インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因でおこる感染症です。特に乳幼児や高齢者が感染すると、症状が重症化しやすく注意が必要です。

では、その赤ちゃんがインフルエンザにかかってしまったらいったいどうすればいいのでしょうか?今回は、乳幼児のインフルエンザの重症化のリスクと、治療について医師・武井 智昭先生による監修記事で説明します。

目次

インフルエンザとは

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することによっておこる病気で、発熱倦怠感のほか、や息苦しさなどの呼吸器症状が主な症状です。一般的な風邪と比べて症状が強く、人から人へ咳やくしゃみなどを介して飛沫感染をおこし、強い感染力があることが特徴です。

毎年流行の型があり、新型が流行すると世界的な大流行(パンデミック)となります。

この流行の型に応じて行われるワクチンの予防接種は、重症化を防ぐことを目的としています。

乳幼児のインフルエンザの合併症

乳幼児は成人と比べて抵抗力が弱く、インフルエンザに感染すると重症化し合併症を起こすリスクがあります。

インフルエンザ脳症

インフルエンザの合併症として最も重篤なものは、インフルエンザ脳症です。意識障害けいれんなどの神経症状が急激(発熱後1日前後)に発症し、死に至る場合や大きな後遺症を残す場合があります。

インフルエンザ脳症は、その詳しい原因やメカニズムは明らかにされていない部分も多く、熱性けいれんや、解熱剤の副作用として起こる脳症(ライ症候群)との区別が困難な場合もあります。

熱性けいれん

乳幼児が発熱時に起こすけいれんで、乳幼児期のけいれんの原因としてはもっと多いものです。未熟な脳が発熱時に強く免疫反応を起こすことによって起こるけいれんで、多くは1~2回の発作であり、6歳以降では発作を起こさなくなります。

ライ症候群

乳幼児期~小児期にみられる脳症のひとつで、インフルエンザや水痘に感染し、解熱剤としてアスピリンを服用した場合に発症がみられることから、アスピリンとの因果関係が疑われています。

けいれんなどの脳症の症状のほか、肝臓の機能障害を来す病気です。

肺炎気管支炎

インフルエンザに合併して起こる肺炎気管支炎は、インフルエンザウイルスが原因となるもののほかに、二次的に起こるものがあります。

インフルエンザの感染によって体力や抵抗力が低下し、のどや気道からの分泌物も減少します。すると、別の細菌の感染、高齢者では常在菌による肺炎を起こしやすくなります。

また、小児から若年者の気管支喘息などアレルギー疾患を持つ方新型のインフルエンザウイルスA型に感染した場合、急速に呼吸障害が進行する肺炎例があります。

乳幼児のインフルエンザの治療法

哺乳瓶

抗インフルエンザ薬

抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスに直接作用する薬です。

抗インフルエンザ薬は薬の形状や薬効の異なる数種類があり、年齢や合併症に応じて医師が診察のもとで処方します。

  一般名  オセルタミビル   ザナミビル   ラニナビル
  商品名 タミフル リレンザ イナビル
 新生児期~6か月 原則投与しない  推奨されない
 7か月~11か月   慎重投与 推奨されない
 幼児(1歳~4歳)   推奨 吸入困難と考える
 小児(5歳~9歳)   推奨   吸入ができると判断された場合に限る

日本小児学会2013/2014シーズンのインフルエンザ治療指針を参考に いしゃまち作成

タミフルの服用については以前、10代の患者さんを中心に服用後の異常行動が問題となりました。これらの行為との明確な因果関係は認められていませんが、インフルエンザにかかった際は医薬品の使用の有無に関わらず、少なくとも発症から2日・できれば解熱するまでお子さんが1人きりになることがないよう、保護者の方が様子を見てあげてください。

解熱剤

前述のとおり、解熱剤の一種であるアスピリンは脳症との関連が考えられるため、インフルエンザの発熱時にアスピリン(商品名:ポンタール・ボルタレン・バファリン)は使用しないでください。また、川崎病後などでアスピリンを定期内服している小児患者さんは注意が必要です。

通常、乳幼児期の発熱に使用されるアセトアミノフェン(商品名:カロナール・アンヒバ・小児用バファリン)は脳症を起こしにくく、安全に使用できる解熱剤として推奨されています。

インフルエンザの場合、安易な解熱剤の使用は症状を悪化させることがあります。できるだけ医師の診察を受けた上で服薬するようにしましょう。

自宅での注意点は

水分補給

高熱だけでなく、下痢や嘔吐といった消化器症状を併発すると、脱水状態になります。水分をしっかりと与えるようにしましょう。

湿度に注意

冬場は室内が乾燥し、のどや熱で過敏になった皮膚を痛めやすくなります。乾燥した環境はウイルスが活性化しやすいため、日頃から加湿器などを使用し、適度な湿度(50~60%)に調節しましょう。

室温と寝具や肌着にも注意が必要です

乳幼児が発熱していると、発汗により熱を下げようと厚着をさせたり、布団を多く掛けたりしてしまうことがあります。発熱の初期には寒気があるため保温が必要ですが、それ以外は厚着の必要はありません。発汗で不快な思いをしないよう、タオルで身体を拭き肌着の交換をしましょう。

まとめ

乳幼児のインフルエンザは重症化しやすく、合併症の中には重篤なインフルエンザ脳炎もあります。ワクチン接種により重症化を防ぐことが最も重要であり、インフルエンザの感染を疑う場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう