はじめに

普段は便秘がち。急にお腹が痛くなり、下痢をして血が出た!虚血性腸炎かもしれません。本記事では、虚血性腸炎の症状や診断、治療のプロセスを解説します。

目次

虚血性腸炎とは何か

虚血というのは血が行かないということです。虚血という言葉がつく疾患には虚血性心疾患などがあります。虚血性心疾患は非常に重篤な疾患ですが、虚血性腸炎は症状は派手ですがほとんどの場合重篤にならない疾患です。血が行かないのに血が出るというのはなんだかおかしい感じがするでしょうか。腸に行っている血管が詰まってしまった場合にその部分の腸粘膜が壊死してしまい、脱落するために血が出てしまうというものです。

これだけ聞くと非常に重篤に感じますが、虚血性腸炎の場合には腸へのメインとなる血管が詰まったわけではなく、ほかの重要な血管から腸全体には栄養が送られる疾患なので大きな問題にはならないということです。中には重篤な場合もあり、以下のように分類されます。

分類

  • 一過性型:多くの場合がこれで、入院は必要なことが多いですが繰り返すことも少なく比較的短期間で治ります。
  • 狭窄型:腸管がせまくなってしまうもので、狭窄が強い場合には手術が必要になります。
  • 壊疽型:比較的太い血管が詰まることにより腸管全体が壊死してしまいます。緊急での手術が必要になることもあり重篤な病態です。

リスクの高い人

最近では、虚血性腸炎は増えていると考えられています。その原因の主なものは高齢化にあると考えられています。リスクの高い人は以下のようになっています。

  • 女性
  • 高齢 (ただし、若年発症の方もまれではありません)
  • 便秘
  • 動脈硬化がある人

症状

みられる症状

あまりみられない症状

  • 発熱
  • 嘔吐

受診した場合の診断プロセス

診察室-写真

最も重要なのは、重篤な疾患やほかの疾患ではないかを確認することです。医師はその観点で診察を行っていきます。

問診

  • いつから症状はでたのか
  • これまでにも同じようなことはあったか
  • 変わったものは食べていないか
  • 周囲に同じような症状の人はいるか(食中毒との鑑別)
  • 普段便秘するか
  • 今の痛みはどうか
  • 響く感じは無いか
  • 体重の変化はないか
  • 熱はないか
  • 最近の排便状況はどうか

血液検査

  • 貧血の有無
  • 炎症の有無(主には他の疾患との鑑別を目的としています)

腹部造影CT

下部消化管内視鏡:早期に行うこともありますが、症状が取れてから行うこともあります。最終的には他の疾患との鑑別を目的として必ず行うべき検査と言えます。

治療

禁食(飲食を控える)、補液(足りない水分を点滴静注で補う)が基本です。感染の疑いや感染のおそれがあれば抗生剤を投与されることもあるでしょう。

食事がとれないのと、再出血やほかの疾患の可能性もあるため、ほとんどの場合は入院で加療されることになります。

多くは一過性型で1週間から2週間ほどの入院でよくなりますが、中には腸の中が狭くなる狭窄型や腸管の壊死が進む壊疽型の方もいます。この鑑別を行うことが非常に重要です。

狭窄型や壊疽型では手術が必要になることもあります。

予防方法

多くの場合便秘により腹圧が上がり、腸へ行く小さな血管が詰まることにより症状が出ることが多いです。このため、普段の予防としては便秘にならないようにすることが挙げられます。また、動脈硬化も一因として考えられていることから糖尿病高血圧脂質異常症などの予防、治療に努めることも重要です。

さいごに

虚血性腸炎は命にかかわることはまれで、中には繰り返す方もいますが、基本的には一過性のもので経過は良好であると考えられています。しかし、壊疽型のように症状がひどくなり手術が必要となる方、実はほかの疾患特に大腸がんを患っている方などを見逃してはならないので、下血がみられたら自己判断せず必ず消化器を専門としている科を受診しましょう。入院となることもあるので病院の方がよいでしょう。また、症状がよくなった後には是非大腸の検査も受けるようにしてください。