ガストリノーマという言葉を聞いたことがありますか?膵臓(すいぞう)や十二指腸にできる腫瘍の一種で、悪性腫瘍の場合もあるため早めの発見が重要です。今回は普段聞き慣れないガストリノーマについて、原因や症状、治療を紹介していきます。

目次

ガストリノーマとは

腫瘍のガストリノーマは膵臓と十二指腸にできますが、十二指腸により多くみられます。ガストリノーマは胃液の分泌を促すホルモン(ガストリン)を過剰に分泌します。その結果、胃液が過剰になるため胃潰瘍十二指腸潰瘍が発生したり、多量の胃液を吸収しきれないため食道に逆流して逆流性食道炎を起こしたりします。できた潰瘍は治りにくく、再発しやすい特徴を持ちます。

また、副甲状腺や下垂体などのホルモンを分泌する臓器(内分泌臓器)に複数腫瘍ができる病気(多発性内分泌腫瘍症、MEN1)と呼びますが、ガストリノーマはこの病気から生じることがあります。

ガストリノーマの約60~90%が悪性腫瘍(がん)とされています(膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドラインp56より)。他の臓器に転移する恐れがあり、リンパ節に転移する確率は高いです。

ガストリノーマの症状

ソファで横になり、体の不調を感じる女性
潰瘍や逆流性食道炎のために出血腹痛胸焼けといった症状がみられます。潰瘍が沢山できたり、ひどくなったりすると出血がひどくなり、吐血下血貧血といった症状が表れます。潰瘍によって生じる症状はゾリンジャー・エリソン症候群とも呼ばれます。また、膵臓にある酵素が不活性化することで下痢を起こす場合もあります。

潰瘍の部分が悪化することで、十二指腸に穿孔(せんこう、穴が開くこと)腸閉塞(腸閉塞(食べ物が腸管内を通過しにくくなることで、腸管内容物が腸内腔に充満すること)を招く場合があります。穿孔では腹痛腹膜炎敗血症が生じ、腸閉塞では食べ物が通らなくなることで吐き気、嘔吐が起きる可能性があります。

ガストリノーマの診断・治療について

血液検査CT、シンチグラフィー、PETなどの画像検査で診断します。完全に治す方法は、腫瘍を切除する外科手術だけです。切除すると、5年生存率(もしくは10年生存率)が高くなる傾向にあります。肝臓など他の臓器に転移する可能性も考慮します。外科手術する場合、リンパ節も併せて切除するケースは多いです。

ガストリノーマではホルモンの分泌を抑える抗ホルモン療法もあります。

まとめ

ガストリノーマはあまり聞きなれない病気かもしれませんが、悪性の腫瘍の可能性もある病気です。潰瘍による腹痛や下痢などの症状がなかなか治らないなど、気になる症状が見られる場合は放置せずに、お近くの内分泌外科などを受診してみましょう。