人間ドックの血液検査項目で、CK(クレアチンキナーゼ)という項目がありますが、何を調べている検査値なのかご存知でしょうか?あまり聞き覚えもなく、ピンとこない項目ではないかと思います。

CK検査値に異常がある場合、どういった病気の可能性があるのでしょうか?ここでは、CK検査値について解説していきます。

目次

CK(クレアチンキナーゼ)検査とは?それぞれの数値が意味するもの

CK(クレアチンキナーゼ)は骨格筋、心筋、平滑筋、脳などにある酵素で、筋肉の収縮・弛緩(しかん、ゆるむこと)に必要なエネルギーの供給に関わっています。

CK検査値はこれらの組織が破壊されたときに数値が上がります。骨格筋にあるCK-MM、心筋にあるCK-MB、脳にあるCK-BBという3つの型があります。また、筋肉注射打撲(打撲、体をぶつけて怪我をすること)、肉体労働運動でも数値が上がります。本人はそうでもないと思っていても、ジョギングや階段の昇降で数値が上がっていることもあります。

さらに、筋肉の量と比例するため、CK検査値は男性と女性とでは基準値が異なり、女性では男性に比べて20~30%低い値になります(プラスウェルネスより)。また男女とも高齢になると、値が低くなります。

CK検査値の異常、どんな病気が疑われる?

検査項目 基準値 基準値から外れた場合に
疑われる病気
CK

 

男性:60~250IU/L

女性:50~170IU/L

【高値】

【低値】

出典:神戸市立医療センター中央市民病院を参考にいしゃまち編集部作成

基準値は、検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります。

また、CK検査値の異常を認めてもすぐにその病気だということではありません。特にCK検査値は検査前に行った運動などの影響を受けやすいため、再検査をしてみると基準値に戻っていた、ということも多くあります。高コレステロール血症の治療で服用するスタチン系薬剤の副作用で筋肉痛が起こり、数値があがることもあります。

しかし「きっと運動の影響だろう」などと再検査を受けずそのままにしていると、病気の早期発見の機会を逃す危険性があります。

人間ドックで「要精密検査」と指摘された場合、なるべく早めに医療機関を受診することが大切です。内科、または総合内科を受診してください。

病気が疑われるとき、他にどんな検査が必要?

診察-写真

CK検査値が基準値を外れている場合、運動を控えて再度血液検査を行います。3つのCKの型のうちどれが原因になっているのか分析を行うことで、どの臓器に障害が発生しているのか推測でき、的を絞って検査が行われます。診断には問診も重要です。問診では体調や生活の状況、服用している薬剤など聴きとりが行われます。

CK検査値の異常が指摘された人のなかには、特に自覚症状がないと思っていたけれど、言われてみると筋肉痛や筋力の低下を感じていた人や、自分では運動だと思っていなかった動作が原因になっていたケースもあり、こうした症状の情報は診断の足がかりとなります。

急性心筋梗塞心筋炎ではCK検査値の上昇が診断の決め手になりますが、発症時には急激に症状が出現するため、人間ドックで偶然発見されるということはほとんどありません。ここでは人間ドックでCK検査値の異常を指摘され、見つかることがある病気について解説していきます。

1.多発性筋炎・皮膚筋炎

多発性筋炎・皮膚筋炎は、横紋筋という筋肉に炎症が起きる膠原病原因は不明です。皮膚症状のない多発性筋炎、皮膚症状のある皮膚筋炎に分類されます。男女比は1:3と女性に多く発症します。

症状は筋肉の脱力筋痛ですが、年齢的なものと思って見過ごしてしまいやすい症状です。ほかに関節痛、疲れやすさ、むせこみなどがあります。皮膚症状は紅斑(皮膚正面の赤み)や皮疹(皮膚にできるほっしん)などが生じます。診断には筋電図(筋肉の活動を波形で記録したもの)や筋生検(筋肉の組織をとって顕微鏡で調べること)を行います。

治療は、入院で安静を保ちステロイド剤を服用します。なかには免疫抑制剤を使用するケースもあります。予後は比較的良く、運動能力の回復が期待できますが、治療開始が遅れると予後に影響するため、早期発見・早期治療が大切です。

2.甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが不足する病気で、代謝が低下し、疲れやすさむくみ寒がり便秘などの症状が出現します。しかし症状に気づかないことも多く、人間ドックでCK検査値の上昇を指摘され、偶然見つかるケースがあります。

診断は血液検査甲状腺ホルモン値を調べることで判明します。治療は甲状腺ホルモンの服用を行い、経過をみていきます。

病気ではないと言われたけれど…、日常生活での注意点

CK値が高かったが精密検査を受けたところ病気ではなさそう、というケースはしばしばあります。ほとんどは検査の前に運動をしていたことなどが原因で、その場合は再検査ではCK検査値は基準値に戻っています。次の人間ドックからは、検査前には運動を控えて臨むようにしましょう。また、薬剤が原因でCK検査値が上がっていた場合、かかりつけ医の指示に従い原因薬剤の服用を中止し、定期的な診察を受けるようにしましょう。

一方、思い当たることがあまりなくCK検査値が上がっていた場合や、人間ドックのたびに異常を指摘される、という方も受診するようにしましょう。人間ドックは病気を見つけるためのきっかけですので、異常がみられた場合には必ず受診してください。

まとめ

CK検査値は運動などの影響で数値が上がる可能性があり、異常を指摘される可能性の多い検査項目です。この検査値の異常で、自分では気づきにくい筋疾患や内分泌疾患が偶然見つかることもあります。検査値の異常を指摘された場合には「運動の影響」と決めつけず、再検査を受けるようにすることが大切です。