私たち人間の体温は外気に関係なく、ほぼ一定の範囲を維持するように調整されています。しかし、病気や健康障害によって体温が上昇することがあり、なかには高熱ではなく、微熱が続くこともあります。
微熱が続く状態には、どのような原因があるのでしょうか？今回は、微熱が続く原因と病気について、詳しく解説します。
発熱のメカニズムを知っていますか？
人間は食べたものを代謝することによって熱を生み出しています。そしてその体温は脳の視床下部という部分で、身体にとって最適な体温になるように調節されています。
人間の体温は、身の回りの環境温度の影響を受ける皮膚温度と、体温調節により一定に調節されている、環境温度の影響を受けにくい深部温度に分類されます。
ここで、正常体温（深部温度）は37℃前後に設定されていますが、感染症や炎症、がん、アレルギーなどにより、発熱を引き起こす物質が体内で産生されたり体外から取り込まれたりすると、視床下部から「熱を上げて病原菌を撃退するように」という指令が身体の各部に伝わります。
この指令によって皮膚の血管の収縮や鳥肌、筋肉の震えなどの反応が起き、体温が上昇します。
発熱は頭や関節の痛み、全身倦怠感などの不快な症状を伴いますが、一方では免疫力を活性化させる有益な生理的反応なのです。
微熱とは？
人間の正常体温（深部温度）は37℃前後といわれます。細胞の代謝を活発に行い、なおかつ細胞が破壊されない適温が37℃前後と考えられています。
一般的に、脇の下や耳で行う通常の体温測定では、外気の影響を受けるため、深部の温度（37℃）より1℃前後低くなります。
微熱とは、一般的に37℃～38℃の発熱を指します。ただし、体温には年齢や活動量などの個人差や日内変動（早朝が最も低く、夕方に最も高くなる）もあるということを頭に置いておいてください。
微熱が続く3つの原因
１．感染症や炎症など、病気が原因となるもの
発熱の原因の多くは、何らかの病気によるものです。非常に多くの病気が発熱の原因となります。
これらの病気の場合は、発熱以外の症状を伴うのが一般的で、症状の進行や変化が見られます。感染症の場合は病気の発症時に38℃以上の高熱になることもありますが、発熱には個人差があるため比較的軽度の発熱（微熱）で経過する場合もあります。
２．妊娠、女性ホルモンの影響、更年期障害などによるもの
女性の場合は、生理周期による体温の変動があります。
排卵後から生理が始まるまでの時期には、黄体ホルモンの分泌が盛んになります。この時期は妊娠に備えて、子宮内が温かい環境になるように体温が高くなります。このホルモンの影響によって微熱が出る場合があり、人によっては38℃近い発熱となることもあります。
微熱とともに身体のだるさや寒気など風邪によく似た症状を伴うこともありますが、これらの症状（PMS：月経前症候群）は、生理が始まると軽快し、平熱に戻ります。また、生理予定日を過ぎても生理が始まらず、微熱が持続する場合は、妊娠の可能性があります。
さらに、更年期障害も微熱の原因となることがあります。女性は、閉経を挟んだ45歳～55歳の更年期になると、卵巣で分泌される女性ホルモンの量が減少します。女性ホルモンの変化によるホルモンバランスの乱れによって自律神経に影響することで、微熱のほか、倦怠感、ほてり感、発汗、頭痛などが引き起こされます。
最近では男性でも更年期障害があるといわれており、男性ホルモンの低下により微熱や倦怠感などのほかに、抑うつ感、EDといった症状が出現するとことがあります。
３．心因性？特別な病気がないのに続く微熱とは？
前述した病気やホルモンの影響がないにも関わらず、微熱が続き原因が特定できないケースがあります。
明らかな病気がないことから、本態性高体温や習慣性高体温症、体質性高体温などの名称で呼ばれ、これらの微熱は病的な意義はないとされていました。
しかし、微熱とともに全身のだるさや気分不良、不眠、食欲不振などの自覚症状を伴うものの中には、自律神経の乱れやストレスに起因する発熱があると考えられるようになりました。
子供が「学校に行きたくなくて熱を出す」というケースのほか、働き盛りの成人が慢性的なストレス状況によって発症するケースも増えています。
これらの心因性の発熱は病院の検査では特に異常は認められず、感染症などによる発熱と異なり、病原体と戦おうとする発熱物質（炎症性サイトカインとプロスタグランジンE2）は関与しないので、これらに作用する一般的な解熱剤は効かないという特徴があります。
まとめ
微熱とは一般的に37℃～38℃の発熱を指しますが、体温には個人差があります。
感染症や炎症による発熱が人によっては微熱で経過する場合もあり、これらの病気のほかにもホルモンの影響や心因的なストレスによって微熱が続くことがあります。