トイレで排泄した便を見たとき、一本につながっているのではなく、コロコロとした便だったことはありませんか?このような便は、その見た目から「兎糞(とふん)便」とも呼ばれます。原因には便秘や大腸の疾患が挙げられます。今回はコロコロとした兎糞便が見られたときに考えられる原因について、消化、排泄のメカニズムから紹介していきます。

目次

消化、排泄のメカニズム

胃、十二指腸では、運ばれた食物を消化液で徐々に分解していきます。小腸では分解の他、栄養素を中心に吸収していきます。さらに大腸では水分やミネラルを吸収するとともに、便を形成していきます。この便は、消化されずに残った食物繊維腸内細菌などが固まったものです。

健康な人の便はバナナあるいはソーセージのように、太くて長い一本の便として排泄されます。黄褐色で適度に軟らかい特徴があります。

しかし、大腸で水分を過剰に吸収してしまうと、便は硬くなってしまいます。また分断され、兎の糞のようにコロコロとした便が排泄されます。逆に水分吸収量が足りないと、ペースト状、あるいは泥水様の下痢になります。

兎糞便の原因

便秘に悩まされる女性

コロコロとした便が出る原因には、便秘や大腸の疾患が考えられます。

便秘(機能性便秘)

兎糞便が見られて病院を受診される患者さんのうち、原因の大半は機能性便秘によるものです。「機能性」とは小腸や大腸といった腸管そのものに異常は認められないものの、腸管の機能が障害されている状態を指します。代表的な疾患として過敏性腸症候群(IBS)が知られています。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群は、はっきりとした原因は分かりません。ただ自律神経がうまく調節できない(失調)ことにより、下痢や便秘、腹痛などの消化器症状が現れる疾患です。不安感や精神的なストレスが強いと自律神経は乱れやすく、胃や腸の運動障害を引き起こします。そうして、腹痛を伴う便秘または下痢、あるいはこの両方が症状として出る場合があります。

発症しやすい要因には、神経質内向的精神的に不安定などが挙げられます。小児から高齢者まで幅広く見られます。

その他

一時的にストレスなどで自律神経の失調がみられる場合も、機能性便秘を招きます。これは過敏性腸症候群とは診断されません。

大腸の疾患

腸管自体になんらかの病変(病気による変化)が生じている状態です。大腸がん手術後の腸管の癒着隣接する臓器からの圧迫などが当てはまります。

中高年者において兎糞便がみられた場合に、最も疑われるのは大腸がんです。大腸の管腔(かんくう、消化管の内側に当たる空間)内にがんの隆起があると、便の通り道が狭くなって小さい便が途切れながら排泄されます。同様に癒着や圧迫が起きた場合も、便の通り道が狭くなって兎糞便が見られます。

大腸がんでは兎糞便の他、血便や腹痛、腹部の膨満感、下痢などがみられることがあります。ただ初めのうちは特に症状がみられないケースが多いです。

治療

大腸がんのような腸管に原因がはっきりしている場合は、原因疾患の治療が必要です。まずは医療機関に受診しましょう。一方で機能性便秘のように直接腸管の異常が見られない場合には、生活習慣の見直しによって改善が期待できます。

腸管の機能は自律神経の影響を大いに受けます。神経の乱れを誘発しないために、ストレス過労は避けて心身ともに緊張を解くことは重要です。適度な運動習慣は自律神経を刺激し、腸管の動きを整える働きがあります。

また、便の大きさや硬さは食事内容と密接な関係にあります。食事では十分な量、便の材料となる食物繊維不足していないか、水分は足りているかという点を意識しましょう。

そして排便習慣も重要な要素です。排便を我慢すると、便意が鈍くなって便が溜まっても便意を感じなくなります。その結果、腸管内に留まった便は過剰に水分を吸収されて硬くなり、ますます便秘につながってしまいます。毎日朝食後、時間的余裕を持ってトイレにいき、排泄の習慣を意識しましょう。

生活習慣を見直しても改善しない場合は、下剤消化管運動調整剤漢方薬などを用いることもあります。個々の症状によって組み合わせの調整が必要なので、専門家の指導を受けと良いでしょう。

まとめ

兎の糞のようなコロコロした便が出る場合、ストレスや不安感など精神的な影響が原因となっていることが多いです。ストレスを溜め込まないよう運動などでリフレッシュを図りましょう。またまれに大腸がんのような病気が原因の場合があります。心配のある方はまず医療機関にて検査を行い、原因を明らかにしてみましょう。