大動脈瘤とは、主に腹部や胸部の大動脈の一部が膨らんで瘤状になったものです。また動脈が裂けて血管壁に血液が流入して起こる大動脈解離も大動脈瘤の一種です。
大動脈瘤は突然死の原因として知られていますが、予防や早期発見にはどのようにすれば良いのでしょうか?大動脈瘤の予防と早期発見について詳しく解説します。

目次

大動脈瘤とは?

大動脈瘤とは、大動脈の一部できた瘤状の病変です。瘤の場所や形状によって分類され、処置の緊急性も異なります。
主な大動脈瘤には、以下のものがあります。

真性大動脈瘤

真性大動脈瘤は動脈の3層構造(内膜・中膜・外膜)を保ったまま膨らんできた動脈瘤です。動脈瘤があっても無症状のことが多く、偶然発見されるケースも多くあります。

大動脈解離

動脈の内膜が破れてそこから血管壁の中に血液が流れ込み、中膜を引き裂いていき、偽の血路(偽腔)を形成するタイプの動脈瘤です。
いずれの大動脈瘤も原因の多くは動脈硬化で、その背景には糖尿病高血圧脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病があります。

大動脈瘤ができる原因や症状について詳しくはこちらの記事「命に関わるのに無症状?!大動脈瘤ってどんな病気」をご参照ください。

大動脈瘤を早期発見するには?

血圧計と聴診器

定期的な健診や検査をうけましょう

健康診断やほかの病気で検査を受けたときに、胸部のレントゲン検査で大動脈瘤が偶然発見されるケースも多くありますが、まずは大動脈瘤の主な原因である動脈硬化を早期に発見することが重要です。動脈硬化は、加齢に伴って進行し、糖尿病高血圧高脂血症などの生活習慣病喫煙がそのリスクを高めます。40代~50代以降は定期的に検査を受け、動脈硬化を早期に発見しましょう。

動脈硬化のリスクがある人は要注意

すでに高血圧や糖尿病、高脂血症がある人は注意が必要です。これらの病気は自覚症状のない軽症のうちから、じわじわと動脈硬化を進行させていきます。「症状がないから大丈夫」「薬を飲んでいるから大丈夫」と過信せず、定期的な検査を受けましょう。

動脈硬化の進行度合いを調べる検査には頸動脈エコーABI検査(足関節上腕血圧比)があります。また大動脈瘤の確定診断にはCT検査は欠かせず、腹部超音波検査(腹部エコー)は腹部大動脈瘤の発見には有用です。これらの検査も定期的に受けるようにしましょう。

大動脈瘤の予防は、まず動脈硬化を予防しよう!

1.高血圧を予防する

高血圧は頭が重い、めまいがするといった自覚症状がなくても、じわじわと血管を傷つけ、動脈硬化を進行させています。また既に動脈硬化があると、心臓は強い力で血液を送り出そうとするためさらに高血圧の状態となります。するとさらに血管が傷つき動脈硬化が進行します。

このように高血圧と動脈硬化は表裏一体の関係にあります。高血圧の予防には、減塩を基本とした食事療法のほか、禁煙や規則正しい生活を送るといった自律神経のバランスをとることも大切です。

2.糖尿病を予防する

糖尿病は血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きが悪く、高血糖の状態となる病気です。この高血糖の状態が血管を傷つけ、動脈硬化を進行させると言われています。

高血圧と同様、自覚症状のないうちからじわじわと動脈硬化を進行させていきます。糖尿病の発症には、過食や脂肪の多い食事、肥満、運動不足が関与しており、両親や兄弟が糖尿病という遺伝体質も関与しています。

糖尿病について、詳しくはこちらの記事「糖尿病ってどんな病気?専門医が語る、放っておいてはいけない理由とは」をご参照ください。

3.高脂血症を予防する

高脂血症もそのものには自覚症状はありませんが、高脂血症を放置しておくと動脈硬化を進行させていきます。

高脂血症遺伝体質肥満過食によって起こりますが、太っていないのにコレステロール値が高い人もいます。家族性高コレステロール血症という遺伝性疾患のほか、コレステロールの多い食品を好む人や、「隠れ肥満」と言われる内臓脂肪型肥満の場合には体重に関係なく高脂血症となります。高脂血症の予防には食事療法が有効です。

