人が咳き込んだときに考えられる疾患は風邪や気管支炎、肺炎などさまざまです。そんなときは咳の出方などによってどんな病気が原因なのか推測できることがあります。

子供が変な咳、犬が吠えるような咳をしていた場合は「クループ症候群」が疑われます。今回は子供によくみられるクループ症候群について症状や治療などを紹介していきます。

目次

クループ症候群とは

クループ症候群とは「喉頭(こうとう)気管支炎」とも呼ばれる呼吸器の病気です。喉の中でも喉頭と呼ばれる場所に炎症が起きます。喉頭は空気の通り道であり、口や鼻から気管支、肺へとつながっている場所であり、声帯と呼ばれる発声器官が近いです。

患者の多くは子供で、春から秋秋から冬と台風などの気圧低下時に多くみられます。一般的には数日で完治する病気ですが、重症化すると呼吸困難のような状態にまでなってしまうことがあります。

原因

主な原因はウイルスによる感染です。原因となるウイルスにはパラインフルエンザウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルスなどが挙げられます。

空気中に漂うウイルスを吸い込んだり、ウイルスに汚染されたものに触れた手を介したりして感染していきます。かかりやすい年齢は生後6ヶ月~3歳ですが、これ以外の年齢で発症することもあります。

症状は独特な咳や喘鳴、声がれ

咳き込んで辛そうにする幼児-写真

初期症状は風邪とよく似ていて、鼻水くしゃみ微熱などがみられます。なかでも特徴的な症状はです。このほかひどくなると動悸、チアノーゼ(呼吸困難のために皮膚、唇が青白く変色する)がみられることもあります。

喉頭には発声に必要な声帯があるため、この声帯に炎症が及んでしまうと犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)、吸気性喘鳴(きゅうきせいぜんめい)、嗄声(させい:声がかれること)、呼吸困難感などがあります。

症状は夜に顕著になる傾向があり、日中は落ち着いているのに寝ているときに悪化することも珍しくありません。以下に具体的な症状を紹介します。

犬吠様咳嗽

「ケンケン」と犬が吠えるような特徴的な咳がみられます。オットセイの鳴き声と例えられることもあります。

吸気性喘鳴

のどの腫れによって空気の通り道が狭くなっていきます。そのため息を吸うときに「キュー」と音が鳴ります。

嗄声

声がかすれる、あるいは出なくなります

検査

診断には問診が重要で、特に犬吠様咳嗽が手掛かりになります。このほか、血液検査から炎症の程度を調べます。

レントゲンでは通常、空気の通り道は周りよりも黒く映ります。クループ症候群では喉頭が腫れて空気の通り道が狭くなっているため、ペンシルサイン(気道が鉛筆の芯のように細く映し出される)と呼ばれる様子がみられます。

治療

特徴的な症状がみられた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。子供は症状が急激に変化する恐れがあるためです。特に高熱や多呼吸などの呼吸困難感、動悸、チアノーゼ、顔色不良などがある場合や、症状のために夜寝付けないようなときにはより早急な対処が必要になります。

軽症であれば、保湿や安静、水分補給を心掛ければ通常は3~4日で回復します。

特に子供は大人と比べると身体の水分が失われやすいため、水分補給はしっかり意識しましょう。

また乾燥すると症状が悪化するため、家庭では加湿器などを使って湿度を上げるようにしてください。加湿にはの排出を促す効果もあります。お風呂に入れる場合は湯冷めに気をつけましょう。

症状が強い場合には、自宅での治療に加えて咳を抑える薬や痰を出しやすくする薬が処方されることもあります。重症例では入院管理のもと炎症を抑えるためにステロイド薬の内服・吸入を使用することもあります。

まとめ

クループ症候群は風邪のような症状が中心ですが、重症化してしまうと呼吸困難のような状態に陥る可能性があります。特に小さい子供は症状が変動しやすく、急激に悪化する恐れがあるので、犬が吠えるような咳がみられた場合は速やかに医療機関を受診してみましょう。