風邪をひいたがいつもより長引く、熱が下がらない、という場合、風邪とは異なる病気を発症している可能性があります。風邪をこじらせるとやっかいな病気を発症させてしまうことがあるのです。

ここでは、風邪をきっかけに発症しうる病気について解説します。

目次

風邪のときは「二次感染」にご注意を

風邪をひき、免疫力が低下した状態が続くと、新たな感染(二次感染)を受けやすくなります。風邪の原因の多くはウイルスです。ウイルスが上気道(のど・はな)以外の部位にも入り、感染を引き起こすケースや、細菌(さいきん)など別の病原体に感染してしまうケースがあります。

通常の風邪であれば2~3日程度で治ります(株式会社エーザイ ウイルス・菌対策研究所より)。しかし、それ以降も症状が続き、「熱が下がらない」「新たな症状がでてきた」という場合は、二次感染の可能性があります。この場合には、早めに内科(のどの症状であれば耳鼻咽喉科でも良い)を受診する必要があります。

風邪をきっかけに発症する8つの病気とは?

二次感染には以下のような疾患を起こす可能性があります。

  1. 急性咽頭炎、急性喉頭炎
  2. クループ症候群
  3. 気管支炎・肺炎
  4. 急性副鼻腔炎
  5. 急性中耳炎
  6. 内耳炎
  7. 結膜炎
  8. 髄膜炎、脳炎

この症状には注意!風邪関連疾患の特徴概要を解説

具合の悪い子供を抱く母親-写真

1.急性咽頭炎急性喉頭炎

咽頭炎は口や鼻の奥、喉頭炎はのどの奧から気管の手前の部分に、ウイルスや細菌が感染して粘膜に炎症を起こした状態をいいます。

咽頭炎も喉頭炎も風邪に合併し、急激なのどの痛みだるさ発熱などを伴います。喉頭炎では咽頭炎の症状に加え、喉頭に声帯があるため声がでにくくなります。

どちらも食べ物や水分を飲みこむときに痛みがあり、食事や水分がとれないケースもあります。

のど吸入など症状を緩和させる治療が中心となりますが、水分すらとれない状況であれば点滴によって水分を補給します。細菌感染が疑わしい場合は抗生剤が有効です。

2.クループ症候群

声帯にウイルスや細菌が感染して炎症を起こす病気で、気道の狭い小児に多くみられます。症状は高熱犬の遠吠えのような「ケンケン」いう呼吸困難などです。

治療はのどのはれをおさえる薬の吸入やステロイドを内服しますが、細菌感染が原因の場合は抗生剤を使います。

3.気管支炎肺炎

気管支にウイルスや細菌が感染すると気管支炎とよばれ、炎症が肺まで及ぶと肺炎とよばれます。高熱が続き、激しい黄色から緑色の胸の痛み呼吸困難だるさ食欲不振などの症状が出現します。体力が落ちている人や、免疫力の弱い高齢者で起こしやすい二次感染です。

治療は、気管支炎では風邪と同じく症状を緩和する薬を使用しますが、細菌感染による肺炎では抗生剤を使って治療します。肺炎で呼吸困難をきたしている場合は酸素吸入を要することもあります。

予防として、5歳未満の小児65歳以上を対象に肺炎球菌ワクチンの接種が可能です(ただし、効果は肺炎球菌のみに限られます)。

4.急性副鼻腔炎

副鼻腔は鼻の周りにある頭蓋骨の空洞です。この空洞は鼻と通じており、かぜをひくと鼻にいるウイルスや細菌が副鼻腔の粘膜にも入り、副鼻腔炎を起こします。

鼻づまりドロっとした鼻汁ほほや鼻のまわりの痛み発熱頭痛においを感じにくくなる、といった症状が出現します。

急性副鼻腔炎を治療せずにいると慢性化し、いわゆる蓄膿症になってしまいます。治療としては抗生剤を投与します。

5.急性中耳炎

中耳炎はのど風邪に合併しやすく、鼓膜の奥の中耳にウイルスや細菌が感染します。耳の痛みみみだれ発熱などが起こりますが、特に小児に多くみられます。話すことのできない乳児では、風邪症状とともに泣きやまない、耳に手を持っていくしぐさが目立つ場合に中耳炎を疑う必要があります。

治療としては抗生剤の投与を行いますが、熱が下がらない場合は鼓膜を切開してたまっている膿を出す処置を行います。中耳炎を繰り返すケースでは、膿を排出させるチューブを挿入する場合もあります。

6.内耳炎

内耳炎は、中耳炎に合併しておき、炎症が内耳にまで及んだものです。内耳炎では難聴めまいといった症状が出現します。

治療としては、抗生剤の投与のほか、ビタミン剤やステロイドを使って難聴やめまいの改善をはかります。

7.結膜炎

鼻涙管(びるいかん、鼻と眼をつなぐ管)を介するウイルスや細菌の結膜への侵入や、病原体の付着した手指で眼をこすることで感染します。アデノウイルス感染では、症状のひとつとして結膜炎を起こします。

症状は眼の充血かゆみ目やにで、抗生剤入りの点眼薬が有効です。

8.髄膜炎脳炎

髄膜炎は脳と脊髄(せきずい、背骨の中を通っている神経のこと)をおおう髄膜に、脳炎は脳に、それぞれウイルスや細菌が感染して炎症を起こしたものです。どちらも乳幼児に多く、発熱とともに、頭痛嘔吐意識がぼんやりする、首の後ろがつっぱるけいれんなどの症状を起こします。治療が遅れると後遺症を残す恐れがあるため、早急な受診が必要です。

髄膜炎や脳炎が疑われる場合は、入院が必要です。ウイルスによる髄膜炎・脳炎ではけいれんをしずめる薬や脳のはれをおさえる薬の投与を行いますが、細菌によるものでは加えて抗生剤が有効です。

脳炎の原因はウイルスであることがほとんどで、麻疹風疹水ぼうそうおたふくかぜをきっかけに発症することもあります。これらはワクチンで予防が可能です。

細菌性髄膜炎の原因の多くはヒブ菌肺炎球菌です。どちらもワクチンがあり、接種可能な月齢になったら受けておくことが大切です。

こじらせる前にしっかり休んで、早く治す

二次感染をさけるためには、風邪を悪化させずに早期に治すことが大切です。「少し体調がおかしいな…」と思った場合、あるいは体調に異変をきたす前に、基本的な対策を行いましょう。なお、風邪を初期で治す方法については「風邪でも休めない方必見!初期にすべきこと3つ・ひきはじめにとるべき栄養素」を参照ください。

早めに治すために

  • 充分な睡眠
  • 暖かくして過ごす、からだを冷やさない
  • しっかり水分と栄養をとる

新たな感染を予防

  • 手洗い、うがい
  • マスクをつける
  • 人の多い場所はなるべく避ける

まとめ

風邪をこじらせると体力が奪われ、新たな病原体に対して抵抗することができなくなってしまいます。二次感染を予防するには、風邪をひいたら休息の時間を確保し、栄養をしっかりとり、保温・加湿で体力をつけ、早めに風邪を治したいものです。日ごろから手洗い・うがいを習慣化し、風邪にかからないようにすることも大切ですね。