高脂血症の食事療法についてはこちらの記事「悪玉コレステロールが高いと言われたら?」をご参照ください。

4.肥満を予防、是正する

肥満になると血中のコレステロールが増え動脈硬化を引き起こしやすくなります。また、肥満は糖尿病や高血圧の原因ともなります。体重は適正体重(=身長(m)×身長(m)×22)を目安にコントロールしましょう。

肥満の予防や是正には、食事療法が基本となりますが、筋肉量の維持や血行の促進、ストレス解消のためにも、ウォーキングなどの運動も取り入れましょう。

5.禁煙

禁煙マーク

喫煙は血管を刺激し炎症を起こします。喫煙者はその習慣によって動脈硬化がかなり進行しているケースも少なくありません。健康のためにはタバコは止めましょう。

すでに大動脈瘤があるかも?急激な血圧の変動に注意!

動脈硬化やその原因となる高血圧、糖尿病などがあると、「もしかすると、すでに大動脈瘤があるかも…、大動脈解離を起こすかも…」と不安に思うこともあると思います。早めに医療機関を受診することが必要ですが、それと合わせて、日常生活上でも血圧の変動に注意しておきましょう。

温暖差に注意

血圧は1日のなかで常に変動していますが、早朝は体内の自律神経の調整や、外気などの影響から変動しやすい時間帯です。特に暖かい布団の中から冷えた室内に出るだけでも血圧は変動します。冬期にはあらかじめ室内やトイレを暖めておくなどの注意が必要です。

また、冷たい水で顔を洗うことや冷たい飲み物を飲むことも急激な血圧変動を引き起こしますため控えましょう。

※サウナは血圧の変動大!

高温のサウナは血圧を上昇させ、その後血管が拡張し血圧を低下させます。また直後の冷水浴によって再び急激に上昇します。サウナは健康に問題がない人であれば、血流が良くなり新陳代謝が促進される効果があるとされていますが、動脈硬化や高血圧の人には危険が伴います

便秘をしない

排便時に強く力むと、血圧は急激に上昇します。便秘で便が硬くならないように注意しましょう。また、排便後に反動で急激に血圧が低下することもあります。血圧の急激な変動は、動脈硬化を起こした血管を破綻する原因となるため、注意しておきましょう。

運動の方法や種類に注意

動脈硬化の予防には運動は効果的ですが、運動の種類には注意が必要です。無酸素運動と呼ばれる、息をこらえて一気に力を加える運動(ゴルフのスイング、バーベル、懸垂、腕立て伏せなど)は急激な血圧の変動を起こします。

これらの運動を行う場合は、徐々に負荷をかけていくようにしましょう。また、早朝のジョギングやウォーキングも起床後すぐではなく、時間をおいて行うようにしましょう。

ストレスにも注意

すぐカーッとなって顔を真っ赤にして怒ってしまう人は、見た目の通り、血圧も急激に高くなっています。また、几帳面な人、頑張りすぎる人、我慢してしまう人も、その感情の影響を受けて血圧が高くなっていることがあります。自分のストレスの原因や反応を理解し、リラックスできる方法を見出しましょう。また、規則正しく睡眠をとることはストレスコントロールの基本となります。

まとめ

大動脈瘤は命に関わる恐ろしい病気ですが、その原因の多くは動脈硬化であり、さらにたどると、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が影響していることが分かります。これらの生活習慣病の予防は食事、睡眠、運動、ストレスなど、ほかの病気の予防と共通することも多い基本的なものです。

小さな心がけが大きな病気を予防することにつながります。健康的な生活を習慣化し、40歳以降は定期健診も忘れずに受けましょう。