入浴の後に肌がつっぱる、肌がカサカサしてかゆい、肌に触れるとゴワゴワしている。このような症状でお悩みの人は、肌が乾燥しているのかもしれません。生活習慣やスキンケアの影響によって肌が乾燥することもありますが、実は病気が原因のこともあります。今回は、乾燥肌についてご説明します。

目次

皮膚のしくみは?

皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3つの層からできています。一番表面にあるのが、表皮です。

表皮

細菌や紫外線などの外部の刺激から肌を守ります。

真皮

皮膚の本体で、血管、リンパ管、神経、毛根、皮脂腺、汗腺などが集まって皮膚の健康を保ちます。コラーゲンとヒアルロン酸などの身体が持つ保湿成分によって満たされ、皮膚のハリをつくります。

皮下組織

脂肪を蓄えて、エネルギーを作り、身体の温度を一定に保ちます。

皮膚の役割は?

皮膚は外部との境界線の役割を果たして、様々な刺激から身体を守るはたらきをしています。

  • 紫外線や病原菌などの侵入を防いで身体を守る
  • 体温を調節する
  • 皮脂の分泌や塩分などの体内物質の排泄を行う
  • 必要なものの流出を防いで体内環境を一定に保つ
  • 皮膚に張り巡らせた神経が外部の情報を脳に伝える

なぜ皮膚が乾燥するの?

健康な肌には、皮膚の一番外側の角層に存在するセラミドなどの角質間細胞脂質や、角層細胞内の潤いを保つNMF(Natural Moisturizing Factor)など人体が備える天然保湿因子があり、水分を抱えこみ肌を潤わせています。そして、角質層の表面に汗と皮脂が混ざった皮脂膜があり、肌から水分が蒸発するのを防いでいます。

しかし、皮膚が乾燥すると、皮脂膜が壊れて肌の水分が蒸発していき、セラミドも不足して角質層のうるおいがなくなり、身体を守るバリア機能が働かなくなって、外部からの刺激を受けやすくなります。乾燥が進むと、かゆみを感じたり肌が粉をふいたように白っぽくなることがあります。皮脂の分泌量が少ない顔、腕、脚は特に乾燥しやすくなります。

肌の乾燥の原因は?

手

乾燥の原因を大きく二つに分けて説明します。一つ目は、皮膚病などの病気が原因で肌が乾燥する場合で、二つ目は、生活習慣やスキンケアの影響によって肌が乾燥する場合です。

病気によるもの

アトピー性皮膚炎

かゆみのある発疹を繰り返し発症する病気です。肌の乾燥も激しく、皮膚が厚くなり、症状が進むと、色素沈着を起こして肌が黒ずむこともあります。原因はまだ特定されていませんが、生まれつきの体質や肌のバリア機能の異常によるものと考えられています。

アトピー性皮膚炎については、「アトピー性皮膚炎の基礎知識!悪化させる5つの原因とメカニズム」もご覧ください。

手湿疹

炊事や洗濯などの水仕事をする人に多く発症する手荒れのことを、「手湿疹」と呼んでいます。「主婦湿疹」、「進行性指掌角皮症」などと呼ばれることもあります。洗剤や石けんを頻繁に使うことで、肌の皮脂が奪われ、肌を保護するバリア機能が弱まり、外部からの刺激を受けやすくなります。主な症状は、肌の乾燥、発疹やひび割れです。よく使う指先から発症することが多く、手のひらに広がっていきます。手以外には症状が見られません。

手湿疹については、「手がかゆくて仕方ない。これって手湿疹?」もご覧ください。

甲状腺機能異常

甲状腺の機能が低下する「甲状腺機能低下症」では、甲状腺ホルモンが不足したために発症して、身体の代謝が低くなり、精神機能の低下、眠気、記憶障害、無気力などが生じることがあります。また、肌が乾燥してかゆくなったり、毛が抜けたりむくむこともあります。

生活習慣によるもの

環境

病気以外で肌が乾燥する主な原因は、身体をとりまく環境です。秋から冬にかけては、空気が乾燥するので、肌も水分不足となる上に、寒さで皮脂や汗の分泌が減り、保湿機能が弱まるために乾燥します。また、湿度の高い夏も、エアコンの効いた室内は乾燥しているので、室内で過ごす時間が長い人ほど、肌が乾燥しやすくなります。

加齢

年齢が上がるにつれて、皮脂や汗の分泌量が減り、角質層の細胞のすきまをうめているセラミドなどの脂質も徐々に減っていきます。その結果として、角質が水分を保つ働きが弱くなり、肌が乾燥しやすくなります。

間違ったスキンケア

メイクを完全に落とそうとして、クレンジング剤で肌を強くこすったり、熱いお湯で洗顔をすることは、肌にとって強い刺激となります。皮脂膜が壊れてしまい、角質細胞間脂質の一部が失われて、肌の乾燥を招くからです。また、日ごろのスキンケアを化粧水だけで済ませていると、肌から水分が蒸発して、潤いが保てなくなります。

ダイエットなどの食事制限

無理なダイエット、偏食、多忙な仕事などが影響して、食生活が不規則になると、たんぱく質、脂質、ビタミンAなど肌を作るのに必要な栄養が不足して、肌の乾燥が進みます。

まとめ

皮膚は、外部との境界線の役割を果たしており、病原体などの刺激から身体を守っています。健康な肌は、身体が持つセラミドなどの保湿成分によって水分量を保っていますが、乾燥が進むとバリア機能が弱まり、肌は刺激を受けやすくなります。肌が乾燥しているとき、まずお手入れを見直す人が多いかもしれませんが、乾燥の原因は身の周りの環境の他に、アトピー性皮膚炎などの病気の可能性もあります。身体に異変を感じたら、医療機関を受診するようにしましょう。