口内炎ができてしまうと、食べ物を食べにくい、話しにくいなど不便なことがたくさんありますよね。なんと20代女性では70%もの人が口内炎を経験しています(第一三共ヘルスケアより)。

発生箇所別にみると、口内炎は頬の内側、唇、舌、歯肉の順に多くできていることがわかります(同サイトより)。今回は、4番目に多くみられる歯肉の口内炎と、口内炎によく似たできものについて説明していきたいと思います。

目次

歯茎(歯肉)にできやすい口内炎

歯肉とは、歯茎を含む歯の根元の部分をとりまく組織のことです。口内炎にはいくつか種類がありますが、なかでも歯肉にできやすいのがアフタ性口内炎ウイルス性口内炎の2種類です。

アフタ性口内炎

円形または楕円形で、中央部が浅くくぼんだ白っぽい口内炎がアフタ性口内炎です。口内炎の中で最も多くみられるもので、疲れやストレスによる免疫力の低下、睡眠不足、栄養の偏りなどが原因でできてしまうといわれていますが、はっきりした原因は分かっていません。全身疾患が原因でみられたり、女性の場合はホルモンバランスの乱れが原因となったりすることもあります。

ウイルス性口内炎

小さな口内炎が数多くできてしまったときは、ウイルス性口内炎の可能性があります。このタイプの口内炎は、感染により皮膚に水疱ができ、その水疱が破れることで潰瘍になることがあります。潰瘍とは、炎症により皮膚の深い部分が傷づいた状態です。代表的なものは、下記の2種類です。

手足口病

口の中だけでなく、手や足にも潰瘍ができている場合は手足口病の可能性があります。

手足口病は、夏に流行のピークを迎える病気です。近年は、乳幼児だけでなく、大人への感染も認められます。原因のウイルスはコクサッキーウイルA6、A16、エンテロウイルス71(EV71)などで、くしゃみをした際の飛沫によって感染したり(飛沫感染)、ウイルスのついた手が触れることで感染したり(接触感染)します。詳しくは、「夏に多い手足口病ってどんな病気?」の記事をご覧ください。

歯肉や頬の内側に口内炎が多発したときは、手や足にも水ぶくれができていないか確認してみましょう。

ヘルペス性歯肉口内炎

ヘルペスウイルスに初めて感染した乳幼児に最も多い症状です。高熱が出て、数日後より口の中に痛みを伴った水疱ができたり歯肉が腫れて出血したりします。痛みが強く、飲食が困難になることがあるので、脱水症状には注意してください。

口内炎に似ているけれど、違う病気

歯茎

ここからは、口内炎にできものが生じる病気のうち、口内炎以外のものを紹介します。

内歯瘻(フィステル、瘻孔)

歯肉にニキビのようなものができていたら、口内炎ではなく内歯瘻の可能性があります。内歯瘻は歯の周りにできた膿が骨や歯肉の中を通り、歯肉の外に出てくる出口です。歯の周りに膿がたまってしまう原因は、主に根尖性歯周炎、歯周病、歯の破折の3つがあります。

※瘻孔(ろうこう)=炎症などが原因でてきた孔(あな)

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)

歯には神経や血管を含む歯髄という組織があります。根尖性歯周炎は、むし歯が進行して歯髄が死んでしまい、細菌感染が起きたとき、歯根の先に膿がたまってしまっている状態です。むし歯を放置したときだけではなく、一度神経の治療を行い被せ物をしている歯でも二次的に虫歯ができ、内歯瘻ができてしまう可能性があります。

歯周病

歯周病が進行し、歯周ポケット(歯と歯肉との隙間)が深くなってしまうと、歯周ポケット内の深い所で膿がたまってしまいます。その膿が歯肉の中に通り道を作って外に出てくることがあります。

歯の破折

歯の破折の原因は、

  • ボールがあたったり、転倒したりする外傷によるもの
  • 神経の処置を行って、もろくなっている
  • 被せ物の下に金属の土台を入れている
  • ブリッジ治療をした際、土台にした

などが考えられます。

歯が破折してしまうと、割れたところから細菌感染が起きてしまい歯肉に膿がたまり、その膿が歯肉の中を通って内歯瘻を形成する場合があります。

歯肉炎

様々な原因によって歯肉に炎症が起こり、赤く腫れてしまうのが歯肉炎です。様々な種類がありますが、以下に代表的なものを紹介します。

  • プラーク性歯肉炎:歯肉炎の大半は、歯垢がたまることで生じます。しっかりと歯石や歯垢を取り除くことで軽快します。
  • 性ホルモン関連歯肉炎:思春期や妊娠中など、ホルモンのバランスが崩れた際に生じます。
  • 薬剤関連歯肉炎高血圧てんかんなどの治療薬を長期的に服用したときに起こることがあります。原因となる薬の服用をやめたり、ひどい場合には手術によって歯肉を切除したりします。
  • 壊死性潰瘍性歯肉炎:歯肉乳頭部(歯と歯の間の歯肉)に灰色の偽膜でおおわれた潰瘍が形成されます。口の中の不潔や栄養不良、疲れ、HIV感染による免疫力の低下などが原因で生じる、まれな症状です。

まとめ

以上のように、歯茎(歯肉)の口内炎にはアフタ性口内炎、ウイルス性口内炎などがあります。歯肉)に口内炎ができてしまったら、まずは鏡でどのような形状をしているか確認してみてください。歯肉に潰瘍の状態の口内炎がたくさんあった場合、ウイルス性口内炎の可能性があります。

歯肉の様子を観察した際、ニキビのように見えたり、灰色の膜で覆われていたりした場合は口内炎ではなく別の病気が原因かもしれないので歯科医院で相談してください。