早期には症状が出にくい腎がん(腎細胞がん)は、健康診断などで偶然発見されることが多いです。定期的に健康診断を受けることが早期発見、早期治療につながります。今回は腎がんが疑われたときに行う検査と治療法について紹介します。腎がんの詳細については「腎がんを徹底解説!発症のリスクを高める4つの要因・初期症状はあるの?」をご覧ください。

目次

腎がんの70%が「偶発がん」

健康診断による尿検査血尿(けつにょう、尿に血液が混ざること)が指摘された場合や、人間ドックの超音波検査で腎がんが疑わしいと指摘されると、専門の科で精密検査するよう促されます。健康診断以外にも他の病気で通院中、たまたま撮影したCT検査で腎がんが疑われ、精密検査を勧められるケースもあります。

腎がんの70%以上は、症状がないまま人間ドックや他の検査の際にたまたま発見される偶発がんです(四国がんセンターより)。

早期では症状が表れにくい腎がんですが、もしも血尿・腹部のしこりや痛みといった自覚症状を感じたら、がんが進行している恐れがあります。放置せず速やかに受診することが大切です。速やかに泌尿器科での診察を受けましょう。

腎がんの疑いがある場合に行われる検査

CTと男性

様々な検査があります。ここでは主に行われる検査を紹介します。

腹部超音波(エコー)

超音波(エコー)は、放射線被曝や痛みをともなわず、ベッドサイドで行うことができる簡便な検査です。超音波は空気より水分で伝わりやすいという特徴を利用して魚群探知機と同じ原理で腎臓の形態を調べます。腎のう胞(腎にしばしば見られる、「ほぼ水でできた袋」のような腫瘤))や腎血管筋脂肪腫(血管・筋・脂肪が様々な割合で含まれる、女性に多く見られる腫瘤)といった良性腫瘍との鑑別に役立ちます。

近年は健康診断、ドックなどで本検査が広く行われるようになったため、エコーをきっかけとして腎の偶発がんが発見されるケースが多くなっています。

造影CT

造影剤を使用したCT(コンピュータ断層画像検査、いわゆる「体を輪切りにした」画像が得られます」)です。造影剤とは、画像検査をよりわかりやすくするために用いられる薬剤のことです。腎がんの場合、造影剤投与後に撮影時間をずらした数回のCT画像を得ることにより(ダイナミックCTと呼ばれます)非常に特徴的な腫瘍像がみられるため、かなり高い確率で術前診断の決め手となります。

腎がんの治療は外科手術が基本

腎がんの治療は、転移がなければ手術療法が基本です。これは、腎がんが放射線療法に適しておらず、薬物療法では根治が難しいためです。

手術療法

手術療法の場合、腎臓を周囲の脂肪組織とともに全て取る腎摘除術と、腫瘍のみを切除して正常な腎を温存する腎部分切除術の2つがあります

腎臓は2つあるため、一方の腎臓を取っても、もう一方の腎臓で補うことができるため日常生活に支障をきたすことはまれです。

しかしながら近年、腎摘除術によって腎機能が低下したために5年、10年後以降の晩期合併症として心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患が増加する、という報告がされております。このデータは主に米国、一部欧州からのもので血管年齢が若いと言われる日本人に同じように当てはまるかどうかは今後検証が必要です。

しかし、特に40~50代の若年者では、腫瘍の完全切除が可能であればできるだけ腎部分切除を行い可能な限り腎機能を温存することが慢性腎臓病の発症抑制につながり、ひいては人工透析を回避しやすくなると考えられます。

手術方法として腎摘除術・腎部分切除術ともに開腹、腹腔鏡、小切開、ロボット(ロボットは腎部分切除のみ)によるアプローチがあり、それぞれに施設の特徴や術式がもつメリット・デメリットがあります。主治医とよく相談し、腎摘除術・腎部分切除のどちらを、開腹や腹腔鏡など、どのようなアプローチを受けるか十分な話を聞いた後に決めるとよいでしょう。

薬物療法

手術療法による切除が難しい場合や転移再発したケースでは、薬物療法が行われます。薬物療法は多くの場合、根治が目的ではなく、がんを小さくするかこれ以上大きくならないようにするために行います。腫瘍が大きく、手術が難しいと思われたケースでも、薬物療法で小さくなれば手術が可能になることがあります。

薬物療法には、サイトカイン療法分子標的治療免疫チェックポイント阻害薬の3種類があります。

サイトカイン療法とは、インターフェロンなどの免疫を調節する薬剤を用いた治療法で、リンパ球などの免疫細胞を活性化し、そのリンパ球ががん細胞を破壊するという効果を期待するものです。10年ほど前までは一次治療として用いられておりましたが、現在はその地位を分子標的治療薬にゆずっており、この治療の役目は限定的と言えます。

1015%の患者さんに有効とされる一方で、発熱関節痛だるさ食欲低下はき気嘔吐うつ症状といった副作用もあります(ノバルティスファーマ株式会社より)。

分子標的治療とは、がん細胞の増殖や進行に関与する分子をターゲットにした薬剤です。

サイトカイン療法よりも治療効果が優れた療法として現在第一選択薬として用いられ、腎がんにおいては、現在6種類の分子標的治療薬が保険適用となっています。どの薬を用いるかは様々なデータがあり一定していません。施設によって異なることが多いので、主治医とよく相談して選択するようにしましょう。

免疫チェックポイント阻害薬とはT細胞と呼ばれる免疫細胞としての作用を担う細胞のはたらきを高めてがんを攻撃する非常に新しい薬剤です。海外の臨床試験で二次治療として行ったグループにおいて、従来の分子標的治療薬よりも良好な成績が得られたために保険承認となりました。

ですので現時点では一度分子標的治療薬を使用した後の残存・再発・進行病変をもつ患者さんが対象となります。副作用もこれまでの薬剤と異なる事象が報告されているので、使用経験が豊富な施設で治療を受けることがすすめられます。

放射線療法

腎がんは放射線療法が効きにくいため、腎臓にあるがんを小さくする目的で放射線療法を行うことはありません。しかし、他の臓器に転移している場合、その転移部位を小さくするために放射線療法を行います。

また、骨転移により骨の痛みが出現している場合など、転位した部位の症状を緩和する目的で放射線療法を行うケースもあります。腎がんの骨転移にはこの放射線療法とともにゾレドロン酸やデノスマブと呼ばれる、骨破壊を抑え、骨新生を促す薬剤を投与すると高い効果が得られることがあります。

まとめ

腎がんは比較的簡単な検査で診断でき、早期発見することができれば治療成績も良いがんです。腎臓はふたつあり、手術でひとつ失っても腎臓の機能に影響することはまれですが、術式はメリット・デメリットをしっかり理解し、医療者や家族とよく話しあって決めることが大切です。

最近では手術ができない進行がんでも、様々な薬剤の登場によって治療の選択肢が増えています。しかし、副作用は少なからずあります。副作用のために治療が継続できない、ということにならないために、自分の受ける治療薬剤の副作用を確認し、ちょっとした体調の変化でも医師に相談するようにしましょう。