「あと少し」「ここまでだから」と作業に集中して、ついトイレに行くことを我慢してしまうことはありませんか?その我慢が、後々大きな病になってかえってくるかもしれません。
膀胱炎と似ている症状ですが異なる病気である、腎盂腎炎の原因と症状について、医師・吉田 啓先生による監修記事で解説します。
腎盂腎炎(じんうじんえん)とは
簡単にいうと、尿を作る腎臓に細菌が感染して起こる炎症のことです。この病気には女性がかかりやすく、男女比は1:30(知って得する病気の知識|腎盂腎炎より)とされています。理由としては、女性の方が男性に比べて尿道が狭い・尿道口と肛門が近いので尿道に菌が入り込みやすいことがあります。
さらにこの腎盂腎炎は、以下の2種類に分類されます。
急性腎盂腎炎
普段は菌が存在しない腎臓内へ細菌が侵入してしまい、炎症を起こしている状態です。
突然症状が現れ、早期に治療できれば3~5日で症状が落ち着きます。しかし悪化すると入院しなければならない場合もあり、注意が必要です。気づかずに放っておくと慢性に移行する可能性があります。
慢性腎盂腎炎
他の疾患の影響によって、持続的な炎症を起こしている状態です。
症状には様々あり、急性腎盂腎炎のような症状が出ることもあれば、微熱・体のだるさ・食欲不振・吐き気といった風邪と似たような症状が出る場合もあります。さらに全員にこのような症状が出るわけではなく、自覚症状がない場合もあります。
何が原因になるの?
腎臓に存在しない細菌が侵入することが原因です。侵入経路として、尿道から細菌が逆流する、体の別部分で感染した細菌が血管を通じて腎臓へ侵入する、腎臓周囲のリンパ腺から感染する、などがあります。
これらの多くは尿道が狭くなる・尿が逆流することから腎臓に細菌が入り込み、腎臓に炎症を引き起こしています。そのため、妊娠している・前立腺肥大である・尿路結石があるといった方は要注意です。
さらに糖尿病などの細菌への免疫力が落ちている、ステロイド剤・抗がん剤を使用して免疫力が低下している方も感染しやすくなるとされています。
どんな症状が出るの?
- 悪寒
- ふるえ・歯がガチガチする
- 高熱(38℃以上のことが多い)
- わき腹が痛む
- 全身のだるさ
- 吐き気・嘔吐
- 膀胱炎の症状が起こる(残尿感・頻尿・血尿や白濁尿)
- 背中や腰が痛む(詳しい痛む場所は「背中が痛い…これって何かの病気?」をご参照ください)
特に、太字の症状は初期症状として出てくるとされています。さらに詳しい膀胱炎の症状については「女性は特に要注意。膀胱炎ってどんな病気?」をご参照ください。
症状としては上記のものが多いですが、症状が感じられない場合や風邪のような症状が現れる場合もあります。何かおかしいと感じたら、すみやかに泌尿科か内科を受診することをおすすめします。
膀胱炎との見分け方は?
膀胱炎と症状が似ている腎盂腎炎ですが、見分け方としては発熱しているかどうかとされています。発熱がなければ膀胱炎、発熱していれば腎盂腎炎とされています。
しかし男性の場合は、発熱している場合前立腺炎の可能性もあるので注意が必要です。
まとめ
膀胱炎と似たような症状が多い腎盂腎炎、症状がないこともあるため、少し尿がおかしいけれど症状もそんなにないからと放っておくと大変なことになるかもしれません。
早期に発見・治療できれば自宅でも療養が可能な病気ですので、少しでも異常を感じたら、病院へ行くことをおすすめします。