インフルエンザの治療薬には、いくつかの種類があります。タミフル、リレンザ、イナビルなどの名前は聞いたことがあっても、その違いをきちんと理解していますか?今回の記事では、インフルエンザ治療薬についての基礎知識と特徴を解説します。

目次

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5種類のインフルエンザ治療薬

1.オセルタミビルリン酸塩(タミフル)

タミフル」という商品名でお馴染みです。A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。カプセル剤、小児では散剤による経口投与が一般的です。

症状が出始めたら48時間以内に服用するのが効果的です。逆に言うと、症状が出てから48時間を超えた患者が服用しても効果がほとんどありません。48時間を超えた患者に無駄な処方がされないよう注意が必要になります。

一時期、タミフルと異常行動の関係について話題になりました。この記事の後半でも取り上げていますが、さらに詳しく知りたい方は「インフルエンザ治療薬「タミフル」どう使えばいい?」の記事をご覧ください。

2.ザナミビル水和物(リレンザ)

こちらは「リレンザ」という商品名でご存知の方が多いと思います。A型・B型インフルエンザに効果があります。

リレンザは吸入薬で、専用の吸入器を使って1日2回・5日間にわたって吸入します。インフルエンザウイルスは呼吸とともに吸い込まれ、気道で増殖するため、粉薬を直接気道に届けることで即座にウイルスの増殖を抑えることができます

症状を早く緩和するために、最初の1回はできるだけ早く吸入することが大切です。病院や薬局でリレンザを受け取ったら、できればその場ではじめの1回分を吸入するのがよいでしょう。

リレンザの副作用としては下痢発疹吐き気動悸などが報告されています。

3.ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル)

「イナビル」という商品名で処方されます。A型・B型インフルエンザの治療に効果があり、リレンザと同じ吸入薬です。

イナビルの最大の特徴は、1回吸入するだけで治療を完結させる点にあります。10歳以上は2容器2つを、10歳未満は1容器を吸入するだけで、継続した治療は必要ありません。ただし、1回の治療でしっかりと薬を吸入する必要があるので、病院で医師や看護師の指導を受けながら吸入するのが安心です。特に小さなお子さんの場合、保護者の方も注意して見てあげてください。

イナビルでは、下痢、悪心胃腸炎蕁麻疹などの副作用が報告されています。

発熱

4.ペラミビル(ラピアクタ)

日本ではラピアクタという商品名です。点滴注射薬のため、カプセルを飲んだり粉薬を吸入したりするのが困難な患者さんにも投与することができます。

300mgを15分以上かけて一度だけ点滴静注します(投与する量は、年齢や症状によって減量します)。基本的には一度の投与で治療を完結させますが、症状が重い患者さんの場合は1日1回600mgを何日かに分けて投与することもあります。

タミフル同様、発症から48時間以内に服用した場合の有効性が確認されています。

ラピアクタによる副作用では、下痢、白血球減少、嘔吐、蛋白尿などが認められています。

5.アマンタジン塩酸塩(シンメトレル)

「シンメトレル」という商品名で販売されています。インフルエンザウイルスが粒子を構成できなくする働きを持ち、A型インフルエンザに対してのみ効果があります。

1日に400~1200mgを経口投与しますが、現在この薬はアメリカでは使用が禁止されています。というのは、この薬に対して耐性を持つウイルスが発生し始めているからです。シンメトレルを服用した際に解熱・症状緩和にかかる時間が徐々に延びているという報告があり、日本では現在も使用されることはほとんどありません。この薬は、現在は主にパーキンソン病の治療薬として用いられています。

以上のインフルエンザ薬の特徴をまとめると、以下のようになります。

商品名 有効な型 服用方法 服用量 主な副作用
オセルタミビルリン酸塩 タミフル A・B 経口 1日2回/5日間 動悸、血圧低下、
蕁麻疹血便
腹痛など
ザナミビル水和物 リレンザ A・B 吸入 1日2回/5日間 下痢発疹
吐き気、動悸、
呼吸困難など
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 イナビル A・B 吸入 1回のみ 下痢、悪心
胃腸炎
蕁麻疹など
ペラミビル ラピアクタ A・B 点滴 1回のみ 下痢、嘔吐、
白血球減少
蛋白尿など
アマンタジン塩酸塩 シンメトレル Aのみ 経口 1日40~120mgを
分割投与
ショック症状、
心不全、肝機能障害など

厚生労働省|インフルエンザQ&Aなどを参考にいしゃまち編集部作成)

インフルエンザ治療薬で異常行動が起こる?

以前、タミフルが異常行動を起こすとして話題になったことがありましたが、厚生労働省医薬品等安全対策調査会は「タミフル服用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴い発現する場合がある」と結論づけています。他の薬についても異常行動が見られたとの報告がありますが、インフルエンザ治療薬と異常行動との明確な因果関係が確認された例はありません。また、単なる解熱剤を服用していただけでも異常行動が見られた例もあります。

どんな薬を服用していたとしても、特に小さなお子さんなどの場合は事故を防ぐため、発症から2日間は患者さんが1人にならないように配慮すると安心です。小さなお子さんの場合、できれば熱が下がるまで保護者の方がついてあげると良いでしょう。

予防的投与を知っていますか?

インフルエンザの予防には、早めに予防接種を受けておくことが大切です。

実は、今回紹介したような治療薬も、インフルエンザ予防のために服用することができますが、自費診療となります。タミフル・リレンザ・イナビルがその対象です。身近な家族が感染した時などの水際作戦として有効です。

予防的投与を行う際は、通常の治療の時とは用法・用量が異なります。医師の指示に従い、正しく服用しましょう。

ベッド

どの薬品も用法用量を守って正しく使おう

1回で治療を完結させるイナビルやラピアクタを除くと、病院で処方されたインフルエンザ治療薬がまだ残っているけれど症状が良くなってきた、ということがよくあります。ですが、処方された治療薬は必ず最後まで使いきりましょう。インフルエンザでは、症状がなくなってもウイルスはまだ体内に残っています。そのため、治療を中断してしまうと再びウイルスが増殖を始めてしまう危険性があるのです。

医師の指導に従って正しく服用することと、服用していて少しでもおかしいと思うことがあったらすぐに医師に相談することが、何よりも大切です。