いびきは、一見熟睡している様に思われがちですが、実は良質な睡眠をとることができていないため、脳や心臓に負担をかけてしまっている可能性があります。従っていびきを「疲れているから」とか「いつものいびき」と放置しておくことは決して望ましいことではありません。いびきを止めるために、いびきが発生する原因を知り、改善するための方法を解説します。
いびきが原因となる疾患とは?
いびきには一過性である「単純性いびき」と病的な「睡眠時無呼吸に伴ういびき」とがあります。
1.一過性:単純性いびき
睡眠障害など体へのデメリットを起こさないため、基本的に治療は必要ないとされるいびきです。お酒の飲みすぎや疲れ、風邪など一時的な理由が原因です。
特に年齢を重ねると、ある程度の単純性いびきは多くの人が経験します。一般的に子供はいびきをかくことはないのですが、30代頃より筋や粘膜の弾力性が低下し、お酒を飲めば誰でもいびきをかくようになってきます。年齢とともにいびきをかく人は増え、60~65歳になると男性では60%、女性は40%の方がいびきをかいているといわれています(「内科診断学」より)。
2.病的:睡眠時無呼吸に伴ういびき
睡眠障害や呼吸がしづらくなっている状態です。充分に睡眠時間をとったはずなのによく眠れた気がしない、いびきが途中で止まる(睡眠時無呼吸症候群といって、呼吸が止まっている可能性があります)ような方は、病的ないびきかもしれません。
鼻や口腔内・喉に空気の通り道が狭い場合や完全に閉塞してしまっているときに、異常音としていびきが発生するのです。慢性的にいびきをかいている方は、耳鼻咽喉科で一度相談してみましょう。睡眠時無呼吸症候群を併発している方は呼吸器科でも良いです。
空気の通り道が狭くなり、いびきを引き起こす疾患は以下のようなものがあります。
鼻腔疾患
いびきの原因になる鼻の疾患として急性鼻炎・慢性鼻炎・アレルギー性鼻炎などが挙げられます。気象条件や疲労・栄養・体質・環境などが影響しているものが多く、鼻腔内の炎症と充血により鼻詰まり・鼻汁・くしゃみが起きます。
治療としては、鼻詰まりを解消する点鼻薬や内服薬が処方されます。
副鼻腔炎(ふくびくうえん:蓄膿症)
副鼻腔炎とは、副鼻腔という鼻の周りにある骨の空洞がウイルス感染やアレルギーをおこし、痛みや鼻づまり、嗅覚障害・頭痛や頭の重たい感覚などを起こします。
治療は保存的治療(薬を飲むなど、皮膚や骨に負担をかけない治療法)と手術療法があり、どうやって治療するかは病状と重症度により判断されます。
鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)
鼻中隔弯曲症とは、鼻筋が変形(弯曲)したことで、空気が通らない、いわゆる鼻閉が主症状となります。
鼻中隔弯曲症は嗅覚障害や頭痛、刺激を受けやすい方の鼻出血、通気障害による耳の詰まり感などもしばしば起きます。
治療としては、鼻中隔矯正術により曲がっている骨や軟骨を取り除き、通気障害を解消する方法があります。
咽頭疾患
咽頭とは、鼻の奥から食道の入り口までのことをいい、食物や空気の通り道です。
扁桃肥大やアデノイド肥大は、空気の通り道が狭くなっています。扁桃炎や咽頭浮腫などの炎症を起こすと呼吸困難や呼吸停止を起こしてしまいます。
治療は安静と薬物療法となりますが、明らかに病的障害と判断した場合には手術の適応となります。
肥満
肥満になることで、のどの周りに脂肪がつき、呼吸がしづらくなることがあります。
肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群の場合には、ダイエットを行いアルコールの摂取も控える必要があります。
単純性のいびきを改善する、7つの方法
いびきはどうやって解決すれば良いのでしょうか?上に書いた通り、睡眠障害や呼吸障害が起きている場合には、その疾患を治療する必要がありますので医療機関に相談しましょう。以下では、病院に行くほどではない単純性いびきでお悩みの方も行えることを紹介します。
1.仰向けには寝ない
仰向けに寝ると咽の緊張が取れた際に、舌が咽の奥に落ち込みやすくなりますので、横向きに寝て舌の落ち込みを防ぎます。横向きに寝るときに体を支える抱き枕などがあると便利です。
このことにより、軽度のいびきは解消されます。
2.口が開かないようにする
口を開けて寝てしまう人は顎の筋肉が緩んでしまい、舌や口蓋垂(こうがいすい:のどちんこ)が咽の奥に落ちやすくなります。
顎が下がらない様に、マウスピースを装着する方法があります。
3.鼻詰まりを解消する
鼻詰まりがあると、どうしても口呼吸になり、いびきを解消できません。
そのほかにも、口呼吸になると、口腔内が乾燥し虫歯の原因になったり、風邪が引きやすかったりと良いことがありません。鼻詰まりが何から来ているのかを知り、解消することが大事となります。
4.飲酒はほどほどに
適量の飲酒は安眠を促しますが、その反面筋の緊張を緩め、いびきを誘発してしまいます。
飲酒はほどほどにしておきましょう。
5.肥満は禁物
のどの周りに脂肪がつくことで、空気の通り道を狭くさせていますので、適正体重に戻す努力が必要です。
ただし過度なダイエットは体と心に負担をかけてしまいます。短期間に集中して行うようなダイエットはやめましょう。
6.規則正しい生活
一時的な単純性いびきの場合には、ストレスや疲労が関わっています。規則正しい生活を送ることをこころがけましょう。
7.慢性化している場合には病院へ!
単純性いびきは、基本的に慢性化しないものです。毎日いびきをかいているようであれば、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してみましょう。
睡眠時に専用のマスクを装着するCPAP療法や、手術などの方法で解決することができます。
まとめ
いびきは病気としてではなく、「疲労」や「熟睡」として受け止められますが、放置しておくと脳や心臓に負担をかける事が分かっています。
一緒に生活しているご家族の睡眠への影響もある事から、慢性化している場合は一度専門医に相談することをおすすめいたします。