いきなり脈が速くなって動悸がしたかと思えば、じきに治まる…。このような症状を経験したことはありませんか?原因は不整脈の一種「発作性上室性頻拍」かもしれません。この発作性上室性頻拍は放置しても良いのか、もしくは早急に治療する必要があるのか、原因や症状とともに紹介します。

目次

発作性上室性頻拍の原因

発作性上室性頻拍は突然、何かの拍子で発作的に脈が速くなり、それが暫く続いている状態です。心臓の上部付近で発生している不整脈を指します。

脈は心房の中にある洞結節から出た電気信号が、心室へと伝わることで発生します。通常、1度出た電気信号は伝わった後はそのまま消失します。ただ、電気信号が消失せずに戻ったり、電気信号が正常とは異なるルートにも流れてしまったりすることで出るはずのない脈が表れることがあります。

電気信号が戻る・乱れるパターンは大きく房室結節回帰性頻拍、房室回帰性頻拍、心房頻拍の3つに分けられます。この中でも房室結節回帰性頻拍が最も多いとされています。

発作性上室性頻拍の症状

症状は突然始まる動悸が特徴です。症状を感じる程度は個人によって異なってきます。脈拍数は1分間に140~180回以上となっています。その他に以下のような症状が表れた場合、症状が重い恐れがあります。

  • 胸の不快感
  • 息切れ
  • 血圧の低下
  • めまい・ふらつき
  • 失神

発作性上室性頻拍の治療は?

脈を測る人間

自分で止められたり、すぐに症状が治まったりする場合は治療は必要ないといわれています。

自分でできる方法は、息を止めてお腹や胸に力を入れたり、冷たい水を飲んだりなどです。しかし、何度も発作を繰り返したり、症状が強くて日常生活に支障を来すようになったりした場合は、医師と相談の上、治療が必要となってきます。

心電図などの検査を行えば容易に診断はつきますが、突然発作が出てきてしばらくすると消失してしまうので、タイミングよく検査が行えるとは限りません。発作性上室性頻拍は普段の自分の脈拍を知っておくことも重要です。詳しくは日本不整脈心電学会|発作性上室性頻拍をご覧ください。

発作性上室性頻拍の治療には以下の方法があります。

心臓カテーテルアブレーション

自分で発作を止められなくなったり、薬剤を長期的に服用していたりする場合には、心臓の中に細い電極カテーテルを入れ、原因となっている部分を焼灼する心臓カテーテルアブレーションが主流です。

安全性および治療成績が高く、再発率は低いです。心臓に治療を施す性質上、脳梗塞心タンポナーデ房室ブロックといった合併症のリスクはありますが、発生頻度は1%以下です。

薬物療法

発作が起きた時だけ飲む方法と、発作が起きないように予防的に薬剤を投与する方法があります。長期的に抗不整脈薬を使用し続けることで、効果は段々と薄れてくることがあります。注射や点滴は即効性が高いですが、副作用も出やすく、気分不快などが生じることがあります。

電気ショック

心臓の機能が急激に低下し血圧が下がる危険性がある場合は、電気ショック療法(電気的除細動)を行う場合があります。心臓のポンプの働きが空回りして正常な動きができなくなっている状態をリセットします。

まとめ

発作性上室性頻拍のほとんどは、急な治療を要さないといわれています。ただ、発作の頻度や症状の重さによっては、治療が必要な場合があります。動悸が長く続くと「このまま心臓がどうにかなってしまうのではないか?」と不安になるものです。

「いつもの動悸だ」とか「すぐに治まるから大丈夫だ」などと、放置せずに一度精密検査を受けると良いでしょう。その際は事前に平常時の脈と、発作が起きたときの脈を把握しておくと医師に説明しやすいです。