毎年、冬になると猛威をふるうインフルエンザ。東京都では流行警報基準を超え、学級閉鎖などのニュースもよく耳にします。インフルエンザは冬に流行る感染症ですが、「パラインフルエンザ」は、冬以外でも流行する可能性があります。パラインフルエンザウイルスとは、一体どんなものなのでしょうか。今回は、パラインフルエンザウイルスの特徴について、ご紹介いたします。
寒くなると風邪を引きやすくなるのはなぜ?
冷たい空気を吸い込んだときに、鼻、喉や気管の粘膜の血管が収縮して、繊毛の動きが鈍くなります。繊毛は、身体のフィルターのような役割をしていて、チリ、ホコリ、ウイルスや細菌などが身体へ侵入するのを防ぐ働きをしています。鼻毛や気管の内側に繊毛が並んでいて、動きながら外界からの微生物を外へかきだしているのです。
この繊毛の働きが弱くなると、空気と一緒に吸い込んだウイルスが身体の外に排出されずに侵入するので、感染症を引き起こしやすくなります。
風邪はどうやってうつる?
飛沫感染
風邪の原因は、ほとんどがウイルスと細菌によるものです。風邪をひいている人が咳をしたときに、ウイルスが飛び散って周りの人が吸い込み、鼻やのどに感染していくことによって、風邪が流行します。
接触感染
感染した人がウイルスのついた手でドアノブなどをつかみ、他の人が同じドアノブを触り、その手で鼻や目をこすると、ウイルスに感染します。
ウイルスとは?
ウイルスは生きた細菌に寄生して、細胞内で増える微生物のことです。とても小さく、普通の顕微鏡でも見ることができません。細菌は、ウイルスよりも大きい単細胞の微生物のことをいいます。
風邪を引き起こすウイルスは、鼻、のどや気管の繊毛の細胞に感染できる能力を持っていて、増殖しながら細胞を壊して外へ飛び出し、近くの細胞に感染します。壊された繊毛は、次に空気と一緒に入ってきた細菌を外へ追い出す力が弱くなるので、ウイルスに感染したあとに、細菌感染が起こりやすくなります。
風邪の原因となる病原微生物の種類
風邪のほとんどがウイルス感染が原因とされていて、風邪を起こす病原微生物は、200種類以上あるともいわれています。
インフルエンザの原因は、インフルエンザウイルスによるものです。インフルエンザには流行がありますが、ウイルスの種類によって、流行るものとそうでないものに分けられます。
パラインフルエンザウイルスは、風邪を起こす原因のウイルスの一つです。
ウイルスによるもの
- インフルエンザウイルス(A型、B型、C型):秋、冬に流行する。A型は特によく流行する
- ライノウイルス:鼻風邪タイプのウイルスで一年を通じて感染する。100種類以上の型がある。
- アデノウイルス:夏に流行する。プール熱もこの一つ。41種類の型があり、風邪のほかには、胃腸炎、結膜炎、咽頭炎の原因となる。
- エンテロウイルス:夏に流行する。風邪のほかには、下痢、まれに髄膜炎の原因になることもある。
- RSウイルス:一年を通じて感染が見られる。子供の場合はウイルスが肺の奥に入り込んで呼吸困難を起こすこともあるので、新生児は特に注意が必要。
- パラインフルエンザイルス:一年を通じて主に子供に感染が見られる。
微生物によるもの
- マイコプラズマ:ウイルスや細菌とは種類の違う微生物で、強い咳、肺に炎症の陰が出るのが特徴。風邪の他には肺炎を起こし、若い人が集まる学校などでよく流行する。
- クラミジア:ウイルスや細菌とは種類の違う微生物で、重症の肺炎を引き起こす。
細菌によるもの
パラインフルエンザウイルスとは?
ヒトパラインフルエンザウイルスは1~4型に分類され、主に1~3型がヒトの呼吸器の感染症を引き起こします。型ごとによって流行する時期が異なります。
特に小さい子供に感染することが多く、肺炎、気管支炎や細気管支炎などの下気道炎を起こす原因となります。
一生の間に何回も感染し、普通は、風邪や咽頭炎となります。しかし、高齢者や免疫不全の患者さんの場合、重症の下気道炎を繰り返し発症することもあります。
ヒトパラインフルエンザウイルスの1型(HPIV-1)
隔年で、最近では西暦の奇数年に流行り、子どもの喉頭、気管や気管支の炎症を起こします。
ヒトパラインフルエンザウイルスの2型(HPIV-2)
毎年または隔年で秋に流行を起こします。子どもの喉頭、気管や気管支の炎症を起こしますが、2型よりも1型のウイルスの方が流行を起こします。
ヒトパラインフルエンザウイルスの3型(HPIV-3)
毎年春から初夏にかけて多く見られますが、ウイルス自体は、年間を通して検出されます。肺炎や細気管支炎を起こすことがあります。
パラインフルエンザウイルスに感染すると…?
パラインフルエンザの主な症状は、発熱、咳、声のかすれ、などです。
ヒトパラインフルエンザウイルスは、通常1~7日が潜伏期間と考えられています。感染した人の気道の分泌物の中にウイルスがいます。気管では、たんと一緒に身体の中に侵入したウイルスを外へ吐き出そうとします。強く息を吐き出す動作が咳です。
感染した人が咳をすることによって飛沫を飛ばし、気道の分泌物がついたものに他の人が触った手を通じて、目、口や鼻などの粘膜にウイルスを運び、周りの人を感染させます。
ヒトパラインフルエンザウイルスは、飛沫中では1時間以上感染力を保ち、身体以外のものの表面についた場合は、数時間感染力を保ちます。
まとめ
パラインフルエンザウイルスは、1~4型まで種類があり、1、2、3型は人に感染して、呼吸器の症状を引き起こすことがあります。特に3型は春から初夏にかけて多くみられるので、発熱、咳などの症状を感じたら、他の人への感染を防ぐためにも、早めに医療機関を受診するようにしましょう。