インフルエンザ治療・予防の新たな展開。漢方や乳酸菌による治療・予防の可能性

2016年から2017年にかけてのインフルエンザは、例年よりも少し早めに流行が始まりました。本年も警報レベルでの流行が始まり、脳症・肺炎による入院増加が報告されております。
インフルエンザの季節では治療はさることながら、予防も重要であります。ここでは、インフルエンザの治療の漢方による新たな方法、また最近クローズアップされている腸内細菌バランス調整による予防に関してお届けします。

インフルエンザの治療薬は西洋薬だけではありません

薬を服用する女性

インフルエンザと診断された場合、多くの医療機関では、ウイルス増殖を抑制する内服薬・吸入薬、入院を要する重症の場合には注射薬が投与されることが多いです。その代表的な薬品名としては、内服薬ではタミフル、吸入薬ではリレンザ・イナビル、注射薬ではラピアクタがありますが、いずれも体内でのウイルスを増殖させないという作用では効果はほぼ同等とされています。

インフルエンザ感染による発熱のストレスで、壁にぶつかる、うわごとを言うなどの「熱せん妄(ねつせんもう)」と呼ばれる異常行動もみられますが、これはタミフル内服による副作用の懸念もあり、タミフルは現在、10代の患者様には原則使用しないこととなっております。このため、漢方薬である「麻黄湯(まおうとう)」という選択肢の存在が大きくなっております。

インフルエンザの治療では、漢方製剤の「麻黄湯(まおうとう)」を使うと、抗ウイルス薬のタミフルと同じ程度の症状軽減効果があるという結果は、2009年の福岡大病院からの報告をはじめとして、成人・小児ともに明らかとなっております。

インフルエンザと診断され、内服薬の服用開始から平熱に戻るまでの平均時間は、タミフルも麻黄湯も20時間程度と1日以内であり、解熱という効果が表れるまでほとんど差がありません。解熱剤の平均服用回数もタミフル・麻黄湯ともに1~2回であります。

麻黄湯のインフルエンザへの効能は以前から承認されており、健康保険で適応があります。また、薬局・ドラッグストアでも購入は可能であり、インフルエンザの治療の1つの選択肢と考えてよいでしょう。

ただ、この麻黄湯はすべての年齢の方で効果があるとは限りません。麻黄湯の効果がある方は、漢方診断で「実証(じっしょう)」のタイプです。実証とは体力があり、病気に対する抵抗力や反応も強い状態です。家族で例えると、高齢者よりは成人・小児の方が適応となります。高血圧や心疾患がある方の服用はおすすめしません。

 

麻黄湯でインフルエンザを効果的に治すには、ゾクゾクする寒気を感じ始めて「インフルエンザにかかったかな?」と思う、24時間以内のごく初期に麻黄湯を飲むのがコツです。大事なポイントは、「汗をかいていないこと」です(汗をかいているときには麻黄湯は使わない方がよいです)。

麻黄湯を飲むと、身体の奥から温まり、汗を多くかきます。その後、汗をかききって体温が37度以下となった状態が2~3日続いたら、麻黄湯の内服を中止します。

風邪やインフルエンザのときに飲む漢方薬は、ひき始めの初期に飲むものと、こじれて長引いたときとで異なります。インフルエンザでも、発熱が持続、また解熱したが咳が長引いたときには、麻黄湯は飲まずに医療機関に相談してください。

インフルエンザ感染予防に「菌活(きんかつ)」という新たな選択肢?

ヨーグルト

インフルエンザの季節で、感染を予防する手段の基本は「手洗い」「うがい」「マスク」です。この時期になると薬局・ドラッグストアではマスクは売り切れとなっているのも現状です。流水や石けんでの手洗い、うがいは接触による感染症対策として重要であります。アルコールは、インフルエンザウイルスにも効果があるとされており、アルコール製剤での手指の消毒も重要です。

その一方で、近年ではヨーグルトなどの「乳酸菌」などの定期的な摂取による予防効果が期待されております。乳酸菌の効果としては美容・便秘解消の側面から、免疫機能を整える事が近年クローズアップされております。潰瘍性大腸炎・クローン病の難病において糞便移植による治療効果があるという報告もあります。また、近年増加しているアレルギーの病気(アトピー性皮膚炎、食物アレルギー)においてもが示唆されております。

ここで、「免疫」とは何か、簡単にお伝えします。「免疫」とは体を病原体から守る防衛システムと考えてください。主に、血液の中でその担い手は白血球です。白血球には、リンパ球、NK細胞、樹状細胞、マクロファージなどいろいろな種類があります。軍隊にも陸軍・空軍・海軍があり、歩兵、砲兵、パイロット、軍医、戦車兵、海兵などいろいろな兵士がおり、指示系統のもと行動をしますよね。人間の体も、このように様々な兵士から編成された白血球の中の「免疫細胞」という軍隊で守られます。全身の免疫細胞のうち6~7割が腸内に存在しているため、この「免疫」という複雑なシステムは腸内の細菌のバランスでコントロールされていることが近年、クローズアップされております。

腸内の細菌には、乳酸菌・ビフィズス菌などの俗にいう「善玉菌」、ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌などの俗にいう「悪玉菌」に大きく分かれております。この善玉菌は、整腸作用のみならず、前述の「免疫」との深い関係が明らかになってきました。

 

インフルエンザを含めた風邪のウイルスに対しての免疫力を高めるためには、乳酸菌などの善玉菌が重要であります。具体的にはインフルエンザなどの異物に対する反応を早め、また感染をしてもウイルスが増殖しないよう、防御力を高めることによる効果が示唆されております。風邪の予防は適度な運動、十分な睡眠、栄養バランスの良い食事が基本となっておりますが、結果的には免役システムを上手に活用する事につながります。

主なものではR-1乳酸菌」「プラズマ乳酸菌」「IgG乳酸菌」など効果があります。また、L-92乳酸菌が含有されるカルピスも選択肢と思われます。

ヨーグルト摂取などの「菌活」も、美容・整腸作用のみならず、免疫効果を高める、アレルギー発症を防ぐなど1つの選択肢としてみたらいかがでしょうか?

まとめ

インフルエンザの治療として、漢方の1つである「麻黄湯」という選択肢、また、感染予防として免疫力を高める「乳酸菌」による免疫力向上に関して、最近の知見を記載させていただきました。今後、インフルエンザの治療も現在の薬剤も、またワクチンも改良される可能性もあり、定期的な情報収集が重要であります。

 

参照リンク

九州大学|腸内細菌がインフルエンザウイルスに対する粘膜免疫応答をサポートする-腸内細菌の全く新しい役割を解明-(PDF)

キリン|インフルエンザ累積罹患率が低いことを確認!

タカナシ乳業|lgG乳酸菌

【図解記事】2016/17シーズンのインフルエンザ流行予想・流行情報