人間は年齢を重ねていくと、見た目が老けていくだけではなく、認知機能や血管・臓器などの状態は衰えていきます。そうすると様々な疾患を発症させるリスクが上がります。生活習慣病として知られる高血圧も、加齢による体の変化によってかかりやすくなる場合があります。今回は高齢者の高血圧について、紹介します。

目次

高齢者の血圧が高くなる理由

高齢者は姿勢や歩行といった衰えを外側から確認することはできますが、体の内側の変化はなかなか気づきにくいものです。血管の老化もその内の一つで、高齢者の高血圧はこの血管の老化が関わっています。

年をとると、血管は若いころと違って弾力性や柔軟性を失っています。むしろ内側の厚みが増したり(肥厚)、硬くなったりします(石灰化)。血管が硬く厚くなると血の流れは悪くなっていき、下の血圧(拡張期血圧)と比べて上の血圧(収縮期血圧)は高くなりやすくなります。そうして収縮期血圧と拡張期血圧の差が広がっていきます。

高血圧を放置してしまうと動脈硬化を招きやすくなります。また動脈硬化が進行し、血液がスムーズに流れなくなると、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。血栓が脳で詰まれば脳梗塞脳出血、心臓では狭心症心筋梗塞、腎臓では腎不全といった疾患を発症するリスクとなります。

高齢者の高血圧の特徴は?

変動が激しいグラフ

高齢者の高血圧には特徴があり、まず高齢者の血圧は変化しやすいです。病院で検査してもらうときに数値が上がったり(白衣高血圧)、病院では正常でも自宅などで血圧の上昇がみられたりします(仮面高血圧)。そのため1カ所だけではなく、複数の場所、時間帯で測定して数値を把握しなければなりません。

また、脳を流れる血液の量は若いころと比べて少なくなっているため、高血圧とともに低血圧のリスクも抱えている点です。立ち上がったときに足元に血液が集まって脳に十分流れずに血圧の数値が低くなる起立性低血圧食事を食べた後に下腹部に血液が集まって同様に血圧が下がる食後低血圧には注意が必要です。

高血圧の治療方法と注意したい点は?

以前は高齢者の高血圧症には薬物治療は不要という考えがありました。ただ現在は生活習慣の見直しとともに薬物治療も考慮しながら血圧を管理し、数値をコントロールした方が良いとされています。

生活習慣の改善

生活習慣の見直しは有効です。ただ塩分は脱水症状を起こしやすい高齢者にとって重要なので、控えすぎるのはよくありません。また塩分は食事に旨味をもたらすので、減らすと食欲が湧かなくなって栄養補給に支障をきたすことがあります。

運動も重要ですが、激しい運動は怪我(骨折など)や関節痛のリスクがあるので、無理のない範囲で行いましょう。

薬物治療

降圧薬を使って改善を図ります。

高齢者の場合、血圧を下げ過ぎるとかえって低血圧を招き、ふらつきや失神を引き起こして転倒してしまう場合があります。また元々抱えている疾患があった場合にも飲み合わせに注意が必要なので、医師の指示を受けながら下げるスピードに注意して服用していきましょう。

まとめ

高齢者の高血圧は血管の衰えなど、年齢の影響を受けています。また血圧の数値が変化しやすかったり、低血圧にも注意したりと特徴があります。「高齢だから」と高血圧を放置してしまうと、動脈硬化を起こして心臓や脳の疾患を発症する危険が高まります。高血圧の先にある様々な疾患を予防するためにも、目標数値を定めて健康管理を行い、自分らしい生活を1日でも長く送れるようにしましょう。また何か体に変化があった場合には、我慢せず医療機関を受診してください。