人間ドックで膵機能をどのような項目で確認すれば良いのでしょうか?膵機能の検査値に異常があると、どんな病気が隠れているのでしょうか?ここでは、膵機能検査値について解説していきます。

目次

膵機能検査とは?それぞれの数値が意味するもの

膵臓には主に下記のような役割があり、消化や血糖値の調整を行う重要な臓器です。

  • 膵液の分泌:糖質・たんぱく質・脂肪の消化分解
  • インスリンの産生:血糖値を下げる
  • グルカゴンの産生:血糖値を上げる

人間ドックでは、膵機能は血液検査で検査しています。膵機能を示す検査項目とその数値の意味について解説していきます。

アミラーゼ

アミラーゼは膵臓唾液腺(だえきせん)より分泌される消化酵素です。膵臓や唾液腺の細胞が障害されると血液中に増加してきます。血液中のアミラーゼは全身を回り、腎臓でろ過され尿に排泄されます。血液検査のほか、尿検査でも測定できます。

アミラーゼ値は、痩せている人は太った人より値が20%ほど高くなるといわれています(J.フロント健康保険組合より)。また、長期間にわたってお酒を沢山飲んでいる、というケースでも数値は上がります。

リパーゼ

リパーゼは脂肪を分解する消化酵素です。お酒の飲み過ぎなどで、膵細胞が破壊されると血液中に増加してきます。検査値は食事の影響を受けるため、検査のためには空腹で採血することが大切です。

膵機能の検査値異常、どんな病気が疑われる?

検査項目 基準値 基準値から外れた場合に
疑われる病気
アミラーゼ 40~
135IU/L
【高値】

  • 膵疾患
  • 肝障害
  • 耳下腺炎
  • 子宮外妊娠
  • 腸閉塞
  • 腎機能障害

【低値】

リパーゼ 15~
56IU/L
【高値】

【低値】

  • 膵臓全摘出後
  • 末期の慢性膵炎

出典:神戸市立医療センター中央市民病院を参考に
いしゃまち編集部作成

基準値は、検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります。

膵機能検査値の異常を認めてもすぐにその病気だということではありません。体格や食事の影響で数値が上がることもあります。しかし、膵臓に病気が隠れている場合、進行すると機能を完全に損なう恐れもあり、重篤な症状をきたすケースもあるのです。

人間ドックで「要精密検査」と指摘された場合、自覚症状がないからと放置しておかず、なるべく早めに内科を受診することが大切です。

病気が疑われるとき、他にどんな検査が必要?

看護師-写真
「要精密検査」となり、再度血液検査を行ったうえでやはり検査値が基準値を外れた場合には、病気の可能性を疑い精密検査を行うことになります。

膵機能検査値に異常があっても、位置的に胃の裏側にあるため腹部エコーなどの画像検査で病気を見つけにくい臓器であり、診断までに時間を要するケースもあります。医療機関で注意深く経過をみていくことが重要です。

ここでは、人間ドックで異常を指摘されて判明することがある膵臓疾患について、病気の概要、検査や治療について解説していきます。

1.慢性膵炎

慢性膵炎は膵臓の細胞が少しずつ破壊される病気です。慢性的に、お酒を飲んだあとや脂っこい物を食べたあと、食べ過ぎたあとなどに、みぞおちや左のわき腹、背中の左側などが痛い、または下痢をするといった症状があります。症状がありつつも日常生活に大きく支障をきたしていなかった人で、人間ドックで指摘されるケースがあります。

診断には、腹部エコー検査CT検査ERCP(内視鏡的逆行性胆膵管造影法)、MRCP(MR胆管膵管撮影)などの検査を行います。

  • ERCP:内視鏡で胆管・膵管を撮影する検査です。内視鏡を口から十二指腸まで入れ、その先端から細い管によって造影剤を注入します。胆石や膵石が見つかった場合、ERCPによって除去手術を行うこともできます。
  • MRCP:胆汁の流れを観察し、胆嚢や胆管、膵管の様子を見ることができます。内視鏡を使用する検査と比べ、患者さんの負担が少ない検査ですが、心臓ペースメーカーを使用している方は受けることができません。

治療は、膵機能がまだ保たれているようなら、禁酒脂っこい食事を避けるなどの食生活の見直しを行い、消化吸収を助ける薬などを服用することで、進行を抑えます。すでに膵機能の著しい低下があり、インスリンの分泌が妨げられているケースでは、インスリン注射による血糖値コントロールが必要となります。

2.膵臓がん

膵臓がんは初期には無症状であることが多く、進行してから発見されることが多いため予後も良いとはいえません。人間ドックで膵機能検査値の異常を指摘された場合、膵臓がんが隠れていないか慎重にみていくことで、早期発見に繋がる可能性があります。

診断は血液検査で腫瘍マーカーを確認するほか、腹部エコー検査超音波内視鏡CT検査MR胆管膵管造影などを組み合わせて行います。

治療は早期発見例で切除範囲が限定的であれば手術療法を行いますが、進行・転移例では化学療法を行います。

治療するほどではないと言われたけれど…、日常生活での注意点

医療機関を受診し、膵臓が弱っているが治療するほどではないといわれ、ほっとしている方もいると思います。しかし、今後も膵臓に負担をかけ続けていると病気に繋がる可能性があります。生活習慣を改善するだけで膵機能検査値が良くなった、というケースもありますので、思い当たることがあれば改善していきたいものです。

膵臓に負担をかけない生活として、下記のようなことを注意しましょう。

  • お酒をやめる
  • 可能な限り禁煙
  • 脂っこい物の摂取を控える
  • 甘い物を食べ過ぎない
  • 辛い物、カフェインなどの刺激物を控えめにする
  • 大食い・早食いは控える
  • ストレスの少ない生活を心掛け、しっかり休息をとる
  • 定期的に人間ドックや健康診断で膵機能をチェックする
  • 定期的な検査を受けるようすすめられている場合は、医師の指示に従い受診する

まとめ

膵臓は消化や血糖値の調整を行っており、そのため病気にかかると深刻な症状や病状をきたしやすい臓器です。膵臓の病気は早期発見が比較的難しいですが、人間ドックで膵機能の異変を早めにキャッチしたいものですね。人間ドックを受けてみようかなと思った方は、こちらから予約することが可能です(人間ドックのここカラダのページが開きます)。

アルコールや暴食が膵臓に負担をかけやすいため、日ごろから膵臓に優しい生活を心掛けることも大切です。