顔がむくんでなかなか戻らない、なんだか顔が腫れぼったい。そんなことはありませんか?顔がむくんだり腫れ上がったりした状態が続く場合、何らかの病気が潜んでいる可能性があります。すぐに治療が必要な病気の場合もあるので、しっかり診断してもらうことが重要です。本記事では、顔のむくみや腫れが症状としてみられる病気のうち代表的なものを解説します。
「むくみ」「腫れ」のメカニズムって?
顔が腫れぼったく感じた場合、「むくんでいる」と感じるか「腫れている」と感じるかは人それぞれでしょう。似たような症状だと感じる人もいると思います。しかしこの2つの症状は、メカニズムとしては大きく異なります。
「むくみ」は医学的には浮腫(ふしゅ)と呼ばれ、皮膚の下に水分がたまった状態をいいます。血液中の水分が何らかの原因によって血管の外側に出て行ってしまうことで、皮膚の下に水分がたまってしまいます。水分や塩分のとりすぎ、薬の副作用、腎臓や甲状腺の病気など、様々な原因が考えられます。
一方、「腫れ」は医学的には腫脹(しゅちょう)といい、炎症などが原因で起こる症状の一つです。感染などを起こすと、身体の一部分に温かい血液が集まります。すると、血液が集まった箇所が異常にふくれてしまいます。これが腫れです。
ここからは、顔がむくんだ場合・腫れた場合それぞれに分け、原因疾患として考えうるものを解説していきます(なお、ここに挙げた以外の病気が原因となる場合もあります)。
顔がむくんだときに考えられる病気

顔に水分がたまることで起こる「むくみ」の症状がみられた場合、考えられるのは下記のような病気です。
心疾患
狭心症や心筋梗塞などによって心臓が悪くなる(心不全)と、様々な症状が出ます。尿が減る・体重が増える・咳や痰が出るといった症状にくわえ、よくみられる症状の一つが顔や手足のむくみです。
心臓の働きが悪くなると、体中の血液の巡りが悪くなります。そのため、水分が身体のあちこちに溜まってしまい、むくみが生じるのです。
肝疾患
肝硬変、門脈圧亢進症といった肝臓の病気でもむくみがみられることがあります。
肝臓を患うと、血液中のアルブミンというたんぱく質の量が少なくなります。このアルブミンは、血液の浸透圧(血液中に水を留めておこうとする力)を調整する役割を持っています。つまり、アルブミンが減少することで水分が細胞と細胞の間にたまってしまい、むくみが起こるというわけです。
アルコールの飲み過ぎのほか、ウイルスなども肝臓病の原因となるため注意が必要です。
薬剤によるもの
稀ではありますが、薬の副作用でもむくみが起こることがあります。下記のような薬でみられます。
- ACE阻害薬
- 非ステロイド性抗炎症薬
- ホルモン薬
- 降圧剤
- 甘草製剤
- Na含有薬
など
内分泌疾患
ホルモンを分泌する内分泌系の病気でむくみがみられるのが、クッシング症候群という病気です。副腎はコルチゾールと呼ばれる血圧を調整するホルモンを分泌します。そのコルチゾールが過剰に分泌されてしまって起こるのがクッシング症候群です。顔が満月のようにむくむ満月様顔貌(まんげつようがんぼう)や、手足は痩せているのにお腹や顔が太ってしまう中心性肥満、高血圧などの症状がみられます。
腎疾患
腎臓の異常で大量のタンパク質が尿から排出されてしまうネフローゼ症候群でもむくみが生じることがあります。低蛋白血症を引き起こし、むくみ以外にも尿の異常などの症状が生じます。
この他、バセドウ病や橋本病といった甲状腺疾患や、上大動脈が閉塞する上大静脈症候群でも顔のむくみが生じることがあります。
顔が腫れたときに考えられる病気
炎症などによって顔が腫れ上がったときには、下記のような病気が考えられます。痛みの有無によっても判断が変わってきます。
耳下腺やリンパ節が腫れ、痛みがみられる場合
リンパ節炎
感染症などによって、首の付け根から耳にかけてにあるリンパ節の炎症が引き起こされると、痛みや腫れ、発熱といった症状が現れます。抗菌薬や消炎鎮痛剤で治療を行い、多くの場合、1~2週間程度で改善します。
外傷
首などに怪我をし、その箇所が感染を起こした場合にもリンパ節の腫れがみられることがあります。
耳下腺炎/流行性耳下腺炎
耳下腺炎は、耳の下にあって唾液を分泌する耳下腺(じかせん)が腫れる病気です。特に子供の場合、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)が多くみられます。
耳下腺の腫れや高熱、唾を飲み込む時に生じる痛みなどが主な症状で、通常は1〜2週間で回復します。しかし、大人が初めて発症した場合には重症になることもあります。
リンパ節が腫れ、痛みがみられない場合
首の辺りにあるリンパ節が腫れているにも関わらず、腫れ以外に目立った症状がみられない場合、腫瘍が原因の可能性があります。がんの転移や悪性リンパ腫のこともあるので念のため、早めにかかりつけ医に相談することをおすすめします。
頬が腫れた場合
虫歯や歯周病
虫歯や歯肉炎・歯周病でも、頬が腫れ上がることがあります。何らかの細菌に感染し、膿がたまってしまった状態(膿瘍:のうよう)が考えられます。痛みを伴う腫れの場合は応急処置的に水で冷やすと楽になりますが、氷や保冷剤は回復を遅らせてしまうので使わないでください。
顎関節症
口を大きく開けると痛んだり音がしたりする顎関節症では、顎関節が炎症を起こすと頬が腫れ上がる場合があります。
基本的には薬やストレッチ、リハビリによる治療を行いますが、症状があまりにひどい場合は手術を行う場合もあります。
上顎洞がん
鼻の奥にある副鼻腔の中の、上顎洞と呼ばれる部分に生じるがんです。がんが進行することで症状が現れますが、日本人では非常に稀な病気です。
進行する方向によって症状が異なります。顔の腫れ以外には鼻が詰まったり、鼻血が出たりするなど鼻に関する症状、眼球が飛び出たり、目が見えにくくなる眼の症状、歯痛や歯茎の腫れといった歯の症状などです。
その他、顔が腫れ上がる病気
先端巨大症(アクロメガリー)
成長ホルモンの分泌異常により起こる病気です。眉間や頬が飛び出たり、鼻や唇、耳たぶが分厚く大きくなったりします。また、手足が異常に大きくなるのも特徴です。
まとめ
顔が腫れぼったい、と感じた場合、医学的には「浮腫」「腫脹」といった症状を疑います。ここではこの2種類の症状から考えうる病気をいくつか紹介しましたが、ここで挙げた以外の原因が潜んでいる可能性も考えられます。
一過性の炎症による場合もありますが、きちんと治療を行わないと治らない病気の場合も十分に考えられます。早めに医療機関を受診することをお勧めします。