ストレスや変化の多い妊娠初期。普通ならすぐに治る病気でも、治癒に時間がかかったり重症化したりすることで、時には赤ちゃんに大きな影響を及ぼす場合があります。病気を全て防ぐことは難しいですが、正しい知識を身につけることで避けられるものもあります。ここでは流産、感染症、妊娠悪阻の3つについて、予防の観点から取り上げます。
3つの病気とその予防策
流産の予防策
妊娠21週6日までに自然に赤ちゃんが失われることを流産といいます。流産のうち約85%までが妊娠12週までに起こりますので、とくに妊娠初期には注意が必要です(メルクマニュアルより)。
流産のほとんどは、先天異常や遺伝性疾患など、胎児側の原因によるものが多いと考えられています。その場合、予防することはできません。ただ、母体側の原因によるものとしては、飲酒、喫煙、重大なけが、風疹などの感染症、コカインなどの薬物使用等が挙げられます。ですので、流産のリスクを減らすにはこれらの対策が必要です。
感染症の予防策
風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、トキソプラズマなどに妊娠中に感染すると、流産や早産のリスクが高まったり、お母さんから赤ちゃんに感染して重大な影響が出てしまったりすることがあります。また、妊娠中にインフルエンザにかかると、重症化しやすいことが分かっています。感染症を予防するには、以下のことを実践してみてください。
ワクチン接種による感染症予防
妊娠中でもインフルエンザ不活化ワクチンは有効で安全とされています。
風疹、麻疹、水痘、おたふくかぜは、妊娠前であればワクチンで予防できますが、妊娠中は注射できません。妊婦健診で抗体の値が低い場合は、同居している家族に麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を注射してもらうようにしましょう。
手をよく洗う
日ごろから手をよく洗うようにし、特に食事の前はしっかり洗います。生肉を扱ったり、猫などの動物の糞を処理したりする時は、使い捨て手袋を使うなど、なるべく直接触らないようにしましょう。
よく加熱されたものを食べる
生肉、生ハム、サラミ、加熱していないチーズなどは、トキソプラズマなど感染源となる微生物が含まれている場合があります。生野菜も、よく洗う必要があります。妊娠中はよく加熱されたものを食べるようにしましょう。
人の集まる場所は極力避ける
風疹やインフルエンザは、咳などから飛沫感染します。特にこうした病気が流行しているときは、人の集まる場所は避けるようにし、外出する際はマスクを着用するようにしましょう。
妊娠悪阻の予防策
妊娠初期にごく普通にみられる吐き気や嘔吐といったつわりの症状も、重症化すると妊娠悪阻と呼ばれ、入院による治療が必要になります。妊娠悪阻になるのを防ぐためには、以下のような対策があります。
- 1回の食事の量を減らし、少しずつ何回かに分けて飲食をする
- 食後数時間は、体を曲げたり横になったりしない
- 寝る前の数時間は食事をしない
- 寝るときに枕などを使って頭と肩を持ち上げるようにする
- 便秘の場合は、軽い運動をしたり水分や食物繊維を多くとったりして解消につとめる
その他の生活上の注意点
食生活
妊娠中は暴飲暴食を避け、栄養バランスのとれた食生活を心掛けましょう。
また、赤ちゃんの成長のためには、ある程度の体重増加が必要です。ダイエットをすると、赤ちゃんに供給される栄養素が減ってしまうので、なるべく減量はしないようにしましょう。
薬やサプリメント
薬やハーブ、サプリメントの服用については、医師の指導のもとに行い、安易な服用は避けます。ハーブやアロマ製品には、子宮を収縮しやすくするものもあります。妊娠中に不足しがちな葉酸や鉄分などについても、医師に相談するようにしましょう。
運動
妊娠中であっても、普段と同じような活動やあまり激しくない運動(速足で歩く等)なら続けて差し支えありません。ただ、腹部のけがの恐れのある運動や、激しい身体接触を伴うスポーツは避けるようにしましょう。
それでも病気にかかってしまったら
病気にかかってしまったら、すぐに医師に相談することが大切です。症状が軽いと、仕事や家事など多忙な生活に追われ、「これぐらいなら大丈夫」と見過ごしてしまいがちです。しかし、放っておくと症状が悪化したり、赤ちゃんに取り返しがつかない影響が出てしまったりする場合があります。「迷ったらまず相談」という気持ちで、自分と赤ちゃんの健康を最優先に考えましょう。
まとめ
何かと不安な妊娠初期ですが、日ごろからできる病気の予防策も多くありましたね。とはいえ、あまり神経質になってしまうと、かえってストレスが溜まってしまいます。適切な対策を心掛けながら、ゆったりした気持ちで赤ちゃんの成長を見守っていきましょう。