ある日突然、爪が変色していることに気付いたという経験はありますか?爪の色の変化は、意外と放っておいてしまいがちです。ネイルアートなどを施していると、気付かないこともあるかもしれません。

実は、爪は健康のバロメーターとしての役割を持っています。爪の色がいつもと違うと感じた場合、もしかしたら病気が隠れているかもしれません。ここでは爪の変色について、原因と対処法を説明していきます。

目次

爪の成分と構造

指を保護している爪は主にケラチンというタンパク質の一種でできています。

私達が一般的に「爪」と呼ぶ硬い部分は、医学的には爪甲(そうこう)といいます。爪甲をかこむ皮膚を爪郭(そうかく)、爪の根本の爪を作る部分は爪母(そうぼ)、爪甲を下で支える部分を爪床(そうしょう)と呼びます。

爪は毎日、約0.1mmずつ成長していきます。爪は爪母から生えるため、この爪母が傷ついてしまうと、爪が生えなくなったり、変形してしまう場合があります。

爪は身体の末端にあるため、身体が栄養不足であったり、血流が悪かったりしたときに影響を受けやすい場所です。爪の変色が見られた場合、何らかの病気が原因となっていることも考えられます。

爪の色でわかる病気

爪の色

本来、爪は薄いピンク色をしているのが正常な状態です。これは、毛細血管が透けて見えているためです。しかし、何らかの刺激を受けたり病気にかかったりすると、ピンク色ではなくなることがあります。変色した色である程度原因を絞れることがあるので、以下の表を参照してください。

※なお、この表で挙げる病名はあくまで一例です。その他の病気が隠れていることも考えられます。

考えられる原因
内出血
メラノーマ(悪性黒色腫)
※下で詳しく解説します。
アジソン病
副腎の病気により、副腎皮質ホルモンが慢性的に少なくなる病気です。
貧血
爪白癬(みずむし)
糖尿病
肝硬変
淡い色 むくみ(浮腫)
黄色 爪の栄養障害
黄色爪(おうしょくそう)症候群
爪の変色のほか、身体のむくみ、胸水(肺に水が溜まる)がみられます。
緑色 緑膿菌

 この他、爪の色は医薬品の副作用でも変わることがあります。

中でも特に注意が必要なのは、爪が黒くなった状態です。爪に何か大きな物を落としたり、ドアで挟んだりしたことがあれば、内出血を起こしていると考えられます。しかし何もしていないのに黒い変色がみられる場合、注意すべき疾患が原因となっている可能性があります。

メラノーマ(悪性黒色腫)

爪が黒くなった場合、メラノーマ(悪性黒色腫)という皮膚がんの可能性があります。メラニンという色素を作り出す、メラノサイトという色素細胞が腫瘍化したものです。なかでも爪にできるものは、末端黒子型といいます。黒くみえることが多いですが、茶褐色にみえることもあります。

50〜60歳以降に好発し、放っておくと、爪が割れたり、爪だけでなく周りに黒いシミが染み出してきたり、潰瘍になったりする場合があります。

メラノーマは、悪性度が非常に高く、死亡率の高いがんといわれます。しかし皮膚表面から見えるがんであるため、普段から爪を観察していれば早くに発見・治療開始することが可能です。

爪が黒ずんでいると感じたら、自己判断せずに皮膚科での診断を受けることをおすすめします。

メラノーマと通常のホクロの違いなど、さらに詳しく知りたい方は「このほくろは大丈夫?悪性黒色腫(メラノーマ)にまつわる話、ウソ・本当」をご参照ください。

爪が変色した時の対処法

検査が必要

水虫、緑膿菌などによる感染症、メラノーマを疑った場合は皮膚科を受診します。

爪が黒ずんでいたとしても、必ずしもメラノーマであるとは限りません。悪性ではない色素沈着や内出血の可能性も十分にあります。

そのため、まずはダーモスコープという拡大鏡を用いて診察を行います。メラノーマは抗がん剤や放射線治療が効きにくいため、手術での治療が基本となります。

爪が白くなる爪白癬は、軽度であれば塗り薬での治療を行います。しかし爪が黄色くなったり分厚くなったりした場合、飲み薬での治療を行うことが多いです。自己判断で市販薬を使わず、皮膚科で治療を受けると良いでしょう。

爪が緑色にかわる緑膿菌感染症の場合も、皮膚科を受診します。これはグリーンネイルとも呼ばれます。緑膿菌はどこにでもいる常在菌の一種ですが、ジェルネイルなどが剥がれかけた時にその隙間から水が入り、緑膿菌が繁殖しやすくなることがあります。

ほとんどの場合は外用薬などを使わずとも治ります。グリーンネイルがみられる間はネイルやマニキュアの使用は控え、患部を乾燥させて回復に務めるようにしてください。

爪の色に変化がみられても、皮膚科で対応する病気ではない場合があります。上記以外の病気を疑った場合は、内科などで全身の病気を調べることをおすすめします。

まとめ

いつも見ている自分の爪ですから、本来ならば異変に気付くのは比較的早いはずです。そのうち治るだろうと放って置くのではなく、気づき次第、皮膚科や内科で相談することをおすすめします。

また、爪白癬やグリーンネイルは爪を清潔にしていないために起こります。湿気で蒸れることがないようにしましょう。特に、ジェルネイルなどをしている方は要注意です。