皆さんの中には、「38℃台の高熱が出たら風邪!」だと思っている方はいませんか?答えを先に言ってしまうと、それは誤りです。風邪以外にも多くの疾患が高熱を呈し、風邪と似た症状をきたすことがあります。ですから、風邪と思って飲んだ薬は効果がない、むしろ症状が悪化することもあります。そこで、この記事では「高熱」の原因となる疾患について詳しく説明します。

目次

高熱とは

「熱がある」とよくいいますが、一般的には平熱(35.0℃~37.0℃)より高くなった状態を発熱といいます。そして、高熱とは38.0℃以上を指すことが多いです。

高熱が出たときは細菌などによる感染症が疑われます。特に、実質臓器(細胞が詰まっている臓器)と呼ばれる腎臓や肺などが細菌感染を起こした場合に高熱が出ます。一方、管腔臓器(管状・袋状になっている臓器)と呼ばれる腸管や膀胱などでは、高熱は出にくいことが多いです。腸管では、腹膜まで炎症が及んだときに高熱が出ます。

高熱をきたす疾患は様々であるため、原因を明らかにするには医師による詳しい診察が必要となります。とはいえ、確実な診断を下すためには患者側の訴えが重要になることもあります。そこで、次の段落では高熱の原因となりうる代表的な疾患について説明します。

高熱の原因となりうる疾患

体温計を見る医師

1.インフルエンザ

インフルエンザは冬に多い感染症で、インフルエンザウイルスの感染によって起こります。体温は急速に39℃前後に達し、筋肉痛や関節痛とともに、全身のだるさ(全身倦怠感)、頭痛、食欲低下などの全身症状、そして鼻水やくしゃみなどの風邪様症状も現れます。インフルエンザの予防のために、予防接種を受けている方も多いと思います。しかし、たとえ予防接種を受けていても、インフルエンザで高熱が出ることがあります

2.風邪

単なる風邪であっても、高熱が出ることがあります。成人で38度を超える発熱があった場合は注意が必要です。また、高齢者の場合はそもそも熱が出にくいので、周囲の方が気をつけてあげてください。

加えて、風邪の場合、気管支喘息糖尿病などの基礎疾患を持っている方は風邪にかかりやすかったり、かかった場合に重症化しやすかったりします。詳細は、「風邪が長引く原因は?2つの合併症と病院へ行くべき人の特徴」を併せてご覧ください。

3.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

流行性耳下腺炎は、いわゆるおたふくかぜのことで、ムンプスウイルスの感染によって起こります。流行性耳下腺炎の多くは15歳以下の子どもに発症し、その流行時期は春から夏にかけて多く見られます。流行性耳下腺炎は耳の痛みから始まり、高熱、食欲低下、頭痛といった症状が現れます。また、流行性耳下腺炎はまれに難聴脳炎などを合併することがあるため早期診断・治療が重要となります。

4.扁桃炎

扁桃は口を開けた時に、口の奥に見えるアーモンド(扁桃)に似た形をした構造物です。その扁桃に起きた炎症を扁桃炎といい、細菌感染が原因となります。扁桃は真っ赤にはれ上がり、進行すると膿が溜まることもあります。扁桃炎では高熱の他、激痛全身倦怠感といった症状が現れます。

5.肺炎

肺炎は平成23年の時点で死因第3(12万4652人)(厚生労働省|平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況より引用)と、多くの方がかかる疾患です。肺炎の原因はウイルスや細菌が肺炎に侵入し、肺で炎症を起こします。また、患者の体力や免疫力の状態も肺炎の発症に影響を与えます。症状は1週間以上の高熱に加え、呼吸が苦しいなどがあります。

6.腎盂腎炎

腎盂腎炎は、腎臓の中の腎盂(尿が溜まるところ)が細菌感染することで起こる炎症です。高熱の以外に、背中や腰の痛み、膀胱炎の症状(残尿感、頻尿、血尿・タンパク尿など)がみられることがあります。早期治療によってすぐに改善する病気ですが、再発を防ぐため、抗生物質できちんと治療を行うことが必要です。

尿道の短い女性に多い病気ですが、前立腺肥大症の男性にも多くみられます。

7.胆嚢炎胆管炎

胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を溜めておく働きを持つ臓器です。胆管は、胆嚢と肝臓・十二指腸を繋いでいます。これらが細菌感染を起こした場合が胆嚢炎胆管炎で、高熱吐き気・嘔吐食後の右上腹部の痛み背中の激しい痛みなどの症状を生じます。胆石を伴う場合が大半です。また、胆嚢炎・胆管炎の二つは、併発することも少なくありません。

抗生剤や鎮痛剤による治療が行われます。胆石がある場合には、症状が治まってから胆石の摘出手術を行います。

8.乳腺炎

乳腺炎は、授乳中の女性にみられる炎症です。乳房の中に溜まった乳汁によって炎症を起こすうっ滞性乳腺炎と、乳頭の傷口から細菌が入る化膿性乳腺炎の2種類があります。

初めは乳房の皮膚の腫れや赤らみ、痛み、熱感などの症状を生じます。初期のうちに適切な治療を行えば早めに治りますが、悪化した場合に高熱や寒気、倦怠感などがみられます。

まとめ

高熱と一言に言っても、その裏に隠された疾患は多いです。本記事では高熱をきたす代表的な疾患を取り上げましたが、高熱の原因は説明した疾患以外の可能性もあります。中には、生活の質を低下させうる疾患もありますので、高熱が出たときは迅速に病院で診察を受けることをお勧めします。