大腸で作られた便を溜める直腸は、炎症が起こると排便時にさまざまな症状がみられます。また直腸の炎症が起きる背景には、さまざまな疾患が考えられます。今回は直腸炎でみられる症状やその原因となる病気について紹介します。
直腸の役割
人間の腸は主に食物を分解し栄養素などを吸収する小腸と、水分などを吸収して便を作る大腸に分かれています。直腸は大腸の最終地点にあります。直腸は大腸で作られた便を溜めて、排便に備える役割を担っています。
直腸炎で見られる症状は?
直腸炎は何らかの病気によって直腸の粘膜に炎症が起きている状態です。排便時や便そのものに、次のような特徴的な症状がみられます。
- 排便時の痛み
- 血便
- 粘液のような便
- しぶり腹(便意があるのに出ないため、何度もトイレにいくような状態)
直腸炎が起きていれば必ず上記の症状が出るわけではなく、原因となる疾患によって症状は異なっていきます。
直腸炎の原因は大きく分けて3つ

直腸炎の原因となる病気は大きく分けて3種類あります。以下に分類を紹介します。
- 感染症
- 特発性炎症性腸疾患
- 放射線直腸炎
この中で感染症は性交渉による感染症と一般的な感染症とに分けられます。特発性炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎やクローン病といった原因不明の病気が挙げられます。
放射線直腸炎はがんの治療で放射線治療を行っている場合に発症する直腸炎のことを指します。
直腸炎を引き起こす病気の特徴
直腸炎はその原因となる病気によって症状も異なります。直腸炎を招く病気の特徴を紹介しますので、参考にしてみてください。
性感染症
性感染症では感染した細菌やウイルスの種類によって症状が異なります。
例えば淋菌や単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどが原因となる直腸炎では、排便時などに強い痛みを伴うとされています。また単純ヘルペスの場合は肛門周囲に水疱やただれのようなできものが生じるのも特徴です。
赤痢アメーバ症は細菌やウイルスではなく、原虫という微生物によって引き起こされる疾患です。痛みは少ないですが、粘液のような便や血便が出るといった特徴があります。
一般感染症
一般的な感染症ではカンピロバクター、サルモネラ菌、赤痢菌による感染症で直腸炎を生じるとされています。
カンピロバクターやサルモネラ菌は食中毒を起こす菌として知られています。この場合は直腸だけでなく、結腸や回腸など大腸全体に影響を及ぼします。下痢が主な症状です。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症を生じさせる原因不明の病気です。粘液のような便や血便、下痢、しぶり腹が主な症状とされています。
20~40代の成人に多い病気で、重症になると貧血や頻脈などの全身的な症状も引き起こすとされています。
クローン病
クローン病は潰瘍性大腸炎と同じく原因不明の病気です。小腸や大腸に炎症や潰瘍を引き起こします。
下痢や腹痛などの症状が特徴ですが、発症初期に肛門の周囲に潰瘍や痔ろうがみられることもあります。そのほか口内炎や関節炎など直腸に関連する部分以外にも症状が現れるのも特徴です。
クローン病は、20~30代前半の男性に比較的多くみられる疾患とされています。
放射線直腸炎
前立腺がんや子宮頚がんの放射線治療後に生じる直腸炎で、放射線による直腸粘膜の早期障害が原因といわれています。症状は下腹痛、下痢、下血が主で、放射線照射後、3-7日後に発症することが多いです。
ほとんどは、照射を中止すれば症状が寛解する一過性のものです。これとは別に、照射後半年から一年後に発症する晩期障害があります。放射線による血管障害が原因となり、潰瘍形成、出血などの症状が重く表れます。時に腸管の狭窄が生じて腸閉塞が起こり、重症化します。
まとめ
直腸炎は便の状態や排便時の痛みなどの特徴があります。また多くの原因が考えられ、全ての病気で症状が同じではありません。全身に関わる病気が背景に隠れている場合もあるので、直腸炎と疑われるときはお近くの消化器内科などを受診しましょう。