喘息治療で大切なことは、患者と医師が連携して症状をコントロールすることです。発作を予防して重症化を防ぐためになるべく早く治療を始め、継続して治療を進めていきましょう。今回は、喘息の治療とセルフケアについてご紹介します。喘息の症状やメカニズムは、「大人の喘息、なぜ起こる?原因と、喘息の仕組みとは」をご覧ください。

目次

喘息の治療はどのように行う?

喘息の病気のもとになるのは、「気道の炎症」「気道の過敏性」「気道のリモデリング(気道が不完全な状態で再生されてしまうこと)」です。この3つをターゲットとして喘息治療を進めます。気道は慢性的に炎症を起こしているので、発作がないときも治療が必要だということをしっかり理解しておきましょう。

診断

以下のような検査を行い、喘息かどうかを診断します。

  • 問診
  • 胸部X線検査
  • 心電図
  • 血液検査
  • 呼吸機能の検査
  • 気道の炎症を調べる検査
  • アレルギーの検査

もし喘息であれば、アトピー型非アトピー型か鑑別します。

重症度の判定

喘息の症状の特徴や呼吸機能を測定して重症度を判定し、治療の内容を選びます。

薬物療法

重症度に応じた薬物治療を行います。

治療効果の確認

治療を続けて喘息の症状がコントロールされているか、安定した状態が続いているかなどを確認します。もし発作の回数が減らなかったり、呼吸機能が不安定であれば、治療内容を見直します。

良好な状態の維持

症状をコントロールして安定した状態を維持し、日常的に制限がない生活を送ることを目指していきます。

喘息の薬物療法とは?

喘息の治療は、薬物療法を中心として進めます。吸入ステロイドで既に起こっている発作を軽減して、気道の炎症を徐々に鎮めて、気道が過敏に反応することを防ぐために使います。日頃から炎症を抑える予防薬として、ステロイドの吸入薬を使うのです。

ステロイドを吸入で使う場合、副作用も少なく安全であると考えられています。症状の重症度によっては、気管支拡張薬や内服薬を加えることもあります。発作が起きたときは、スプレータイプの発作治療薬を吸入することもあります。

発作のときはどうする?

喘息の発作は、僅かな息苦しさから命に関わる深刻な状態まで様々な程度で現れます。小発作では処方されている発作治療薬を使います。中発作以上はすぐに救急外来を受診してください。

いざという時の対応について予め医師と確認しておき、自宅で対応できるか、それともすぐに救急外来に行かなければいけないかを判断することが大切です。

動作 呼吸困難 ピークフロー値
喘鳴・胸苦しさ ほぼ普通 急いだり動いたりすると苦しくなる 80%
小発作(軽度) やや困難 苦しいけれども横になれる 80%
中発作(中等度) かなり困難で、辛うじて歩くことができる 苦しくて横になれない 60~80%
大発作(高度) 歩けない
会話をすることが難しい
苦しくて動くことができない 60%未満
さらに症状が強い状態 会話ができない
身体が動かせない
錯乱、意識障害が起こることもある
失禁する
呼吸が弱くなる
唇や爪などが青紫色になる
呼吸が停まる
測定不能

出典:「ぜんそく 正しい治療がわかる本」を元にいしゃまち編集部が作成

家庭で行う9つのセルフケア方法

読書する女性

喘息治療は発作を抑えるだけでなく、発作が起こらない状態を続けて、健康な人と変わらない生活を送るために行われます。患者さん自身が自宅での症状を管理しながら薬物治療を進めていく必要があるのです。自分にとって何が悪化要因となって、どんな時に症状が起きるのかを見定めて、それらを避けるように環境を整えていきましょう。

喘息日記をつける

喘息の症状を正確に知り、適切な治療計画を立てるために、喘息日記をつけます。日記には、自覚症状の程度、使った薬、天候や気温、日常生活の状況などを書き込みます。

日記の記録を続けていると、症状の変化に気づくようになり、予防対策を練ることができます。喘息日記は患者にとっては自己管理に役立ち、医師にとっては診療までの間の症状の推移が分かるものなのです。

