お酒を飲んで酔ってしまったときなど、ろれつが回らずうまく話せない…なんてことはよくありますが、お酒を飲んでいないのにろれつが回らずうまく話せなくなったとき、これは何か病気の前兆やその病気の症状であることが考えられます。では、ろれつが回らなくなる病気とは一体どのような病気が考えられるのでしょうか。

目次

ろれつが回らないとき

人間は、話をするとき脳からの指令に基づき言葉を発します。これは、言語中枢のある脳やそれを伝える脳神経、また言語を発するのに必要な神経や筋肉のある口や舌・顔面の動きが正常に働いて初めて言葉となって現れます。

しかし、言葉を発するのに必要な脳・神経・筋肉のどこかに異常があった場合、頭で思い描いているような正しい発語や発声ができずうまく話せなくなってしまいます。これをろれつ障害構音障害といいます。

ろれつが回らなくなってしまう原因は?

首を抑える男性

脳血管障害

ろれつが回らなくなってしまう場合、原因として一番に考えられるのは脳血管障害です。

脳血管障害には、脳内の血管が出血してしまう脳出血、血管が詰まってしまう脳梗塞、脳のくも膜という部分が出血してしまうくも膜下出血があります。

脳は生命や身体機能の中枢部分でもあり、脳の場所によって体温調節や運動機能・言語・視覚などの役割があります。脳血管障害によって発声・発語に関わる口や頬などの筋肉やそれを支配する脳神経がダメージを受けると、言葉が出づらくなる、ろれつが回らずうまく話せなくなるといった症状が現れることがあります。

脳血管障害では、この構音障害のほかにダメージを受ける部位によっては失語症と呼ばれる言語障害があらわれることもあります。詳しくは「脳梗塞や脳出血の後遺症、言語障害はなぜ起こる?」でも解説しています。

また、脳血管障害のほかに髄膜炎脳腫瘍外傷による損傷などが原因となることもあります。

筋肉や神経の障害

言葉を発するには、口唇・舌・咽喉などの筋肉とそれらを支配する神経が正常に動く必要があります。しかし、重症筋無力症進行性筋ジストロフィーなどの神経筋疾患では、筋力の低下や筋の萎縮によりこれらの筋肉がうまく動かすことができず、ろれつ障害や不明瞭な発語となることがあるのです。

パーキンソン病多発性筋炎などでも、筋力の低下により症状が現れます。

球麻痺

球麻痺の球とは、延髄と呼ばれる部分をさしています。この延髄の病変により脳神経が障害されることによって、言語や嚥下(飲み込み)障害や顔面筋の麻痺などをきたした状態を球麻痺とよびます。

筋委縮性側索硬化症(ALS)多発性硬化症では、ほとんどの場合に球麻痺症状が認められ、舌の萎縮や筋の萎縮によってろれつの回りにくさや言葉の不明瞭さが現れます。

小脳疾患

脊髄小脳変性症小脳腫瘍・小脳梗塞などでは、筋の協調を制御する機能が障害されてしまうため、運動失調の症状があらわれます。運動失調では、歩行時に体幹が大きくぶれたり千鳥足になったりといった症状がみられますが、そのうちのひとつにろれつが回らなくなるという症状もみられます。

舌や口唇、咽喉の病気

がんや腫瘍などにより発声に必要な器官そのものに原因がある場合、動きが悪くなることでろれつ障害があらわれます。

過労ストレス

過労や過剰なストレスは自律神経失調症を引き起こしやすくなります。自律神経のバランスが崩れると、様々な身体の不調が現れますが、そのひとつにろれつが回りにくくなるという症状も含まれます。

またストレス性障害不安障害など、過度なストレスや対人恐怖・精神的緊張状態によって吃音(きつおん:どもり)の症状が出る場合も、ろれつが回らないといった症状を自覚することがあります。

まとめ

精神的疾患やストレスが原因ではないのにろれつが回らないときは、脳・神経・筋肉のいずれかに障害や異常がある可能性が高いです。脳血管障害や球麻痺の場合、症状が進行すると生命の危険に関わることもあるので、何か違和感があった場合や喋りにくさの自覚がある場合は、早めに病院を受診しましょう。