夜中に何度も起きてしまうことを「中途覚醒」といいます。眠りの質が悪いので、睡眠時間の長さの割に熟睡感が得られません。中途覚醒の原因には、生活リズムの崩れなどすぐに思い当たるものもありますが、重大な病気が隠されていることもあります。

ここでは、主な原因として考えられるものを4つ紹介します。2、3の場合は一度受診してみましょう。また自分で出来る対処法も3つ紹介しますので、参考にしてください。

目次

中途覚醒の原因

1.加齢

60歳以上では、約3割の人に睡眠障害があるといいます(日本老年医学会より)。脳代謝の低下、脳細胞(正確にはグリア細胞)の機能低下が原因と考えられますが、加齢とともに中途覚醒と早朝覚醒が増えることは自然なことであり病気ではありません。

ただしその裏には、糖尿病泌尿器科的疾患(内臓機能の低下や膀胱の委縮)による夜間頻尿心疾患や慢性肺疾患による息苦しさ、皮膚疾患による肌のかゆみなどの原因が隠れている場合もあります。本人が不快を訴えるときは一度病院で検査をしてみましょう。

また、次に紹介する睡眠時無呼吸症候群の特徴である「いびき」は、高齢者の場合、音が小さいので周囲も気がつきにくく、また自覚症状も乏しいので見落とされがちです。

2.睡眠時無呼吸症候群

中途覚醒の他に慢性的ないびき、頻繁な寝返り、起床時の頭痛、夜間頻尿、昼間の眠気などの症状があれば睡眠時無呼吸症候群が疑われます。本人の自覚症状が無く、家族から「寝ているときに呼吸が止まっている」と指摘されることもあります。

無呼吸の状態が頻繁に生じた場合、血液中の二酸化炭素濃度が高くなり、血液が酸性に傾き心臓に負担がかかります(循環血流の分布が変わると共に電解質のバランスが崩れ心臓の筋肉が正常に動けなくなるため)。これが進行すると不整脈狭心症など心疾患になります。

3.周期性四肢運動障害

原則的には睡眠中に限った規則的な運動のことで、時には入眠前や中途覚醒時に起こることもあります。就寝中勝手に体が動くため、眠りが妨げられてしまいます。1993年にAmerican Sleep Disorders Associationで決められた診断基準の一部を、以下に示します(日本精神神経学会より)。

  1. 0.5~5秒間持続する手足の運動(ピクピクとした動き)が繰り返し4回以上連続して出現
  2. 運動の出現間隔は5秒以上90秒以下
  3. 左右の筋肉の運動が同時、もしくはタイミングが1秒以内の場合は1回とする

この障害は抗精神病薬の副作用としても確認されており、また鉄欠乏性貧血でもみられます。いずれにしても本人で判断することは難しく、自己解決は困難です。症状がみられたら、受診することをおすすめします。

4.生活環境

アルコールを飲むと眠りにつきやすくなるという方がいますが、これは夜間後半眠りが浅くなるため中途覚醒の原因になります。また利尿作用があるので寝ているときにトイレに行きたくなり、目が覚めてしまいます。

カフェインには覚醒作用があり、また利尿作用があります。タバコに含まれるニコチンはリラックス効果はありますが、覚醒作用もあります。さらに近年はテレビやインターネットの普及、パソコン仕事の多さから、頭は疲れているのに、自律神経が興奮する上に日中の運動不足で体は疲れていない人が増えています。頭は眠りを求めているのに体は欲していないというバランスの悪さは、睡眠の質を悪くします。

自分でできる対策法

昼寝をする犬-写真

血糖値をコントロールする

糖尿病においては、血糖値コントロールの悪化が睡眠の質の劣化を引き起こします。また睡眠量が少ないと交感神経が活性化され、インスリン分泌低下とは無関係に血糖値が上がります。

加えて、睡眠量の低下によって食欲・空腹感が増すことが分かっています(新潟大学医学部医学科より)。結果として「血糖コントロール不良の人は睡眠の質が悪く、また睡眠の質が悪い人は血糖コントロール不良である」悪循環の存在が報告されています。糖尿病予防、既に糖尿病の方は充分に不眠への対策を立て、血糖値のコントロールをしっかり行うことが重要です。

メラトニンを摂取する

夜、松果体から分泌されるホルモンであるメラトニンが多量に分泌されると、体の深部の体温が下降し、これにつれて人はすんなり入眠ができます。

メラトニンはトリプトファンというアミノ酸から作られます。トリプトファンを多く含む卵や牛乳、チーズなどの乳製品、豆腐などの大豆製品、鶏肉や鶏レバーを積極的に摂取すると良いかもしれません。

適度な運動

適度な運動をすると血流が良くなり、その後体温が下がって心地よい眠りを誘導してくれます。しかし、過度な運動、寝る前の運動は刺激になってしまうので避け、昼間~夕食後位までの間に軽く汗ばむ程度の運動をしましょう。

まとめ

日本では、中途覚醒の定義として「何回起きれば」「何時間目が覚めていたら」という具体的な数字の線引きはなく、当人が「つらい」と感じるかが治療のポイントになります。もし加齢による中途覚醒があっても、昼間仕事をしておらず昼寝ができる環境でしたら、「眠くなったら寝れば良いし、目が覚めたら起きても良い」と気持ちを切り替えることも大切です。

一方、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害の場合は、自分で対処しようとすると、中途覚醒に意識が集中し、途中で起きてしまうことにストレスを感じるようになってしまいます。この他の病気が隠れている場合もありますので、症状が続くようであれば受診することをおすすめします。