急性冠症候群という言葉を知っていますか?心臓につながる血管に血栓ができ、血液の流れが悪くなったり、止まってしまったりすることで起きます。心臓に負担がかかることで急性心筋梗塞などを招き、大変危険です。今回は急性冠症候群について紹介していきます。

目次

急性冠症候群とは

冠動脈は心臓を取り巻き、心臓に血液を送る動脈です。その冠動脈内で動脈硬化が起きると、不安定プラーク(血管の内側に溜まった悪玉コレステロールなどの沈着物)が現れます。このプラークは薄い膜で覆われていて柔らかく、破れたり剥がれたりすると急激に血栓生じます。その血栓によって冠動脈の内側のスペース(内腔)に狭窄閉塞が起きて発症することを急性冠症候群といいます。

急性冠症候群の中には、急性心筋梗塞や不安定狭心症、心原性(心臓の病気が原因となる)突然死などを含みます。男性に多く、心臓発作を起こした半数は病院へ搬送される前に死亡するとも言われています。

急性心筋梗塞が起きるメカニズム

不安定プラークは大きく破れると、大きな血栓を作ります。血栓によって血管内腔が完全に塞がれてしまうと、血液は心臓に流れなくなります。そうして心筋に壊死が起きると、急性心筋梗塞を招きます。詳しくは「心筋梗塞はどんな症状が出る?原因や合併症について」をご覧ください。

不安定狭心症が起きるメカニズム

不安定プラークが小さく破れた場合、血管内腔を一時的塞いだり、狭くしたりします。この状態によって不安定狭心症が起きやすくなります

急性冠症候群の症状

胸を押さえて苦しむ男性

不安定狭心症、心筋梗塞によって症状は若干異なります。

不安定狭心症では胸が締め付けられる感じや重苦しい感じ、息切れ疲労胸の痛みが現れます。血栓が関与していない安定狭心症と比べて症状は強く、頻度も多くなるのが特徴です。安静時や軽い運動の後にみられることが多く、症状の数日~数週間後に心筋梗塞を起こすこともあります。

心筋梗塞胸から背中、左の腕、顎にかけて痛みが広がり、不安定狭心症の痛みよりも強く長時間続きます。失神冷や汗、吐き気、息切れ動悸、焦燥感、唇や手足の蒼白などの症状がみられることもあります。一方で、胸の痛みが出ないケースもあります。

急性冠症候群の治療法

急性冠症候群が起きた場合は緊急治療が必要です。急性冠症候群は早めの対応が重要なので、症状を感じたらすぐに病院へ行きましょう。また周囲に見かけたら、すぐに受診をすすめるか、必要な場合は救急車を呼びましょう。

薬物治療

心筋の壊死に対する治療にはβ遮断薬、硝酸薬、カルシウム拮抗薬などの抗狭心症薬、冠動脈内に生じた血栓に対する治療にはアスピリンやヘパリンなどの抗血栓薬が用いられます。このほか心不全不整脈、コレステロールを低下させて血管の状態を改善する薬物治療も行われます。

補助循環

心臓の働きを助ける治療として、大動脈内バルーンパンピング(バルーン付きのカテーテルを足の付け根の動脈から大動脈に挿入し、バルーンを膨らます・縮ますことを繰り返して心臓の収縮を助ける)が行われます。

手術治療

冠動脈の閉塞を除去するために。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)冠動脈バイパス術(CABG)などが行われます。

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)

先端にバルーンの付いたカテーテルを太い動脈から血管が塞がっているところまで進め、バルーンを膨らませて塞がっている動脈を開通します。ステント(金属でできたメッシュ状の筒)を血管内に挿入して血管が詰まることを防ぐようにする場合もあります。

冠動脈バイパス術(CABG)

塞がっている冠動脈の先に他の静脈や動脈をつなげて、塞がっている部分を通らずに心筋まで血液が流れるようにする手術です。

急性冠症候群の回復・予防でできること

心臓発作を起こした後は安静に過ごす一方で、心臓リハビリテーションに取り組みます。リハビリを行うことで体力や持久力の回復を図り、歩行や日常生活の動作を取り戻していきます。また急性冠症候群後は軽いうつ症状がみられることがあり、不安や気になることについて医師や看護師、家族などへ相談しましょう。

また回復・予防には生活習慣の改善が欠かせません。ストレス疲労喫煙は避けるようにして脂分の多い食事は控え適度に運動しつつ、心臓に負担をかける過度の運動は控えます。

まとめ

急性冠症候群動脈硬化によって引き起こされます。心筋梗塞や不安定性狭心症など、心臓発作によって死亡する確率は高くなります。動脈硬化の進行を予防するように日頃から食生活を整えたり、適度に運動を続けたりして、生活習慣を見直すことが大切です。