風邪の原因がウイルスによるものだということはご存知でしょうか?せきの風邪、のどの風邪など、症状に違いがあるのは風邪の原因となっているウイルスが違うからです。

ここでは風邪の原因となる代表的なウイルスの特徴、流行期、症状、予防方法について解説していきます。

目次

風邪の原因となるウイルスは?

風邪の原因となるウイルスは200種類以上あるといわれています(シオノギ製薬より)。なかでも代表的なウイルスは下記のようなものがあります。

  • ライノウイルス:鼻風邪
  • コロナウイルス:鼻やのどの風邪
  • パラインフルエンザウイルス:せきの風邪
  • RSウイルス:せきの風邪
  • インフルエンザウイルス:インフルエンザ
  • アデノウイルス:咽頭結膜熱、プール熱

風邪の原因となるウイルスは下記の経路で体に侵入します。

  • 飛沫(ひまつ)感染:くしゃみやせきによって空気中に排出されたウイルスを吸い込む
  • 接触感染:ウイルスのついた手指、物を介する

このような経路を遮断(しゃだん)してウイルスの侵入を予防するには、原則として手洗い・うがい・人混みではマスクをつける、といった対策が有効です。

どんな症状病気を起こす?流行期は?それぞれのウイルスの特徴を知ろう!

洗面台-写真

症状や感染経路、流行する時期などはウイルスによって異なります。それぞれの特徴をみていきましょう。

ライノウイルス

鼻風邪を引き起こすウイルスで、大人がかかる風邪の原因の多くはライノウイルスだといわれています。1年を通して感染する可能性がありますが、特にに多くみられます。

鼻水・鼻づまり・くしゃみといった症状から始まり、のどの痛み、頭痛、せきが出現しますが、熱が出ないことが特徴的です。

ライノウイルスは接触感染で感染しますが、飛沫感染でも感染します。流行期には、外出後の手洗いうがいによってウイルスから身を守るほか、人混みではマスクをつけて予防すると良いでしょう。鼻をかむなどして手指にウイルスが付着して、そこから感染が広がりやすいので、外出後だけではなく鼻をかんだあともこまめに手を洗うと良いでしょう。

他のウイルスとは違い、消毒用アルコールが無効です。しっかり流水で手を洗うことが予防のポイントです。

コロナウイルス

コロナウイルスは風邪の10~15%を占める(横浜市衛生研究所より)といわれ、に多くみられます。

鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せきといった症状が出現し、がでるケースもあります。胃腸炎を起こす場合もあり、乳幼児や免疫力の低下しているケースでは気管支炎肺炎を起こすこともあります。

コロナウイルスは飛沫感染での感染が多いですが、接触感染でも感染します。ライノウイルスと同じように手洗い・うがい・マスク着用が予防のキーポイントとなりますが、コロナウイルスは便にも含まれるため、外出後だけではなくトイレ後や食事前の手洗いも重要です。

なお、MERS(中東呼吸器症候群)はコロナウイルスが原因となる感染症です。MERSは2012年以降、中東地域で広く発生しており、その致死率の高さ・感染力の強さから厚生労働省が注意を呼び掛けています。

パラインフルエンザウイルス

パラインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスと名前が似ていますが、気道に炎症を起こすという共通点があるだけで、全く別のウイルスです。

4つの型があり、型によって流行期が異なりますが、おおむね年間を通してみられます。大人ではかぜ症候群を起こしますが、小児では下気道炎(肺炎気管支炎、細気管支炎)の原因となります。せき、たん、鼻水、のどの痛みといった症状を起こします。

気道からの分泌物に含まれ、感染経路は飛沫感染接触感染です。しかも感染力が持続しやすく、空気中に放たれたウイルスは1時間以上感染力を保ちます(横浜市衛生研究所より)。小児はおもちゃ、遊具などを介してウイルスをもらいやすく、感染者との接触には注意が必要です。

生後数ヶ月間は母親由来の免疫抗体によって守られています。しかしその期間を過ぎた後は、手洗い、人混みでのマスク着用、物品や器具の共用を避けることで予防しましょう。

RSウイルス

RSウイルスは大人ではかぜ症候群を起こしますが、小児、特に新生児低出生体重児では肺炎気管支炎細気管支炎を引き起こし、重篤化するケースもあります。年間を通してみられますが、に多くみられます。

症状はせき、鼻水、たんなどですが、小児では症状がひどくなるとせきこんで嘔吐したり、呼吸困難におちいることがあり、入院が必要なケースもあります。

感染経路は飛沫感染接触感染で、手洗い・うがい・マスク着用が重要となります。また、低出生体重児や心臓疾患をもつ小児では、パリビズマブ(商品名:シナジス)注射を行い、症状の重篤化を予防する処置がとられています。母親由来の免疫抗体による効果はなく、新生児から発症するリスクがあります。流行期である冬は特に、感染者との接触を避けることが重要です。

インフルエンザウイルス

インフルエンザウイルス全身性感染症の原因ウイルスです。主にに流行し、鼻水、せき、高熱、頭痛、筋肉痛、全身のだるさなどの症状を起こします。気管支炎肺炎を引き起こすこともあり、高齢者では死亡原因になるケースもあります。

インフルエンザウイルスは飛沫感染によって広がり、感染力が強いことが特徴です。

感染予防のためにはマスク着用や手洗い・うがいなどのほか、感染者との接触を避けることが重要です。また、流行期の前に予防接種を受けることが有効です。欧米での研究では、65歳未満の健康な人におけるワクチンの効果はおおよそ70~90%と報告されています(吉田製薬より)。

インフルエンザを発症した場合、1週間程度で症状は自然に軽快します。また、発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス剤を開始すれば、発熱期間を1~2日短くできます。持病がある場合は重症化を避けるため早めに受診しましょう。

アデノウイルス

に流行し、風邪症状以外に結膜炎咽頭炎胃腸炎などの原因となるウイルスです。学童に多いプールで感染するプール熱もこのウイルスが原因です。

症状は、熱、のどの痛み、目の充血・かゆみ、下痢、嘔吐などです。

ウイルスは気道分泌物、目やに・涙、便に含まれ、感染経路は接触感染です。手洗いによる予防のほか、タオルや衣類、食器などを介して感染するリスクもあるため共用を避けましょう。

まとめ

流行期を知っていると早めに予防行動がとれ、流行り風邪から身を守ることができます。風邪の多くは治療しなくても免疫力によって治りますが、小児や高齢者では重篤化するケースもあるので注意が必要です。日ごろから家族で手洗い・うがいを心掛け、風邪を予防したいものです。