いきなり息苦しくなって辛い思いをしたことはありませんか?呼吸に関する症状は、子供から大人まで、幅広い年齢でみられます。ここでは、突然呼吸が苦しくなった場合に考えられる病気を紹介していきます。

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突然息苦しさに襲われる病気は?

喘息(ぜんそく)

喘息は気道の粘膜が慢性的に炎症を起こしている状態で、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれる「ゼーゼー、ヒューヒュー」という呼吸音が聞こえます。いきなり呼吸が苦しくなり、激しいを伴います。そのほか動悸、息切れなどがみられる場合もあります。

ダニやハウスダスト、花粉などのアレルギーが原因となるものが、小児喘息の90%以上、成人の70%近くを占めています(「全部見える 呼吸器疾患」p.136より)。そのほか大気汚染や天候、気温の変化、成人ではタバコや過労・ストレスも原因になり得ます。アレルゲンなどのちょっとした刺激で気管支周りの筋肉が収縮し、空気の通り道が狭くなって息苦しさを覚えます。

子供の5~7%、大人の3~5%に発症し、子供の場合は男子に比較的多くみられます(第一三共ヘルスケアより)。小児に発症した場合は大人になるまでに症状が治まる(寛解)ことが多いですが、持ち越す場合や、一度は治ったのに再発するケースもあります。

吸入ステロイド薬長時間作用性β2刺激薬長時間作用性抗コリン薬抗アレルギー薬を長期間服用して治します。原因となるアレルゲンを日常生活からできるだけ取り除いていくことも大切です。

急性肺血栓塞栓症

何らかの物質が血液に乗って肺まで流れ、細い動脈を塞いでしまうことで起こります。原因の多くは足の静脈にできる血栓で、その血栓は血管の壁から剥がれたものです。その場合は急性肺血栓塞栓症といいます。脂肪やがん細胞も、動脈を塞ぐ物質となります。

突然息苦しくなるほか、胸の痛み、血痰が出ます。動脈を塞ぐ程度がひどくなると、顔面蒼白冷や汗などの症状が現れてくる場合もあります。

長時間同じ姿勢を続けてから急に立ったり歩いたりした場合や、妊娠中の女性、肥満、糖尿病などの疾患を持つ人に起こり得ます。飛行機に乗っていて窮屈な姿勢を取った人に発症することからエコノミークラス症候群という呼び名でも知られています。

足を動かすなどのマッサージをしたり、弾性ストッキングを履いたりすることが予防に繋がります。また、危険性が高い方では血栓ができないよう抗凝固薬を服用して予防することもあります。できてしまった血栓は溶解薬を服用するほか手術で取り除きます。

抗凝固薬のワルファリンカリウムは、納豆などに含まれるビタミンKやアルコール、健康食品を摂取していると効果が薄れたり悪影響を与えたりする恐れがあります。服用時は医師や薬剤師の指示をしっかり仰ぎましょう。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)

急激な呼吸困難とともに、低酸素血症(血液中の酸素が低下した状態)が起きます。重症化した肺炎誤嚥性肺炎(食べ物や飲み物、唾液が誤って気管に入ること)、敗血症などの病気がきっかけとなります。

活性化した白血球の一部である好中球から、細胞や組織を傷つける活性酸素や蛋白分解酵素が放出され、肺胞や毛細血管の細胞がダメージを受け、血液中の水分や蛋白がにじみ出て、肺胞にひどい浮腫を生じ、肺水腫の状態となります。

肺の中の酸素と二酸化炭素の入れ替えがうまいくいかなくなり、単純に酸素を吸入する程度では良くなりません。肺炎など基礎疾患を治療した上で、機器を使った人工呼吸療法で治療していきます。

パニック女性となだめる女性-写真

過喚気症候群

いわゆる過呼吸です。ストレスや緊張、不安などをきっかけに、呼吸中枢が過剰に刺激されて起きます。多呼吸や呼吸困難、めまいやパニック、手足や口唇の痺れを伴います。

命の危険はないので症状が出た場合は落ち着き、ゆっくりとした呼吸を意識します。

なお、袋で口を覆って自分の吐いた息を再び吸うペーパーバッグ法は、過換気症候群の対処法としては推奨されていません。医療機関などで安全に管理できる状態の患者さんに対しては行われることがありますが、その場合も医師の指導のもとでのみ行います。

パニック発作

ある物事に対する不安からくるもので、実際にその不安と遭遇したときなどに急に起こります。胸の痛みや息苦しさ、めまい、吐き気などが出てきます。過喚気症候群と同様に命に関わるものではなく、症状は10分以内に治まります。決して珍しいものではなく、成人の10%以上で起こり、特に女性は男性の2~3倍の割合で発症しています(メルクマニュアル家庭版より)。

ほとんどの人は自然回復しますが、2回以上発作を起こす、発作への恐怖心が1カ月以上続くパニック障害と診断されることがあります。その場合、抗うつ薬などを飲んだり、不安を取り除くカウンセリングが行われたりします。

まとめ

呼吸が突然苦しくなる原因は、肺や気道に炎症などが生じるもの、精神的なものなど様々です。しっかり治療に取り組めば改善されるものが多いので、悲観的になることなく病院を受診し、治療に臨みましょう。