みぞおち(上腹部)が痛いとき、どのような病気が考えられるでしょうか。今回は、上腹部の痛みの中でも、特に右側に痛みが生じる病気、左右どちらかに痛みが生じるについて焦点を当て、その原因や具体的な症状について詳しくご紹介していきます。

目次

みぞおちの右側が痛む原因は肝臓・胆嚢・胆管

みぞおちは、医学的には「心窩部(しんかぶ)」と呼ばれます。また、みぞおちの右側は「右季肋部(みぎきろくぶ)」といわれます。

みぞおちの辺りが痛む病気として、急性胃炎急性胃潰瘍潰瘍からの消化管穿孔などが知られています。また、みぞおちの左側にが痛みが生じる病気としては、心疾患などがあります。それでは、みぞおちの右側に痛みが生じる病気にはどのようなものがあるのでしょうか。

上腹部の右側に痛みが生じる病気

人の身体は、横隔膜を境目に胸部と腹部に分かれており、上腹部の中央には十二指腸右側には肝臓胆嚢胆管左側には膵臓脾臓があります。したがって、みぞおちに右側が痛む原因としては主に肝臓や胆嚢、胆管などの異常が原因となります。

胆石症

肝臓では胆汁という消化液を作っており、作られた胆汁は胆管という管を通って胆嚢という袋状の臓器に貯留されます。胆石とは、この胆汁が固まって作られる石で、これが胆嚢や胆管を刺激することで、突然上腹部の右側に激しい痛みが生じます。

痛みの生じるタイミングとしては食後、特に油っこい食事の後にみられやすいといわれています。胆石が胆管を塞いでしまった場合、うっ滞した胆汁に感染が起こり、胆管炎胆嚢炎を起こすことがあります。

なんとなくお腹の調子が悪い、あるいは無症状に留まることもありますが、胆石は発がんに影響する可能性もあるので注意が必要です。

胆管炎・胆嚢炎

胆管炎・胆嚢炎では、上腹部右側の痛みに加え、発熱嘔吐黄疸(おうだん:皮膚や白目が黄ばむ)、色の濃い尿意識障害などが加わります。痛みは上腹部に留まらず、右肩甲骨背中まで広がることもあります。痛みは胆石によるものと似ていますが、痛みの強さは増強し、持続時間も長くなるという点で異なります。原因の95%胆石によるものですが(MSDマニュアルより)、何の原因、症状もない状態から急速に同様の症状が生じる無石胆嚢炎と呼ばれるものもあります。こちらの方が症状は重く、胆嚢の壊死破裂が起こることがあり、治療しないと患者の65%は死亡するといわれています(MSDマニュアルより)。

胆道ジスキネジー

ジスキネジーとは運動の異常を意味します。検査では胆道やその周辺の臓器に異常がみつからないのに、胆道が正常に機能しない状態で、女性に多いといわれています。食後に症状が現れやすく、上腹部の右側に違和感痛みが生じ、痛みは背中の右側まで広がることもあります。この他、吐き気嘔吐腹部膨満感(お腹が張っている感じ)、下痢などを伴うこともあります。

上腹部の左右どちらかに痛みが生じる病気

肋間神経痛

肋骨-写真

肋間神経は左右12本の肋骨に沿って走っている神経です。この肋間神経が傷つくと、その神経が支配している領域に痛みが生じ、肋間神経痛と呼ばれます。胸から上腹部にかけて張り巡らされている神経であるため、痛みは胸から上腹部にかけて、どの高さにでもどの位置にでも生じる可能性があります。肋骨は呼吸に伴って動くため、大声を出したときに痛みが出たり、深呼吸で痛みが増強するなどの特徴があります。痛みは右側に限らず、左側にも生じることがあります。

原因としては変形性脊椎症帯状疱疹が考えられています。変形性脊椎症は、加齢によって椎間板(背骨の間にあるクッションの役割をする軟骨)が変性してしまうことで、背骨の隙間が狭くなってしまう病気です。神経は背骨の隙間を通って全身に張り巡らされていますが、骨によって肋間神経が圧迫されてしまった場合、肋間神経痛が生じます。

一方、帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症です。いわゆる水疱瘡の原因ウイルスですが、このウイルスは幼少期に一度感染すると、神経の中に潜み、免疫力が低下したころを見計らって再活性化します。これによって肋間神経が傷つくと、肋間神経痛の原因になります。

まとめ

みぞおちの右側の痛み(右季肋部痛)を生じさせる病気について解説しました。腹痛は身近な症状ですが、軽い場合はつい見逃してしまいがちです。違和感や痛みが長く続くようであったり、他にも気になる症状がみられるようであれば、早めに医療機関に受診するようことが大切です。