腹痛にはお腹の上部や下部が、右が、左が、全体が痛くなるなどさまざまなタイプがあります。ただし、場合によっては、痛む部位が特定できなかったり、痛みが移動したりする場合もあります。今回はそんな、腹痛の部位が一定しない場合に考えられる病気についてみていきましょう。

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あちこちが痛みうる腹痛の原因は?

トイレットペーパーを片手に持つ男性-写真

虫垂炎

虫垂炎は、一般的には盲腸という呼称で知られています。通常、はじめは心窩部(みぞおち)あたりに強い痛みを感じますが、発症から数時間が経過すると徐々に痛みが右下へと移動します。腹痛の他に、吐き気や嘔吐食欲不振などの症状がみられることもあります。10代から20代の若い方に多くみられる病気です。

虫垂炎は時間が経つにつれて症状が悪化していき、悪化すると腹膜炎などの合併症を起こすこともあります。虫垂炎を疑った場合、早めの受診をおすすめします。

便秘

「いきまないと便が出ない」、「便が硬い」、「残便感がある」、「指で掻き出さないと便が出ない」などの症状が頻繁にあり、1週間に3回未満しか便が出ない場合は便秘と言えます。各年齢層でみられ、男性よりも女性に多い傾向があります。

便秘には腸が収縮する動き(蠕動・ぜんどう)が弱くなって便が通過するまで時間がかかる弛緩性便秘と、直腸に便が達しても便意を感じない直腸性便秘、ストレスなどで自律神経の働きが不安定となり、腸の蠕動運動に影響する痙攣性便秘があります。

弛緩性便秘や直腸性便秘は加齢に伴い多くみられるようになる便秘で、便の回数が少なくなることや硬いコロコロの便がみられます。痙攣性便秘では、腸の収縮が激しく起こることがみられ、腹痛やお腹の張りを伴います。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群慢性的(最近3カ月のうち3日以上)な腹痛やお腹の張り、下痢、便秘の症状がみられ、大腸や血液を検査しても異常がない場合に当てはまります。原因は主に身体的、精神的なストレスです。また食事も関係しているとされ、炭水化物や脂が多いものやアルコールなどの刺激物によって悪化することがあります。

ストレスを解消するための運動や腸内環境の改善を促すプロバイオティクスの摂取が有効です。有病率は男性よりも女性が多いというデータがあります(機能性消化疾患診療ガイドライン2014より)。

内臓痛

胃や腸などの消化管が縮んだり伸びたり、痙攣や拡張などが起き、自律神経を通じて痛んできます。お腹全体が鈍い痛みに襲われ、吐き気や冷や汗などが出てくることがあります。

大腸憩室炎(だいちょうけいしつしょう)

大腸の壁にくぼみができて内側から外側に袋状に突出している状態を憩室といいます。憩室はたくさんできるもので、憩室が存在しているだけでは自覚症状は出ないことが多いです。ただ痛みが出るけいれんや血便が起きることもあります。炎症を起こして大腸憩室炎になると下痢、便秘、腹痛、下血、発熱などの症状がみられます。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらん(傷ができただれたような状態になっていること)や潰瘍(かいよう、組織の一部がえぐれたようになること)がみられます。直腸から上部に向かって広がっていく傾向があり、頻繁な腹痛や下痢、下血がみられます。

症状は一度だけのときや慢性的にみられる場合、症状が治まってはまた現れることを繰り返す場合などがあり、症状の程度も様々です。厚生労働省の指定難病です。

まとめ

あちこちが痛む可能性があったり、痛みの部位が移動したりする腹痛の原因を挙げてきました。腹痛の原因は様々であり、個人によって症状の出方や程度は異なります。腹痛の原因がはっきりしておらず、長期間続く場合や耐え難いほどの腹痛、腹痛以外の症状を伴う場合は医療機関を受診し、適切な治療を早期に受けるようにしましょう。