お子さんのおしっこの回数や量を把握されていますか? 気にされている方は多くはないかもしれませんが、おしっこが出ない、あるいは出づらいことが何かの病気のサインとなることがあります。ここでは子供のおしっこが出ない・出づらい病気や、急いで受診すべきサインについて解説します。

目次

子供のおしっこ(尿)について

口から摂取された水分は、小腸や大腸で体内に吸収されます。体内の水分は、尿、口腔内や皮膚からの蒸発(蒸散)、便として排泄されます。

尿は腎臓でつくられます。体内で不要となったものとともに、腎臓の血管から尿管へ水分が移動し、尿となります。

子供の尿量の目安は 0.5~1.0ml/kg/時間(1時間に体重1kgあたり0.5~1.0mlの尿がでる。つまり、体重が20kgであれば、1時間に10~20ml) とされています。0.5ml/kg/時間よりも少ない場合には、尿が少ない状態と言えます。

年齢・時期別では、1日に

  • 新生児:50~300ml(尿回数 18~25回)
  • 乳児期:250~500ml(尿回数 15~20回)
  • 幼児期:500~700ml(尿回数 8~12回)
  • 学童期 700~1400ml(尿回数 5~8回)

が目安になります。

実際的には、「普段と比べてどうか」という視点がとても大切です。具体的には、普段と比べてトイレに行く回数が少ない、普段よりオムツを替える回数が少ない、オムツが普段より濡れていないなどが尿量低下に気付くきっかけになります。

尿が出ないのはどうして?!

体内の水分量は、自然に調節されています。

たくさん水分を摂取すれば、尿の量は増えます。水分を摂取することを控えると、尿の量は減ります。

では、尿が出なくなる状態はどういう状態でしょうか?

上述の通り、①血液→②腎臓→③尿、の順番で尿は生成されます。この順番のどこに問題があるかに応じて、尿が出なくなる原因を分類することがよくあります。具体的には、①から②のステップに問題がある場合(=腎前性)、②の腎臓自体に原因がある場合(=腎性)、②から③の過程に異常がある場合(=腎後性)に分けられます。

尿が出なくなる病気は?

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尿が出なくなる病気について、腎前性・腎性・腎後性に分けて説明します。

腎前性

腎前性は腎臓に流れる血液が少なくなることで、腎臓でつくられる尿が少なくなります。血液をもとにして尿は生成されますので、材料である血液が少なくなれば尿が少なくなるのもご理解いただけるかと思います。

この原因としては、脱水・出血・低血圧などがありますが、子供に多い原因は脱水です。子供は大人よりも、体内の水分の割合が多いです。また、大人に比べて子供は体内の水分量が変化しやすいです。これらのことから、子供では胃腸炎による嘔吐・下痢熱中症による汗の増加などによって、脱水になりやすいといえます。

子供の場合、尿が少なくなる原因のほとんどは腎前性によるものです。腎臓そのものに問題があるわけではないため、脱水を引き起こした病気や脱水そのものに迅速に対処することができれば、後遺症もなく回復することが充分期待できます。

腎性

腎性では、尿を生成する工場である腎臓に異常があり、きちんと尿がつくられないことで尿が少なくなります。

大人では高血圧糖尿病、あるいは薬によって腎臓が障害されることもありますが、子供で多いのは急性腎炎症候群ネフローゼ症候群です。

急性腎炎症候群の小児における多くは、溶連菌の感染症をきっかけとして発症します。溶連菌の感染症では、発熱・咽頭痛・発疹などを認めます。溶連菌感染症の2週間後くらいに尿の減少むくみ(浮腫)が出現した場合には溶連菌感染後の腎炎が疑われます。

ネフローゼ症候群の原因は、多くの場合は同定できません。タンパク質は人の身体にとってとても重要なものであるため、腎臓が正常に機能している場合には尿中に排泄されることはありません。
しかしネフローゼ症候群では何らかの原因により腎臓の機能が障害されて、身体に必要不可欠なタンパク質を体内に保持することができなくなり、尿中に出てきてしまいます。タンパク質は体内の水分バランスを正常に保つ働きも担っているため、ネフローゼ症候群では水分バランスが崩れてしまいます。
その結果手足のむくみが出現したり、腎臓に供給される血液バランスも障害され尿も少なくなったりします。

小児において、急性腎炎症候群やネフローゼ症候群は尿が少なくなることをきっかけに発見される以外にも、むくみが強いことや、たまたま学校検尿での異常結果で見つかることも珍しくありません。いずれにせよ、これら腎性のものは精密検査や治療が必須であり、病院への受診が必要です。

腎後性

腎後性は、腎臓でつくられた尿が排泄される経路が障害されることで尿が少なくなったり、出なくなったりします。

大人では、尿管結石や膀胱の腫瘍、前立腺肥大症などが原因となることが多いですが、子供ではそういった原因はまれであり、急性膀胱炎出血性膀胱炎などで見られることがあります。これらは感染症をきっかけに発症するものであり、感染症が改善すれば尿量低下も改善してきます。

病院に行くべき3つのサイン

尿が出なくなる病気のところで述べたように、子供の原因で多いのは脱水・腎炎・ネフローゼ症候群です。

尿が少ないことに加えて、以下の場合には病院を受診するようにしましょう。

  • 嘔吐・下痢が多く、水分を十分に摂取できない
    → 胃腸炎による脱水が疑われます。
  • 炎天下で活動した後に、ぐったりしていたり、頭痛や吐き気があったりする
    → 熱中症による脱水が疑われます。
  • しっかりと水分は摂れている+手足にむくみがある
    → 急性腎炎症候群やネフローゼ症候群が疑われます。

まとめ

子供で尿が出ない(少ない)場合には腎前性が原因のことがほとんどですが、尿が少ないことで急性腎炎症候群やネフローゼ症候群が見つかることもあります。急性腎炎症候群やネフローゼ症候群では適切な治療が必要になるので、尿が少ないと感じた場合には病院を受診して相談しましょう。また、胃腸炎や熱中症での脱水によって尿が少ない場合は、点滴や入院が必要となることもあります。この場合にも早めに医療機関を受診しましょう。