子供を中心に患者が多い「マイコプラズマ肺炎」
肺や気管支に炎症を起こすため、がしつこく続く病気として知られています。

実は咳の症状以外にも中耳炎皮膚の変化、確率は低いですが無菌性髄膜炎など重たい合併症が起こることもあります。

今回はマイコプラズマ肺炎の症状や合併症について見ていきましょう。

目次

マイコプラズマ肺炎とは

マイコプラズマという微生物が引き起こす病気です。
肺炎球菌が原因の肺炎と区別するため以前は「異型肺炎」と呼ばれていました。

発熱や全身のだるさ、頭痛がみられる点は風邪の症状と同じですが、その後3~5日してから乾いた咳が出るのが特徴です。
なり始めではぜいぜい、ひゅーひゅーという呼吸音がする喘鳴(ぜんめい)も確認されています。

熱が下がっても咳は止まらず、期間は個人差がありますが長引く人で約1ヶ月続きます。
咳はその後痰が絡んでくる場合もあります。

1年中発症する病気で、流行する時期は年によってまちまちです。
2016年の報告数は過去10年と比べても高い水準で推移しており、注意が必要です国立感染症研究所より)。

治療法は

抗菌薬による化学療法が行われていて、基本的にはマクロライド系抗生物質を服用します。

2~3日飲んでも症状が改善していかない場合は、病原体が薬への抵抗力を持っていて効かない(耐性)ケースかもしれません。
そのときはしっかり医師に伝えましょう。

小児だとトスフロキサシン、16歳以上の人はテトラサイクリン系やキノロン系の薬を新たに処方されます。

服用期間は3~14日間と処方される薬によって変わります。もらった薬は必ず飲みきりましょう。
原因となる菌が残って薬に耐性を持つ菌ができてしまう可能性があります。

発症したときにみられる合併症

発疹-写真

マイコプラズマは肺や気管支といった気道に炎症を起こします。
一方で呼吸器以外にも炎症を引き起こす可能性があり、多彩な合併症を持つ病気としても知られています。

中耳炎

マイコプラズマが気道を通じて中耳に侵入した結果、中耳炎を発症します。
耳の痛みや、鼓膜の内側にある空間(鼓室)に膿がたまり、その膿が破れた鼓膜から流れ出る耳漏が起こります。

このほか耳が聞こえにくいなどの難聴の症状がみられることもあります。

治療では抗生物質を飲んだり点耳薬を使います。鼓膜が膿で膨らんでいる場合は切って出してもらいます。

皮膚の病変

マイコプラズマによるアレルギー反応として、赤い発疹や蕁麻疹など皮膚の病変が起こることもあります。

なかでも多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)は丸くて盛り上がった赤い発疹が手足にそれぞれ多く出てくるのが特徴です。
軽い場合はステロイド軟膏を塗り、抗ヒスタミン薬を飲んで治療します。重症の場合はステロイドを薬として飲んだり、点滴されます。

また、全身の皮膚や粘膜に紅斑やただれ、水疱がみられるスティーブンス・ジョンソン症候群も合併症の一つです。
早期のステロイド薬が効果的です。

胸膜炎

肺を取り囲んでいる胸膜まで炎症が及びます。
胸痛、息切れがみられ、呼吸を深くすると症状が強く出ます。抗生物質を服用して治療します。

無菌性髄膜炎

マイコプラズマは無菌性髄膜炎を引き起こす病原体の一つでもあります。
その名のとおり髄膜に炎症がみられ、主な症状に全身のだるさ、発熱、頭痛、嘔吐があります。抗生物質を飲んで治します。

このほか脳炎肝炎、膵(すい)炎や溶血性貧血、関節炎に心筋炎、ギラン・バレー症候群も合併症として報告されています。

合併症や感染を防ぐために

合併症を予防するには早めの治療が肝心です。菌の感染を肺や気管に留めるためにも、適切な抗生物質を飲む必要があります。
マイコプラズマは耐性菌の存在が見過ごせないので、処方してもらった薬で効果があるかどうかの見極めが重要となります。

また感染しない、周囲に感染を広げないことも大切です。マイコプラズマ肺炎は、感染者の咳やくしゃみで病原体が飛び散って広がります。

家庭や学校など限られた空間で、なおかつ近い範囲で感染者と接しているとかかりやすくなります。予防として手洗いやうがいはもちろん、マスクも着用しましょう。

マスクをしていないときも咳やくしゃみを人に向けない、するときはティッシュでしっかり鼻や口を覆うなどの基本的なエチケットが大切です。

まとめ

マイコプラズマ肺炎は1年中発症する可能性があります。子供を持つ家庭は特に注意が必要です。

大人もつらい咳だけでなくほかの合併症を引き起こすことを頭に入れておき、少しでも咳が長引くと感じたら病院を受診して確認してもらいましょう。