高血圧を防ぐ役割を持つミネラル成分・カリウム。健常者が取り入れる分には何も問題がないカリウムですが、腎臓の機能に障害があったり、人工透析を受けていたりする患者さんの場合、摂取量の制限が必要となります。カリウムをとりすぎてしまうと、高カリウム血症といって様々な症状が起こってしまうことがあるのです。本記事では、この高カリウム血症について解説します。

目次

カリウムは身体を調整する役割を持つ

カリウムはミネラルの一種です。野菜や果物、イモ類などの食品に多く含まれています。

体内でのカリウムは、細胞や体液の状態を調整したり、塩分の摂りすぎを調節したりする役割を果たしています。特に高血圧の予防に効果があるといわれており、健常者の場合は積極的な摂取が推奨されています。

腎臓が正常な方の場合、カリウムの摂りすぎが問題になることはほとんどありません。余分なカリウムは、尿から排出されるからです。

高カリウム血症はなぜ起こる?どんな症状?

一方で、腎不全になるとカリウムは尿から排出されづらくなり、体内に溜まってしまいやすくなります。カリウムがうまく排出されず、血中のカリウムの濃度が高くなりすぎた場合を高カリウム血症といいます。

具体的には、血中のカリウム濃度が5.0mEq/Lを超えたときに高カリウム血症と診断されます(mEqは「ミリイクイバレント」といい、1リットルの中にどれだけの溶質が含まれているかを表す単位です)。

高カリウム血症では、下記のような症状が起こります。

通常、血液中のカリウム濃度が6.5 mEq/L以上になるまでは目立った自覚症状はみられず、血液検査などで発見されます。

しかし、高カリウム血症は程度によっては死に至る不整脈を引き起こすこともあります。

高カリウム血症の治療

高カリウム血症と診断された場合、まずは致死的な状況かどうかを判断します。

心電図をとって高度の異常がみられたら、直ちに治療を開始します(高カリウム血症では、致死性不整脈を防ぐことが何より大切です)。

カルシウム製剤の静注や、インスリンの静注などを行うと、数分から15分程度で効果が現れます。また、血液透析を行うこともあります。

軽度の高カリウム血症の場合は、カリウムの摂取量を制限したり、カリウムを吸着する薬を服用したりします。

カリウム吸着剤は副作用として便秘が生じることがあるため、症状がつらい場合は医師や薬剤師に相談してください。

高カリウム血症の予防のためのポイント4つ!

カリウム

ここからは、腎不全の患者さんの食生活において、特にカリウムの摂取に関して注意していただきたいことをまとめていきます。

※ここで紹介するポイントは、あくまで一般的なものです。個々の患者さんによって症状や食事療法の程度も異なります。

1.特にカリウムを多く含む食べ物に要注意

カリウムはほとんどすべての食材に含まれていますが、中でも多く含むのは下記のような食べ物です。

  • 生の野菜(きゅうり、キャベツ、大根、トマトなど)
  • 果物(いちご、みかん、かき、バナナ、スイカなど)
  • ドライフルーツ(干し柿、レーズンなど)
  • ナッツ類(アーモンド、ピーナッツなど)

このほか、肉や野菜を食べすぎた場合もカリウムの摂取量が多くなりすぎてしまうことがあります。くれぐれも、食べ過ぎには注意しましょう。

2.熱を加えただけでは、カリウムは壊れない

カリウムは、加熱しても壊れることのない元素です。つまり、野菜を蒸したり、電子レンジで温めたりしただけでは減ることがありません。

3.カリウムは水に溶け出す!

加熱しても壊れないカリウムですが、水に溶けやすいという性質を持っています。つまり、生で食べたい野菜や果物は一度水にさらしたり、加熱する場合はお湯で一度下茹でをしたりするとカリウムが抜けやすいのです(この水や茹で汁は飲まずに捨ててください)。

このとき、切り口をなるべく大きくすると、よりカリウムが流れ出やすくなります。

加えて、果物を食べるときはできるだけ缶詰を利用するとカリウムの摂取量を減らすことができます。ただし、シロップにはたくさんのカリウムが溶け出しているので、シロップを飲むのはやめましょう。

4.「スイカは腎臓に良い」はウソ!

巷には食べ物と健康に関する情報が溢れていますが、よく耳にするものの一つに「スイカは腎臓に良い」というものがあります。しかし、腎不全の方にとっては、これは誤りです。

水分を豊富に含んでおり、腎臓に良いように思えるスイカですが、実はカリウムもたくさん含まれています。そのため、腎臓病の患者さんがスイカを食べすぎると高カリウム血症を招いてしまうことがあるのです。

良かれと思って食べたものが体調不良を招かないよう、しっかりと頭に入れておいてくださいね。

最後に

腎不全を起こすと、食事や生活などに様々な制限が加わることになります。カリウムの摂取制限もその一つで、高カリウム血症を引き起こした場合、不整脈などの症状を生じることになります。

命に関わることもあるため、本記事の内容を頭に留めておいていただければと思います。