思春期や若い頃は新陳代謝が激しく、いくら食べても太らなかったという方もいらっしゃると思いますが、年齢を重ねるごとに段々とやせにくくなります。ところが、何となく体の重だるさと微熱が続き、ダイエットをしているわけでもないのにやせてきたという場合には、何か病気が隠れているかもしれません。
そもそも、なぜ痩せるの?
痩せよう(ダイエット)とする時には、「食事制限をする」「運動療法だ」「基礎代謝を上げる」などと言い、始めますが、食べた分の摂取カロリーよりも消費カロリーの方が多くないと実際には痩せてはいきません。
普段通りの生活を送っているのに痩せていく場合は、自分では自覚していない所でカロリーが勝手に消費されているということが考えられます。
微熱が下がらない上に痩せてくる原因って?
基礎代謝量が上がってしまう病気や、食べたいのに食物が詰まって食べられない・体が重だるくて食欲が湧かない・栄養分が吸収できないなどの病気について解説します。
ホルモンの異常による病気
身体の働きを整える役割を持つホルモンは、多すぎたり少なすぎたりすると、身体に様々な異常を与えます。中でも、微熱と体重減少がみられる病気としてはバセドウ病が挙げられます。
バセドウ病:甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
バセドウ病は、甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、その機能(熱エネルギー産生・発育促進・代謝促進)が高ぶり進む病気ですので、沢山食べてもほとんどが熱エネルギーに変わってしまいます。
その結果、体重が減少します。
20~40代の女性に多く、1,000人に1人の割合でみられます。女性は男性の4~5倍かかりやすいといわれています。
バセドウ病の特徴は、
バセドウ病の患者さんはいつも全力で走っている状態であると想像すれば、本人の辛さがイメージできます。
治療により、症状は軽快しますが、寛解(治療により症状が安定した状態)と増悪を繰り返す事が多い疾患でもあります。
血管が炎症を起こす病気
全身を巡る血管が炎症を起こしてしまう場合があります。血管の障害は、炎症の起こる血管の大きさによって様々な症状を引き起こしますが、発熱や体重減少もみられることがあります。
高安病:たかやすびょう
高安病(高安動脈炎)は、大動脈とそこから分かれた全身の大きな血管に炎症が起こる病気です。厚生労働省により、難病に指定されています。原因は分かっていませんが、何らかの感染症がきっかけで起こるのではないかと考えられており、今も研究が続いています。
高安病では、下記のような症状がみられることがあります。
- 発熱
- 全身の倦怠感
- 体重減少
- 脈が触れない(腕に栄養を与える血管に障害が生じた場合)
高安病の治療では、ステロイド等を用いて炎症を抑えます。治療法の進歩によって症状が軽快する場合が増えてきていますが、高血圧や腎臓障害などの合併症が生じた場合には注意が必要です。
悪性腫瘍(がん)
全身のあらゆる所にできる悪性腫瘍は、治療せずに放置すると死に至る病気です。現在の国民の2人に1人はがんを発症するといわれ、国民病の一つとなっています(厚生労働省より)。
がんの症状は部位や進行度にもよって異なりますが、進行した場合は一般的に
- 腫瘍熱(しゅようねつ)といわれる発熱
- 体重減少
- 倦怠感
- 食欲低下
などの症状が出ます。
がんは、発症部位や腫瘍の種類、発見した時のステージ(癌の進行度)により、余命にかなりの差があります。早期に発見された場合は治療によって完治させることも可能なので、少しでも異変を感じた場合は早めに受診することをおすすめします。また、定期的に健康診断や各種検診を受けることも重要です。
悪性リンパ腫

悪性リンパ腫とは、首・脇の下・足の付け根などのリンパ節が腫れる血液のがんのことをいいます。
悪性リンパ腫の特徴は、
- 発熱
- 体重減少
- 盗汗(とうかん:ひどい寝汗)
- 扁桃や脾臓の腫れ
などがあります。
悪性リンパ腫は、医学の進歩によりかなりの確率で治癒する病気となりました。
もし診断された場合には、医師とよく相談した上で積極的に治療を受けることをおすすめします。
まとめ
今回、微熱が続いた上に痩せていく病気について解説しました。どの病気も、きちんと治療を受ける必要がある病気です。
確定診断を受けると、場合によっては気分の落ち込みなどによって体力や抵抗力を低下させ、さらに症状を悪くさせてしまうこともあるかもしれません。お近くの内科もしくは診療科(甲状腺・血液・がんなど)の担当医とよく相談をし、適切な治療を受けてください。