急にフラッとなってその場にしゃがみこむ、そしてその原因がわからなくてなんとなく不安に感じてしまう…そのような経験をした方は少なくないのではないでしょうか?立ちくらみってなんで起こるのだろう?どうしたら予防できるのだろう?今回は、そのような疑問にお答えします。

目次

立ちくらみの原因は?

立ちくらみは、脳へ血液・酸素が十分に送られないことで起こります。
脳への血流を維持しているのは血圧なので、血圧が低くなると立ちくらみが起きやすくなります。

また、血圧の調節がうまくいかないときにも起こりやすくなります。

次項では、立ちくらみの代表的な病態とその対処法についてお話します。

起立性低血圧

この病態を理解していただくために、まず血圧調節のメカニズムについてお話します。

血圧調節のメカニズム

血圧は、頸動脈や大動脈弓と呼ばれる動脈に存在するセンサーによって監視されています。

血圧が下がると、それをセンサーが感知して延髄という中枢に指令を送ります。
すると、延髄は自律神経(交感神経と副交感神経)に指令を送り、交感神経を活性化させ、逆に副交感神経の働きを抑制します。

交感神経は、末梢の血管をギュッと締め、心拍数を上げる作用を持っています。このため、脳への血流が保たれ、血圧が低下するのを防いでいるのです。

起立性低血圧の病態

寝ている状態から急に立つと、血液が重力に従ってお腹や下肢の方へ移動するため、血圧が急に低下します。
この立った時の血圧低下を代償できない場合に、起立性低血圧が生じます。

起立性低血圧の原因には以下のようなものがあります。

  • 自律神経の障害がある場合(自律神経失調症パーキンソン病、糖尿病性自律神経障害など)
  • 出血、脱水などにより体内の血液量が少ない場合
  • 降圧薬利尿薬を服用している場合

対処法は?

まずは、寝ている状態から急に立ち上がらないようにしましょう。
特に朝は低血圧になっているので、起床時は起立性低血圧を起こしやすくなっています。

起きるときはゆっくりと、いったん座って心を落ち着けてから立ち上がるようにしましょう。

普段から低血圧の人は多めの水分摂取や塩分の多い食事をとるといった行動も効果的です(ただし、心不全などの合併症がない場合)。

基礎疾患がある場合はその治療を行うことが必要です。

不規則な生活により自律神経が乱れている場合は、早寝早起き、健康的な食事、適度な運動など規則正しい生活リズムを心掛け、自律神経のバランスを整えましょう。

血管迷走神経反射

立ちくらみの原因として最も多いのが、血管迷走神経反射です。

迷走神経は副交感神経です。副交感神経は交感神経と逆の作用をもっています。つまり、血管を拡張させ、心拍数を下げる作用を持っています。

突然の痛みや精神的なショック、空腹、長時間の立位、排尿や排便などの刺激によって迷走神経は活性化します。
すると、血管の拡張と心拍数低下により血圧が低下し、立ちくらみを引き起こしてしまいます。

よく、学校の全校集会などで長時間立ちっぱなしで校長先生のお話を聴いていると、突然しゃがみこむ人や倒れる人がいませんでしたか?また、お年寄りがトイレで用を足した直後に倒れるという話を聞いたことはありませんか?

これらは、まさに迷走神経反射によって引き起こされているのです。

対処法は?

立ちくらみ2

血管迷走神経反射では、このままでは倒れてしまいそうという前兆があることが多いです。

そのような感覚をもったら、早めにしゃがみこんだり、横になったりして、倒れるのを防ぎましょう。また、なるべく迷走神経反射を起こす誘因、例えば緊張や暑さ、痛み刺激などのストレス状態を避けるようにしましょう。

お年寄りでは、先ほど述べたようにトイレでの立ちくらみが非常に多いです。

なので、トイレを洋式にする、手すりをつけるなどの工夫をして転倒を防ぐこと、また冬場はトイレの中や便座を温めて副交感神経を過度に活性化させないことなどを心がけましょう。

血管迷走神経反射自体は身体の正常な反応として起こるものなので、治療は全く必要なく、予防と転倒防止が一番重要です。

しかし、立ちくらみだと思ったものが失神である場合もあり、不整脈などが隠れていることもあり得ます。繰り返す場合などには、注意が必要です。

最後に

今回は、立ちくらみの原因や病態、その対処法についてお話ししました。
立ちくらみのほとんどは一過性のもので問題になりませんが、立ちくらみによる転倒はとても危険なので、未然に防がなければなりません

立ちくらみの予防、転倒防止のためにも、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。