「感染性胃腸炎」はウィルスや細菌などによって引き起こされ、下痢やおう吐などを主な症状とする胃腸炎のことです。感染性胃腸炎の中でも食中毒の原因ともなる「腸炎ビブリオ」について今回はご説明致します。

目次

腸炎ビブリオとは?

腸炎ビブリオは沿岸の海水中に生息している菌で、感染型の食中毒を引き起こします。水温が20℃以上になると活動が活発になるため、7月から9月の夏に多く発生し、冬の間は海底の泥や土の中でプランクトンに付着して生きています。真水(水道水)や酸、熱に弱い菌です。

腸炎ビブリオの汚染経路

主に海産魚介類の表面に菌がついており、何らかの形で菌を体内に取り込んでしまうことによって発症します。汚染された食材を生で食すほか、調理した手指、まな板、ふきんなどを介して二次汚染を起こすこともあります。腸炎ビブリオに汚染されやすい食品としては、近海産のサバ、アジ、タコ、イカ、ばか貝(舌切り、アオヤギ)、アカガイなどの体の表面、内臓、エラなどが挙げられます。

潜伏期間と症状について

体内に取り込まれた腸炎ビブリオは腸管内で毒素を産生し、それによって様々な症状をもたらします。潜伏期間は、一般的には10~24時間程度と言われていますが、短い場合ですと2、3時間で発症することもあり、時間の幅が広いため一概には言えません。

主な症状は、下痢激しい腹痛嘔吐や発熱などの急性胃腸炎症状です。ときには粘液便、血便を伴うこともあり赤痢患者と間違えられることもあります。発症後はおよそ2~3日間で回復しますが、まれにチアノーゼ、ショック、不整脈低血圧などの循環器症状を起こして死に至ることもあります。

治療方法は?

家庭でできる処置は特にないため、医療機関を受診してください。

通常は抗菌剤治療を行わなくても数日で症状が改善するといわれていますが、医療機関では体液や電解質の補正を行います。下痢止めの薬は一般的には使わない方が良いとされています。症状が強い場合には、初期のうちに抗菌剤を使うこともあります。

家庭で気を付けること

魚を洗う

腸炎ビブリオは、海水とほぼ同じ塩分(3%前後)で発育増殖します。最低発育温度は、12℃です。熱や酸に弱く、65℃で5分加熱することで死滅しますが、耐熱性溶血毒(下痢を起こす腸管毒などと知られています)は、100℃で10分加熱しても抵抗します。菌は4℃以下では増えないので魚介類を保存するときは、冷蔵庫のチルド室(0~4℃)を使うようにします。チルド室がないときは、冷蔵庫の中の下の方が上よりも温度が低いので、庫内の下の方に魚介類を保存するようにします。

  • 海産魚介類は購入から調理直前まで10℃以下での低温管理を徹底する
  • 調理前に海産魚介類を真水の流水でよく洗う
  • やまな板などの調理器具の清浄に注意して二次汚染を防ぐ
  • まな板を使い分け、魚介類を調理したまな板で野菜などを切らない
  • 夏に魚介類を生で食べるときは、十分に注意をして少しの時間でも冷蔵庫で(できれば4℃以下に)保存する
  • 冷凍食品を解凍するときは、専用の解凍庫や冷蔵庫内で行う
  • 加熱調理をするときは、中心部まで十分に加熱する(60℃で10分以上加熱する)
  • 料理後はできるだけ早く食べる

など

まとめ

腸炎ビブリオは海水の中にいて、気温の高くなる時期に魚介類などを汚染します。手や指、まな板やふきんなどを介して二次汚染することもあるので、調理や保存の際には注意が必要です。菌は4℃以下では増えないので、低温管理、加熱料理の徹底、調理器具の洗浄などを心掛けることで食中毒を防ぎます。