なストレスにより自律神経のバランスを崩した結果、体温が上昇することがあります。
多くは37℃台の微熱が持続し、全身倦怠感や頭痛などの症状を伴います。
感染による発熱と異なり、病原体と戦おうとする物質(炎症性サイトカインとプロスタグランディンE2)は関与しないので、これらの物質の産生を抑える作用を持つ一般的な解熱剤が効かないことが特徴です。
まとめ
寒気は様々な病気の初期に起こる不快な症状です。感染症などの病気のサインとしてだけでなく、女性ホルモンとの関連やストレスとの関連があるものは、長期に渡る治療やケアを必要とする場合があります。