「炎症反応検査」と聞いても、人間ドックのどんな検査項目なのか、どんな病気の可能性を調べているか分からない人も多いのではないでしょうか。ここでは炎症反応検査の項目や、異常値を示したときに考えられる病気について解説していきます。

目次

どんな検査で炎症反応の数値をチェックする?

炎症は体のどこかに痛み赤み腫れが生じ、それらに伴い機能障害を起こすことをいいます。例えば「肺炎」「中耳炎」など「○○炎」と呼ばれる病名は、それぞれ臓器や組織に炎症が生じる病気を指します。他にもやけどや骨折などの外傷、虫刺されで腫れがひどいケース、抜歯や外科手術の傷でも炎症が生じます。

炎症は皮膚など体の表面で目に見える部位の場合は分かりやすいですが、臓器など体の内部で生じるときは炎症が起きているかどうか目で見て確認することができません

そこで、内部に炎症があるかどうか判断する指標として、炎症反応検査があります。人間ドックでは血液検査で調べられます。ただオプションの場合もあるので、気になる人は項目を確認の上、申し込むと良いでしょう。

炎症の有無を判断するための検査項目には以下の3つがあります。

1.CRP(C反応性タンパク)

体に炎症や組織の破壊、壊死が起こったときに肝臓で合成され、血液中に増えるタンパク質がCRPです。CRPは、肺炎球菌の細胞の壁にあるC多糖体に反応するタンパク質として発見されましたが、肺炎以外の炎症でも増加します。炎症が無ければCRPは微量しかないため、血液検査で上昇を示すことは体に炎症があることを意味します。

CRP値の上昇は炎症発生の半日後くらいから始まります。CRP値は炎症の程度や活動性を反映し、炎症が重度であればあるほど数値は高くなります。また、炎症が回復してくると数値はすぐに下がります。

2.赤血球沈降速度(赤沈、ESR)

試験管内の赤血球が沈んでいく速度を診る検査で、感染症や炎症性疾患があると速度が速くなります。ただ多くの病気で速度が速くなるため、他の検査結果と組み合わせて判断する必要があります。また、CRPに比べ検査結果が出るまでタイムラグがあり、炎症が回復しても基準値に戻るまで日数を要します。

3.白血球数

白血球は細菌など異物の侵入に対して兵隊のように働き、体を守る役割を果たしています。異物が侵入すると白血球数を増やして戦うことから、血液検査で白血球数が多い場合は細菌などの侵入によって感染が起き、炎症を起こしていることを意味します。炎症発生に最も早く反応して数値が上昇します。

検査値の異常、どんな病気が疑われる?

人間ドックで炎症反応検査値に異常があると指摘された場合、どのような病気の疑いがあるのでしょうか?下記の表に基準値と基準値を外れた場合に疑われる病気についてまとめてみました。

炎症反応検査の異常で疑われる病気

検査項目 基準値 基準値から外れた場合に
疑われる病気
CRP 0.3mg/dl以下 【高値】

赤沈 1時間値

男性10mm以内

女性15mm以内

【高値】

  • 結核などの感染症
  • リウマチ・膠原病などの慢性の炎症
  • 貧血
  • 白血病
  • 悪性腫瘍
  • 肝疾患

【低値】

  • 多血症
白血球 4000
~9000個/μl
【高値】

  • 細菌感染症
  • 骨髄性白血病
  • リンパ性白血病
  • 単球性白血病
  • 脱水
  • ステロイド全身投与

【低値】

出典:日本衛生検査所協会|検査と病気の関係を参考にいしゃまち編集部作成

基準値は、検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります。炎症反応検査値の異常を認めてもすぐにその病気だということにはなりません。風邪で粘膜に痛みがある場合に数値が上がるケースもあります。また赤沈は妊娠や貧血でも異常値となることがあります。

しかし、人間ドックで「要精密検査」と指摘された場合は、炎症を伴う病気もしくは悪性腫瘍などそれ以外の病気が隠れている可能性もあります。自覚症状がないからと放置せず、なるべく早めに医療機関を受診することが大切です。

病気が疑われるとき、他にどんな検査が必要?

医療スタッフ-写真
「要精密検査」となり、医療機関を受診すると再度血液検査を行います。それでも炎症反応検査値が基準値を外れた場合には、病気の可能性を疑い精密検査を行うことになります。

検査値が異常を示した場合、細菌やウイルス感染に伴う急性炎症であることが多く、人間ドックで発見されるよりも医療機関を受診し診断されるケースがほとんどです。しかし慢性的に炎症をきたすような疾患は、症状に気づかず人間ドックなどで見つかるケースもあります。

ここでは、人間ドックで異常を指摘されて判明することがある疾患について、病気の概要、検査や治療について解説していきます。

1.自己免疫疾患

炎症反応検査の異常により、疑われる病気のひとつに自己免疫疾患があげられます。自己免疫疾患の中でも関節リウマチは最も頻度が高い疾患です。

関節リウマチは免疫の異常により関節の腫れや痛みを生じ、それが続くと関節の変形をきたす病気です。発症は3040に多く、女性に多いことが特徴です。

関節リウマチの初期症状は軽度であることが多く、関節の腫れやこわばり、微熱程度です。また関節痛があっても「旅行で長距離歩いたから」、「家事をしすぎて」と気にとめず、放置するケースも多いです。血液検査ではCRP値の上昇赤沈亢進がみられます。

診断には、関節リウマチの場合に陽性となるリウマチ因子CCP抗体を血液検査で測定し、関節炎の程度をエコー検査などで確認します。

治療は最近では効果のある薬剤が増えています。症状が軽い初期段階に発見し適切に治療することで関節の変形を防ぐことができます。主に抗リウマチ薬の服用、生物学的製剤の投与で症状を抑えられます。

関節リウマチ以外には、強直性脊椎炎、多発性筋炎・皮膚筋炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、リウマチ性多発筋痛症といった疾患があげられます。

2.その他の原因

悪性腫瘍でも炎症反応検査値の上昇を示す場合があります。特に増殖の早い腫瘍や転移をきたしている場合、腫瘍による臓器の損傷が大きい場合に多く見られます。

炎症反応検査値の異常だけでは悪性腫瘍の診断には至りません。人間ドックの血液検査で合わせて測定される臓器機能検査値腫瘍マーカーなどに異常がないか、エコー検査CT検査などの画像検査と組み合わせて悪性腫瘍の可能性を判断します。症状や治療はどの臓器に悪性腫瘍が生じるかによって異なります。

病気の可能性がなさそうでも…日常生活での注意点

精密検査で病気の可能性はなさそうと判断されればまずはひと安心ですが、数値がまだ基準値に戻っていない場合は経過をみていくことが必要です。炎症部位が特定できている場合には、その治療をしっかり行うことも大切です。医師の指示に従い、炎症反応検査値が基準値に戻るまで通院を続けましょう。

炎症反応検査値が基準値を外れている場合、体に炎症があることは分かっても、部位を特定できるわけではありません。人間ドックを受ける際には最近の体調を把握し、気になる痛みや腫れている部位があれば申し出ましょう。異常値の原因を探るために有用です。

まとめ

炎症反応検査は体に生じている炎症を発見するための重要な検査です。体に潜む慢性的な炎症の早期発見に役立つので、人間ドックなどで定期的に検査を受けることも大切です。人間ドックに興味がある人はこちらのリンクから予約することが可能です(人間ドックのここカラダのページが開きます)。