花粉症くしゃみ鼻水鼻づまり目のかゆみなどの症状をもたらすアレルギー疾患です。

症状を悪化させないためには、花粉が飛散し始める少し前から花粉の吸入や付着を予防することが必要です。しかし、こうした対策を講じていても症状が出てしまい、セルフケアだけでは症状が改善しない状態が続くと、仕事や勉強などの日常生活に支障が出ることも。

花粉症のつらい症状を改善するためには、医療機関を受診することも必要です。病院ではどのような検査や治療が行われるのでしょうか?花粉症の病院での検査・治療についてご紹介します。

目次

花粉症かな?と思ったら何科を受診すればいいの?

花粉症は、くしゃみや鼻水、鼻閉感や目のかゆみ、違和感などの症状が表れる季節性アレルギー性鼻炎です。

その診断は鼻の粘膜の状態を観察(視診)することで行われ、専門は耳鼻科(耳鼻咽喉科)またはアレルギー科です。耳鼻科は耳鼻咽喉科アレルギー科と標榜していることも多く、花粉症の診断としてアレルゲン(アレルギーの原因)の特定検査を行う場合もあります。

花粉症の検査とは

医師が額に付けている小さな鏡は額帯鏡といい、鼻やのどの診察に使われる器具です。

コントや漫画に出てくる医師は決まってこれを付けていて、医師のトレードマークのような印象がありますが、この額帯鏡を耳鼻科医以外が使用することはあまりなく、一般の内科ではペンライトを使って鼻の粘膜を観察します。

ほとんどの場合はこうした視診と問診で花粉症と診断されますが、風邪やほかの鼻疾患(慢性副鼻腔炎など)との鑑別のために、血液検査(IgE抗体検査)や皮膚反応テストなどの検査を行う場合があります。

病院で行われる花粉症の治療

1.薬物療法

錠剤

第二世代抗ヒスタミン薬(第二世代ヒスタミン拮抗薬)

薬品名:アレジオン・ジルテック・アレグラ・アレロック・ザイザルなど

花粉症の治療には、アレルギー物質であるヒスタミンの働きを抑え、くしゃみや鼻水などの症状を軽減する効果のある薬が処方されます。

現在は、第二世代抗ヒスタミン薬(第二世代ヒスタミン拮抗薬)と呼ばれる薬が多く用いられますが、従来の抗ヒスタミン薬と比べて、眠気や口の渇きなどの副作用が少ない特徴があります。

薬の効果や副作用には個人差があるため、反応を見ながら処方されますが、これらの薬には即効性がなく、花粉が飛散する2週間ほど前からの服用が効果的とされています。

ステロイド薬

一方、ステロイド薬には症状を速やかに抑える即効性があります。しかし、感染症や胃腸障害、長期服用による副腎機能の低下などの副作用があり、医師の指示のもとで正しく服用することが必要です。

内服薬では抗ヒスタミン成分が配合されているセレスタミン錠のほか、点鼻薬や点眼薬として用いられます。

ステロイド注射について

注射1本で数週間に渡って症状を抑えることができる治療として一時期話題となった治療法です。

ステロイドには強い効果の反面、強い副作用があり、毎シーズン、ステロイド注射による治療を行うと重篤な合併症を起こす危険性が高いことから、日本耳鼻咽喉科学会および日本アレルギー学会では推奨していません。

2.レーザー治療

治療用レーザーで鼻の粘膜を照射し、アレルギー反応を抑える治療法です。

治療用レーザーには炭酸ガスレーザーや高周波ラジオ波、半導体ダイオードレーザーなど数種類あり、症状によって適切な治療法が選択されます。

治療は保険適応で行えますが、施術による痛み出血のほか、鼻粘膜のかさぶた形成癒着萎縮などの副作用があり、かえって鼻閉感が強くなる可能性があります。また治療効果は永久的なものではなく3年~4年で症状が再燃し、長期間に渡って繰り返しレーザー治療を行うことについては安全性が確立されていません。

薬による治療効果がない場合や、薬の副作用が強い場合に適応となる治療法で、医師に充分な相談が必要です。

3.アレルゲン免疫療法(減感作療法)

アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因物質を少しずつ体内に入れ、抵抗力をつけていく治療法です。

薬による治療とは異なり、体質を改善することによる完治を目指す治療法のため、長期間(2~3年)にわたる継続治療が必要です。

舌下免疫療法

以前は注射によってアレルゲンを投与していましたが、2014年に舌下免疫療法治療薬「シダトレン」が発売され、新しい治療法として期待されています。

舌下に治療薬液を滴下し、2分ほど保持した後に飲み込みます。初回は医療機関で投与されますが、その後は自宅で行うことができ、2週間~1か月に1回の定期通院で経過を観察します。

花粉症ではスギ花粉症のみでしか、舌下免疫療法は施行できません。実施できる医療機関も限られています。一方で、2015年に通年性アレルギー性鼻炎患者を適応に、ダニアレルギーでの舌下免疫療法が保険適応になりました。

花粉の飛散時期には花粉に対する過敏性が高まっており、治療薬によりアレルギー反応が誘発されやすくなるため、花粉の飛散時期には治療を開始することができません。

舌下免疫療法について詳しくは「花粉症が治る!?最新治療法「舌下免疫療法」の真相に迫る!」をご参照ください。

まとめ

医療機関で行われる花粉症の治療は、薬物療法やレーザー治療のように症状を抑える対症療法と、アレルゲン免疫療法のように根治を目標とした治療があります。

花粉症の悪化予防には、花粉の吸入や付着を避けるよう基本的な対策が重要ですが、症状がつらいときには無理をせずに医療機関を受診しましょう。