LOH症候群は、男性ホルモンの低下によって起こる男性の更年期障害で、症状は「身体」「精神」「性機能」の3つに現れます。思いあたる症状を感じたら、専門医を受診するのが最善策で、「LOH症候群の門外」も徐々に増え始めています。今回は主に治療法について紹介していきます。LOH症候群の症状や原因、検査方法などについて詳しく知りたい人は「勃起不全や全身倦怠感、疲労感などの症状、男性更年期障害『LOH症候群』かも」をご覧ください。

目次

男性も「40歳を過ぎたら」一度は考えよう

LOH症候群は、男性ホルモンであるアンドロゲンの分泌低下によって起こります。アンドロゲンの約95%は「テストステロン」と呼ばれるホルモンで構成されています(Int J Urol.2015(12):1084-95より)。

男性ホルモンの低下は、主に加齢により起こるとされています。男性ホルモンの低下は緩やかに進行していくため、更年期障害だと自覚する男性は女性に比べて少ない傾向にあります。

その症状は、うつ病・意欲減退・倦怠感・疲労感・不眠頻尿・性欲低下・勃起不全など、「身体」「精神」「性機能」と多岐にわたるのが特徴です。社会生活を送ることが困難になるケースも生じることがあります。

男性も40歳を過ぎて上記の症状がみられた場合は、LOH症候群の可能性を考えてみましょう。

ホルモン検査は「午前中」に行う

気になる症状がある場合、可能であれば「LOH症候群の門外」を受診しましょう。

他の疾患の可能性がなく、LOH症候群が疑われた場合には血中のテストステロン値を測定します。テストステロン値は「朝に高く、夕方は低い」ため、午前811時までに採血することが望ましいとされています(千葉西総合病院より)。

男性ホルモンを補う「テストステロン補充療法」

塗り薬-写真

LOH症候群の治療では、男性ホルモン(アンドロゲン)を体内に加える補充療法(ART)が一般的です。その中でテストステロン補充療法(TRT)があります。

テストステロンを補充することで性欲の維持や勃起作用、筋力の増強などを改善していきます。

治療適応となるのは、血液中の遊離テストステロンの値が12.5pg/ml以下の場合です。12.5pg/ml~16.2pg/mlの間にある場合は、相談した上で治療するかどうか選択します。また症状の程度なども考慮したうえで実施されます。

TRTの方法としては、経口剤(内服薬)、注射剤、皮膚吸収剤(外用薬)があります。日本では注射剤だけ保険適応となっています。海外ではジェルや貼り薬もありますが、日本ではまだ認可されていません。

3つの療法、それぞれの特徴

ホルモン補充療法である「注射剤」「経口剤」「皮膚吸収剤」は、投与方法や回数などそれぞれ特徴があります。どの治療でも3カ月ごとに治療の効果を見ます。

注射剤

エナント酸テストステロンを2~3週ごとに1回約125mg、もしくは2~4週ごとに1回250mgを筋肉に注射します(日本泌尿器科学会/日本メンズヘルス学会・LOH症候群診療の手引き(PDF)より)。症状をみながら量を調節していきます。保険が適応されます。

注射剤は血中濃度の上下が激しく、注射後2日目でピークを迎え、その後2~3週間後には元の値に戻ることから症状改善効果が安定しない可能性があります。

皮膚吸収剤

テストステロンを皮膚から吸収させるテストステロンクリーム(軟膏)を、1日に1〜2回陰嚢に塗ります。1回に塗るテストステロンの量は製剤によって異なります。治療法として容易に取り組め、テストステロンの血中濃度が安定して維持できる利点があります。

自費診療であるため、料金は各病院・クリニックによって異なります。千葉西総合病院では臨床研究として、採血料金を含んで3ヶ月分2万円強となっています(千葉西総合病院より)。

経口剤

メチルテストステロンによるがありますが、肝機能障害の副作用の頻度が極めて高く、有効血中濃度を得られることが少ないため現在ではほとんど使用されておりません。

副作用や合併症について

ホルモン補充療法では、血液中の赤血球の量が増える多血症精子の生が減少するケースが報告されています。

また睡眠時無呼吸症候群の患者さんは症状が悪化する可能性が指摘されておりますが、長期使用で改善する報告もあり、注意して使用すれば問題ないものと考えられています。

以前は男性ホルモンを補充することで前立腺疾患前立腺がんや前立腺肥大症)を引き起こす可能性が懸念されていましたが、現在では否定されつつあります。

ただ前立腺自体はアンドロゲン依存性(アンドロゲンが関係している)がみられるため、補充療法は医師の指導のもと行うとともに、治療前と治療中はPSA値(前立腺特異抗原値、前立腺がんの診断に用いる)を3ヶ月ごとにチェックすることが勧められています。

まとめ

LOH症候群の相談は、「専門外来」を受診しましょう。いずれも血液検査などによって、LOH症候群の診断が確定されます。治療はテストステロンを補う「ホルモン補充療法」の実施が一般的です。筋肉注射、内服薬、外用薬のいずれかの方法を医師と相談して選びましょう。