現代人の多くが悩まされているとされる「ドライアイ」。このドライアイはどうやって治療するのでしょうか?また、市販の目薬は使ってもよいのでしょうか。今回はドライアイの治療法について紹介します。

ドライアイについては「目が渇く!ドライアイとは一体どんな病気?」も併せてご覧ください。

目次

涙とは

涙は油層、水層、ムチン層(粘液層)の三層からできています。

  1. 油層:最も外側にあり、水層の分泌の蒸発を予防します。まぶたの縁にあるマイボーム腺から瞬きをすることによって分泌されます。
  2. 水層:主に上瞼(うわまぶた)の耳側にある涙腺から分泌されます。常に分泌されていますが、睡眠時には減少します。また、角膜と結膜の刺激や傷があると分泌は増加します。水の中には分解質、タンパク、ムチンが入っており、①角膜に酸素を運ぶ、②抗菌作用、③残骸を洗い流す、④角膜上皮の平滑化といった機能を持っています。
  3. ムチン層:角膜の表面にあるムチンと涙液中にあるムチンの二種類があり、これらのムチンが涙の水層を角膜、結膜に保持させています。涙液中のムチンは主に結膜にあるゴブレット細胞から分泌されます。

ドライアイの分類と原因

ドライアイは油層が少なくなることによって水層が蒸発する蒸発亢進型ドライアイと、水層が少なくなる涙液減少の二つのタイプに分けられています。

  1. 油層の減少:機序として、①瞬きが少なくなる場合と、②マイボーム腺の機能障害によって分泌が低下する場合があります。瞬きが少なくなる理由として、パソコンのディスプレーやスマートフォンを見ることがあり、意識的に瞬きを行うことが重要です。
    マイボーム腺の機能障害の原因として、コンタクト装用、眼瞼炎(がんけんえん)、アトピー性角結膜炎、マイボーム腺梗塞などがあります。
  2. 水層の減少:原因として、加齢、環境(エアコンによる湿度低下)、自己免疫疾患(シェーグレン症候群サルコイドーシス等)、コンタクト装用、レーシックなどの術後、パーキンソン病などがあります。
  3. ムチン層の減少:原因として、結膜炎、薬剤性の副作用があります。ムチン層が少なくなると涙液減少と蒸発亢進型ドライアイの両者が起こることがあります。

市販の点眼薬による治療とその副作用

ドライアイが軽症の場合には市販の点眼薬で症状が軽減されることがあります。しかし、注意して頂きたいのが、点眼薬に入っている防腐剤が角膜上皮障害や結膜炎を引き起こすことがあることです。

特に、防腐剤のうち、塩化ベンザルコニウムの副作用として角膜上皮障害があることは眼科医にはよく知られています。この角膜上皮障害はドライアイが原因でも、よく見られます。角膜上皮障害の原因がドライアイだと考え、ドライアイの治療を行っても治らず、実はその原因がそれまで使用していた点眼薬に入っていた塩化ベンザルコニウムだと分かり、その点眼薬を中止することによって治ることがあります。

塩化ベンザルコニウムはクリニックで処方される医療治療点眼薬にも、市販の点眼薬にもしばしば入っています。その濃度は、処方される点眼薬よりも市販の点眼薬の方が高く、そのことによって、長期使用が可能ですが、角膜上皮障害を引き起こす可能性も高くなります。従って、市販の点眼薬では塩化ベンザルコニウムが入っていないものを選ぶことをお勧めします。

ドライアイの治療

ドライアイの治療として、まずは原因除去、原因疾患の治療があります。

  • お仕事でパソコンを見る場合は意識的に瞬きをしましょう。
  • 室内の空気が乾燥している場合は加湿器を使用しましょう。
  • コンタクトの装用が原因だと考えられる場合はコンタクトの装用を中止、あるいは装用時間を短めにしましょう。放置すると、角膜上皮障害から感染性角膜炎に至ることがあります。
  • 塩化ベンザルコニウムなどの薬剤性が原因だと考えられる場合は、可能ならば、それを中止しましょう。
  • 瞼をお湯で温めたタオルで覆う温罨法(おんあんぽう)を行いましょう。このことによってマイボーム腺からの分泌量が増えます。
  • 眼瞼炎の場合はこの温罨法と抗生物質の内服治療が必要になることがあります。
  • 炎症が原因と考えられる場合は、炎症を抑えるために、ステロイド点眼薬が処方されることがあります。

クリニックで処方されるドライアイ点眼薬としてヒアルロン酸ナトリウム点眼薬があります。これは以前から処方されていて、現在も最も処方されているドライアイ点眼薬ですが、数年前にムチンを増やす点眼薬として、レバミピド点眼薬(商品名 ムコスタ点眼液)とジクアホソルナトリウム点眼薬(商品名 ジクアス点眼液)が出現して、さらに改善が見られるようになっています。

これらによっても十分な治療が見られない重症例では、涙の出口である涙点を塞いで、涙を目に貯める涙点プラグや、油層の補充として油のクリームが処方されることがあります。

まとめ

涙は油層、水層、角膜の三層から出来ていますが、市販のドライアイ点眼薬は水層の補充のみです。軽症例の場合はこの点眼薬で症状が軽減されることはありますが、防腐剤が角膜上皮障害を引き起こし、むしろ角膜を悪化してしまうことがあります。ドライアイには様々の治療方法があります。改善が見られない場合は、一度、眼科を受診して下さい。