起立性調節障害(OD)は、「めまい」「朝起きられない」「午前中具合が悪い」低血圧の症状による自律神経のバランスの乱れが原因で起こります。
自律神経のバランスの乱れが原因です。
思春期の子供に多く発症し、大人でもかかることがあります。

規則正しい生活が送れないため、怠け者など周囲の誤解を受けることがあり、精神的にもつらい病気です。
早めに専門医に相談すると、体と心はずいぶん楽になるでしょう。

目次

症状が3つ以上あるなら、起立性調節障害かも?

起立性調節障害は、自律神経である「交換神」と「副交感神」の互いの役割バランスが乱れることで、血圧や心拍をコントロールする「代償機構」が破綻して起こります。

体が急に成長する思春期に起こりやすい病気です。早期に発見し適切な治療を始めれば、回復は容易です。

詳しい症状については「起立性調節障害の原因とは?立ちくらみや疲れやすさは怠けではない!」をご参照ください。

ところが、思春期の子供は、心理的には家族に症状を伝えたくない、知られたくないなどプライベートを隠す傾向があります。
保護者が子供の様子をよく観察してあげてください。

次のような症状が3つ以上見られるときは、起立性調節障害が考えられます。
とくに、遅刻や欠席が目立つようになった場合には一度、専門医に相談してみましょう。

  • めまい立ちくらみがよく起こる
  • 疲れやすく、疲れがなかなか抜けない
  • 少しの運動で、息切れ動悸がする
  • 朝なかなか起きられない
  • 午前中は思考力、集中力がない
  • 午後から夕方になると、体や頭が回復する
  • 食欲がないことが多い
  • 乗物酔いをするようになった

子供は小児科、大人は心療内科循環器科に相談

子供の場合は、精神科や心療内科ではなく、小児科の受診をお勧めします。

沢山の子供の体調をみてきた科医は、起立性調節障害についての豊富な知識を持つ人が多いといわれています。
起立性調節障害の書籍を執筆している医師のほとんどは、小児科医です。

行きづらいという人もいるかもしれませんが、中学生や高校生でも小児科に行くのがよいでしょう。無理はしなくてもよいですが、症状が現れている「午前中の受診」が推奨されます。

大人は心療内科循環器科に相談します。
気になる症状をすべて伝えてから「起立性調節障害ではないでしょうか?」と訊ねて構わないでしょう。

起き上がったときの血圧と心拍で診察

病院ではまず、問診(症状や病歴などの質問を受けること)や医療面接(医師と患者が良好な人間関係を築くためのコミュニケーション)が行われます。

起立性調節障害の症状は、脳腫瘍・甲状腺機能異常(低下症)・不整脈など他の病気の症状と似ているところがあります。
したがって、他の病気が潜んでいないか、血液検査、検尿、胸部レントゲン検査、心電図などを実施するのが一般的です。

検査で異常がなければ「新起立試験」をはじめます。

新起立試験

  1. 仰向けで10分間安静にしたあと、血圧と心拍を3回測定する
  2. 合図で立ち上がり、血圧と心拍を1分、3分、5分、7分、10分ごとに測定する

新起立試験の結果で、起立性調節障害のサブタイプ(分類)を判定します。

症状で分かれる、4つのタイプ

起立性調節障害には、症状の特徴によって次の4つのタイプに分かれます。

起立直後性低血圧

起立直後に血圧が大きく低下し、正常に回復するまでに時間がかかります。
血流や血行が悪く、特に脳への酸素不足で立ちくらみ・ふらつきが頻繁に見られます。

交換神経の活動が鈍く、常に倦怠感に悩まされます。一般的に一番多いタイプです。

体位性頻脈症候群

起立直後の血圧は正常ですが、しばらくして著しい心拍数の増加(1分間に115回以上)が見られます。

健康な人の心拍数は、1分間に約70〜80回ですから35回以上増えています。全身がだるく、ふらつき、頭痛が起こります。

神経調節性失神

起立直後の血圧は正常ですが、時間が経つと顔面蒼白になって血圧が突然低下し、意識がもうろうとなり失神することがあります。
まれに痙攣発作を起こします。朝礼で生徒が失神して倒れるのはこのタイプです。

遷延性(せんえんせい)起立性低血圧

起立直後の血圧と心拍は正常です。
しかし、起立後約3~10分後に血圧が15%以上下がり、動悸冷や汗・気分不良を起こします。比較的珍しいタイプです。

自分でできる治療からはじめる

女性の首下-写真

起立性調節障害は、心の問題ではなく、体の不調が原因であることを、患者や家族が理解するところから治療ははじまります。
焦らずに取り組むことが大事です。

患者が前向きに治療できるよう、周囲の人は穏やかに見守ってあげましょう。

治療は、まずは非薬物療法を行います。自分でできる治療(セルフケア)です。日常的に次のことに注意しながら生活し、まず症状を和らげます。

  1. 起床と就寝の時間を3日ごとに30分ずつ早める
  2. 1日約1.5〜2リットルの水分を摂取する
  3. 1日約10〜12グラムの塩分を摂取する
  4. いきなり立ち上がらない
  5. 立ち上がるときは、30秒以上足踏みをしてからゆっくり立つ
  6. 歩くときは、はじめに頭を前にかがめる姿勢をとる
  7. 温度の高い場所で過ごさない
  8. 体調が悪くても、なるべく横にならない
  9. 夕方など体に負担がない程度に軽い散歩をする
  10. 体調がよい午後は、できるだけ登校、出勤して活動を心掛ける
  11. むくみ防止用の靴下をはく
  12. 夜9時以降のテレビ、ゲーム、スマホは控える

3年後には、約70〜80%回復する

薬物療法は、非薬物療法のあとで行います。薬によっては、水分や塩分を指定量摂取したあとでないと効果がでにくいものがあります。
日常生活の改善を行ったうえで、薬の服用をはじめます。

医師の指示で処方される薬を服用して血管を収縮させ、血圧を上げます

効果は体質や症状によって様々で、すぐに改善するとは限りません。「薬とは長いつき合いになりそうだ」と思って、決められた期間飲みきるようにしましょう。

患者が小学生の場合、薬の管理は保護者が行います。中学生以上であれば自分で管理し、自分で服用する習慣を教えます。

治療を進めると、症状が軽い人では数ヶ月以内に改善するようです。日常生活に支障のある中度の症状では、1年後の回復率は約50%3年後は約7080%といわれています(起立性調節障害ガイドラインより)。

回復したときに、症状が僅かに残ることはありますが、社会生活に大きな影響はないとされています。

まとめ

学校や職場に、書の提出と併せて、病気への理解を求めることが治療の第一歩です。
周囲の人は、病気を理解し、怒らず焦らず見守る姿勢が必要です。

患者が小学生であれば、生活の注意点を先生に伝えることが大事でしょう。患者本人が生活を少しずつ改善し、体が回復するのを薬がサポートします。
時間はかかるかもしれません。体と会話しながら、ゆっくり治療に向き合いましょう。