心筋梗塞と聞くと、心臓の病気であり、歯とは関係ないことのように感じるかと思います。
しかし最近の研究で、これら2つの病気の関連について様々なことが分かってきました。今回は、この歯周病と心筋梗塞の繋がりについてご説明します。

目次

心筋梗塞ってどんな病気?

心臓の筋肉は、冠動脈と呼ばれる太い血管から栄養と酸素を得ています。この冠動脈が動脈硬化によって硬くなってしまい、血液の流れが悪くなった状態を狭心症と呼びます。

狭心症では、胸の圧迫感や痛みなどの一時的な発作が起こります。この狭心症がさらに進行して冠動脈が完全に詰まってしまった状態を心筋梗塞といいます。

心筋梗塞では失神するような激しい胸の痛み心臓の停止、場合によっては突然死を起こすことがあります。心筋梗塞は、命に直結する重篤な病気なのです。

歯周病菌は動脈硬化の原因に

では歯周病と心筋梗塞はどんな関係があるのでしょうか?
心筋梗塞は動脈硬化が原因であることは前述しましたが、実はこの動脈硬化の原因の一つとして、歯周病の原因菌への感染が考えられているのです。

口の中に住んでいた歯周病菌は、腫れ上がった歯肉から血管内に入り込みます。
血管内に入った歯周病菌は血管壁に作用して動脈硬化を促進することが知られています。

歯の病気の原因菌が全身や心臓に悪さを働くというのは、なかなか想像がつきづらいかもしれません。しかし実際に、動脈硬化を起こした部分からは歯周病菌が数多く発見されるといいます。また、歯周病にかかっている人では、心血管疾患の発症リスクは1.15〜1.24倍高まるとのデータもあります(日本歯科衛生士会より)。

当然、全ての心筋梗塞の原因が歯周病にあるわけではありません。しかし、歯周病は動脈硬化を進行させる原因になってしまうため、放置せずにしっかりと治療を行ってください。

歯周病の治療で心筋梗塞が治るの?

前述でご説明してきたように、心筋梗塞は命に係わる重篤な病気です。すぐに救急車を呼んで一刻も早い治療が必要になります。残念ながら歯周病の治療で治るような病気ではありません。
しかし動脈硬化を予防するための1つの手段にはなります

毎日のお口のケアと定期的な歯科医院でのケアを行っていくことで歯周病菌の働きを抑えていくことが可能です。歯周病菌を抑えることが出来れば動脈硬化のリスクも減らすことが出来、その結果として心筋梗塞の予防へと繋がっていきます。

そのほか、動脈硬化の原因としては食生活、肥満、ストレス、喫煙の4つが挙げられます
食生活では油ものやアルコールを多く取ることを控え、適度な運動をすることを心掛けましょう。さらに仕事や家庭でのストレスを少なくして十分な睡眠と休息を取り、タバコは吸わないようにすることが、動脈硬化および心筋梗塞を予防する方法です。

最後に

「歯周病はたかが口の中の病気」「死ぬことはないから放っておいても平気」そう考えている方も多いと思います。しかし最近になって、様々な全身疾患が口の中の病気と関係していることが分かってきました。
今回紹介した心筋梗塞だけでなく、脳卒中や糖尿病肺炎、低体重児出産や早産といった様々な病気に、歯周病が関連していると考えられています。
早めの治療が、あなたの生命を守ることに繋がるかもしれないのです。