カンピロバクターは充分に加熱されていない鶏肉などから感染する、食中毒の原因菌のひとつです。感染者やペットのふん便から、他の人にうつってしまうこともあるため、患者さんはもちろん、ご家族も注意が必要な菌となっています。
この記事では、カンピロバクターの感染経路や症状、潜伏期間などについてみていきます。

目次

カンピロバクターって何?

カンピロバクターは、感染すると腸炎をひきおこす菌で、5~7月に流行します。鶏、牛などの家きんや家畜をはじめとしてペット、野鳥や野生動物などの多くの動物が保菌していますが、特に鶏は高確率で汚染されていると考えられます。人間が感染してしまうパターンは食中毒感染症のどちらかで、カンピロバクターに汚染されている食品や水を摂取してしまったか、感染者、もしくは家畜やペットのふん便に触れてしまった後の手洗いが不十分だった可能性が考えられます。

潜伏期間と症状

カンピロバクターに感染すると1~7日の潜伏期間を経て、腹痛、発熱、下痢吐き気、嘔吐、頭痛悪寒倦怠感などの症状が出ます。

下痢止めの薬を服用して安静を保てば多くの方は1週間程度で治り、予後も良い病気です。ただし、小さいお子さんや高齢の方など、抵抗力の弱い方は重症化する危険性があります。激しい下痢や腹痛を伴うときは、医療機関(内科、胃腸科、消化器科)を受診して適切な治療を受けましょう。

まれに胃腸炎症状が治まってから10~30日後位に末梢神経麻痺が起こる神経疾患(=ギラン・バレー症候群、下記に詳細記載)を発症することがあります。手足の麻痺、呼吸困難など、異常を少しでも感じたら、神経内科のある病院を受診しましょう。

ギラン・バレー症候群とは

身体に侵入した細菌やウィルスなどから身体を守るための免疫抗体が、自分の末梢神経を逆に攻撃することによって起こる症状です。手足のしびれや麻痺がみられて歩行困難になることもあります。

症状は2~4週間ほどでピークを迎えます。その後良くなっていくことが多いのですが、麻痺が残る場合もあるので早期の診断・治療が重要です。

全国調査では発症後13.3%の人たちに呼吸筋麻痺がみられ、人工呼吸器管理が必要な場合もあります日本神経学会より)。症状があったり、疑わしかったりした場合は早めに医療機関を受診しましょう。

カンピロバクター食中毒の原因となる食品は?

カンピロバクターの主な原因食品や感染源として、生の状態や加熱不足の肉や調理中の取り扱い不備による二次感染が推定されています。特に鶏レバーささみなどの刺身、鶏肉のタタキなどの半生製品などには注意が必要です。

家庭での対策

コンロ-写真

カンピロバクターの特徴として、食肉やレバーなどの内臓肉が特に汚染されている可能性が高いこと、鮮度が良く低温管理された肉ほど菌が生き残ること、少しの菌量でも感染を引き起こすことなどが挙げられます。菌は乾燥と熱に弱いため、調理の際には充分な加熱を心がけましょう

調理中の注意

  • 食肉を十分に加熱調理する(一般的には中心部を75℃以上で1分間以上加熱する)
  • 鶏肉やレバー、牛レバーなどの生や生に近い調理は食中毒のリスクが高いことを認識する
  • 鶏のささみは湯引き程度ではカンピロバクターは死滅しないので注意する
  • 肉専用の包丁とまな板を用意して使った後はすぐに洗浄・消毒をする
  • 生肉を扱った後は十分に手指を洗浄・消毒してから次の作業を行う
  • 生肉の作業と他の調理は離れて設置した調理台で行う、作業時間を変えるなどして、近接した場所で同時に行わない
  • 生肉は専用のふた付き容器に入れて保存する
  • 冷蔵庫内で生肉と他の食品との接触、ドリップの漏れによる汚染に注意する
  • 焼き肉や鍋物などをするときは、生肉に自身の箸で触れないで、肉専用の箸やトング(はさんで食材を取るキッチン用品)を用意する

など

それ以外での注意

  • 排便の後にはしっかり手を洗う(小さなお子さんにも指導を徹底する)
  • トイレ内はこまめにエタノールなどの消毒剤をつかって消毒する
  • ペットに触ったあとも手を洗う

など

まとめ

カンピロバクターは、ニワトリやウシなどの多くの動物が保有していて、ヒトや動物の腸管の中で増えます。食中毒の予防のほか、感染者やペットのふん便の取り扱いにも注意することで感染を予防しましょう。