人間の血液は、「液体成分(約55%)」と「細胞成分(約45%)」に分けられます(日本赤十字社より)。
液体成分のほとんど(約91%)は水分です。

一方、細胞成分は赤血球、白血球、血小板の3種類の血球から構成されており、このうちの約90%は「赤血球」です。

赤血球の量は健康状態をはかる指標の1つで、多すぎても少なすぎても体に影響を及ぼします。
検査値が異常の場合は、何らかの病気があると疑われます。

目次

なぜ、人間の血は赤いのか?

赤血球は「ヘモグロビン」を詰める袋のような存在です。
ヘモグロビンは「ヘム」という赤い色素と、「グロビン」という球状のタンパク質が結合した物質で、肺から全身へ酸素を運ぶ役割を果たします。

赤い球が詰まっているため「赤血球」と名づけられています。
その赤い血球が血液成分の半分近くを占めているため、人間の血液は赤い色をしているのです。

やわらかく、しなやかな血球

バレリーナ-写真

赤血球は円盤状で両面の中央がくぼんだ形をしています。
やわらかく、しなやかで弾力性に富んだ性質が特徴です。

そのため、細い血管(毛細血管)でもスムーズに通り抜けるのが得意です。

その特徴をいかして、赤血球は、肺から酸素を取り込み、血管内を運搬して体の各細胞にまで届けています。
また、二酸化炭素の一部を回収して、肺に戻し、肺胞から外に排出する働きを担っています。

赤血球の「正常値」を知っておこう

赤血球は、背骨・骨盤・肋骨・胸骨などのなかにある「骨髄」で作られ、体中に酸素を運搬しつづけ寿命を迎えます。
役目を終えた赤血球は、肝臓や脾臓で壊されます。

失った赤血球を補うために、骨髄は1日に約2,000億個の赤血球を作ります(大阪市立大学医学部医学情報センターより)。

女性は、生理や妊娠のときに赤血球の数値が低くなることがありますが、一般的に赤血球の量は、健康であると一定に保たれ、体調を崩したときには数値が変化します。

正常値は次のとおりです。健康診断の結果と照らし合わせてみましょう。

  • 男性:400万~539万/ナノリットル(容積率:39.7~52.4%)
  • 女性:360万~489万/ナノリットル(容積率:34.8~45.0%)

赤血球が「多い」とドロドロ

赤血球が多いと「多血症(赤血球増多症)」の疑いがもたれます。
多血症は、血液の粘性が高い「ドロドロ血液」で、血液の流れが滞っている状態です。

原因には、骨髄の造血細胞が異常増殖しておこる場合(真性多血症)と、血をつくる量を調整するホルモンが異常分泌されておこる場合(二次性多血症)があります。

また、下痢異常な発汗などによる体内水分量の減少により相対的に赤血球の割合が大きくなることもあり、これは相対的赤血球増多症と呼ばれています。
ストレス、肥満、喫煙、高血圧が原因と考えられます。

真正多血症・二次性多血症の場合には、それぞれ細胞の異常増殖やホルモンの異常分泌を改善するための根本的な治療が必要となります。

一方、相対的な赤血球の増加の場合には、日常的に水分補給を十分に行うことが血液濃度を下げることにつながります。

また、その他ストレス、肥満などが原因となっている場合には、生活習慣の改善を心掛けましょう。

赤血球が「少ない」とフラフラ

赤血球が少ない状態を「貧血」といいますが、原因として多いものは鉄欠乏性貧血です。

また、女性では月経、不正出血子宮筋腫、男女共通の原因としては胃腸からの出血も疑われます。
10分ほどの歩行で疲れを感じる、階段を上るだけで息切れする、あるいは頭痛・めまい・動悸が頻繁に起こるときは、こうした貧血の可能性を考えましょう。

この点、赤血球の寿命は約120日で、私たちの体は毎日約20~25gの鉄を必要としています。
ところが、1日に必要な鉄のすべてを食事として摂取する必要はなく、食事として1日に必要な量は約1~2gとされています。

これは、古くなった赤血球を体内で再利用するしくみがあるためです(代謝と鉄欠乏性貧血―最近の知見―より)。

しかし、閉経前の女性の場合などは、月経により鉄が定期的に失われているため、赤血球以外の場所に貯蔵された鉄が少なくなっている(潜在的貧血)ことが多くあります。
そのため、摂り過ぎる必要はありませんが、意識的に鉄分の入っているものを摂取するよう心がけるとよいでしょう。

また、貧血があれば一度、内科を受診しましょう。

まとめ

赤血球は、ものすごいスピードで血管のなかを循環し、酸素を体内のすみずみに運搬する細胞です。
赤血球の異常では、血液がつまる・酸素が行き届かないなどの症状が起こります。

心筋梗塞脳梗塞糖尿病貧血などの病気を引き起こす可能性があります。
血液内科での治療とあわせて、摂取する食品選びや食事方法など生活習慣の改善を心がけましょう。

貧血があった場合、消化管からの出血や、女性の場合は婦人科の病気が原因となっている可能性もあります。
まずは内科を受診し、検査を受けてください。