ピークフロー値を測る

喘息は、気道が狭まることで、空気の通りが悪くなり息苦しさが生じます。

喘息の発作は、夜中や明け方に起こりやすいといわれているので、自宅で気道の空気の通り具合を確認するためにピークフローメーターという器具を使います。

できるだけ深く息を吸い込んだ後に素早く力いっぱい息を吐き出した強さのことをピークフロー値といいます。ピークフロー値が低いほど、気道が狭まり発作を起こす危険性が高いといえます。

ピークフロー値を記録することで、どのようなときに低い値になるかが分かり、発作の要因が分かったり、発作が起こるのを防いだりすることができます。

刺激となるものを避ける

喘息を起こす原因と症状が悪化する要因はおおよそ重なっていると考えられています。自分がどんな時に発作を起しやすいのかを知っておき、同じような状況を避けるように環境を整えることが喘息の発作を予防することに役立ちます。

ダニやホコリなどのハウスダスト、タバコの煙、急激な気温や気圧の変化、食品や食品添加物、アルコールなどが刺激となると考えられています。

ハウスダストを除去する

ダニは特に寝具に集中しているので、日頃から手入れを念入りに行いましょう。寝具類は日光にこまめに当てて乾燥させた後、掃除機で吸い取ります。布団乾燥機もダニ退治に効果があると考えられています。

掃除のしやすさやホコリの溜まりにくさを考えると、床をフローリングにするのが理想的です。できれば掃除機を毎日かけるようにして、雑巾がけを行います。部屋の空気が淀まないように、窓を開けて換気を心がけることも大切です。

感染症に気を付ける

喘息を起こしている方が風邪などの呼吸器の感染症にかかると、気道の粘膜がさらに過敏になって発作が起こりやすくなります。また、ウイルス自体が発作の引き金となることもあります。

風邪インフルエンザが流行する季節は、できるだけ人込みを避けるようにして、外出の際はマスクを着用するようにしましょう。帰宅後は、必ず手洗いとうがいをします。

バランスの良い食生活を心掛ける

喘息の原因として食物アレルゲンが特定されている方以外は、通常通りの食事で構いません。しかし、栄養バランス、食事の回数、量などを考えて規則正しく食事をとりましょう。

炭水化物や脂肪類の摂りすぎに気を付ける、色々な食品をとる、野菜や食物繊維は多めにとる、腹八分目で止めておく、などに気を付けましょう。

気道の粘膜に炎症が起きると、分泌物が多くなり粘り気のあるとなります。発作は痰を身体の外に出そうとする働きなので、痰の切れを良くして発作を起こりにくくするために、水分をしっかりとるようにしましょう。

ストレスを避ける

過労によるストレスも喘息の発作を引き起こしたり、症状の悪化を招いたりします。毎日忙しくて疲れが取れない、睡眠時間が十分に取れないといった生活が続くと、喘息の症状をコントロールするのが難しくなります。

ストレスを感じたときは、医師に相談して問題を解決するようにしましょう。入浴をする、音楽を聴く、スポーツをするなどの自分なりのリラックス方法でストレスを減らすようにします。

タバコ、アルコールを控える

タバコの煙に含まれる物質は、気道に強い刺激を与えます。タバコは自分が吸うのはもちろんのこと、周囲の喫煙による副流煙も喘息を悪化させます。

症状が落ち着いていて発作が出ていなくても、禁煙をすることが大切です。アルコールが発作を誘発する可能性もあるので、体調をみながら飲酒し、飲み過ぎないようにしましょう。

市販薬に気を付ける

喘息を患っている方の中には、特定の薬物に対してアレルギー反応が起こる体質の方がいます。

特に注意が必要なのは、アスピリンが引き金となって起こる発作です。インドメタシン、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセンなど市販の風邪薬、頭痛薬、解熱薬や生理痛薬などの成分に含まれることがあります。これらの薬は自己判断で使わないように気を付けることが大切です。

まとめ

喘息の症状をコントロールするためには、医療機関で行う薬物療法と自宅で行うセルフケアを続けていくことが必要です。発作の時の対応方法も普段から医師と相談しておきましょう。

ステロイド薬の吸入を続けながら、日常生活では気道の刺激になるものを避けるようにします。規則正しい生活を送り、医師と連携して治療にあたることが大切です。