みぞおちのあたりに、突然痛みを感じることはありませんか?その痛みを「胃痙攣(けいれん)」と呼ぶ人もいるでしょう。しかし実は、「胃痙攣」という言葉は、医学的にはあまり使われません。多くの場合は「上腹部痛」という言い方をします。一般にいわれる胃痙攣の原因は「胃」に限らないのです。

さて、この上腹部痛の原因となる病気には、実に様々なものがあります。ここでは、それらの病気について解説します。

目次

「胃痙攣」は、正式な病名ではありません

胃の壁にある筋が緊張することで、痙攣するような痛みを生じる症状を「胃痙攣」と呼ぶ人が多いようです。しかし、胃痙攣という言葉を使う医師は多くありません。消化器内科を受診し、「胃痙攣なんです」と伝えると、医師に「そういう病気はないんですよ」と言われることもあります。みぞおちの辺りが痛みますなど、痛む部位をしっかりと伝えた方が医師には分かりやすいのです。

消化器内科を受診するときに覚えておきたいポイント

困り顔の男性-写真

みぞおちの痛みや胃痙攣を感じたら、消化器内科を受診しましょう。消化器内科では、医師に以下のようなことを伝えてください。

  • いつから痛むのか
  • どの程度痛むのか
  • どんな風に痛むのか(重い感じ、刺すような感じ)
  • 痛みは繰り返すのか
  • 痛みはずっと続くのか
  • 歩くと響くのか
  • 吐き気はあるか
  • 何か変わったものを食べたか
  • 最近旅行に行っていないか
  • 周囲に同様の症状の人はいないか
  • 過去に同様の症状はあったか

以前に同じような症状があったという方は、そのときにどうしたのか、なんと診断されたのかを伝えると、より早く診断に至る可能性があります。

原因は?胃痙攣上腹部痛を引き起こす主な病気

首をかしげる医師-写真

上腹部痛は、強いストレスにより一時的に起こることもあります。しかし、胃や腸の病気が原因となっている可能性もあるので、注意しましょう。ここでは、胃痙攣を引き起こす代表的な病気を紹介します。

急性胃炎

急性胃炎は、胃の粘膜(内側の膜)に炎症が起きる病気です。症状では、上腹部やみぞおち辺りの痛み・胸やけ吐き気などがみられます。急性胃炎の原因には、以下のようなものがあります。

  • コーヒーや香辛料の摂取
  • 喫煙、生活習慣
  • 精神的ストレス
  • 薬剤アレルギー
  • 感染症

急性胃炎は、安静にすることで数日で改善します。しかし、炎症を繰り返すことで慢性胃炎へと移行することもあります。

慢性胃炎

慢性胃炎は、胃の粘膜が萎縮したり、粘膜の一部が欠けることで炎症を起こす病気です。症状は、上腹部やみぞおちの痛み・吐き気・嘔吐などです。炎症が軽い場合、無症状のこともあります。

日本人の約70%にみられるほど多い病気です。原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が大多数を占めます。このピロリ菌には、日本人の約50%が感染しており、40歳以上では約70%の人が感染しているといわれています(徳島県医師会より)。

ピロリ菌は、胃がん胃潰瘍の原因と考えられています。近年では、ピロリ菌に対しての除菌治療が行われています。ピロリ菌の除菌に関しては「ピロリ菌に感染したら?治療と除菌の方法とは」をご覧ください。

胃十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸(胃と小腸を繋ぐ管)の粘膜が傷ついたり、粘膜が欠ける病気です。主な原因は、ピロリ菌の感染です。胃潰瘍の約80%、十二指腸潰瘍の約90%がピロリ菌によるといわれています。(姫路赤十字病院より)

胃潰瘍では食後に痛みが現れますが、十二指腸潰瘍では空腹時に痛むのが特徴です。多くは薬物治療により改善します。しかし、粘膜に穴が開くほど悪化すると手術が必要となります。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合は、ピロリ菌の除菌治療が効果的です。

胃がん

胃がんは、胃の内側にある粘膜に発生するがんです。日本人に最も多いがんで、男性の約9人に1人・女性の約18人に1人が発症するといわれています健康の森より)。

胃がんは、胃の粘膜が刺激されることが原因で発症します。胃がんを引き起こす主なリスクには、ピロリ菌の感染・塩分の多い食事・飲酒・喫煙などがあります。

胃がんでは、以下の症状がみられます。

初期には症状がないことが多いため、定期健診で早期発見することが大切です。胃がんの検査については「胃がん検診のススメ!検査方法と料金・費用」をご覧ください。

急性虫垂炎

虫垂炎は、一般的に「盲腸(もうちょう)」といわれている病気です。腸の一部である虫垂と呼ばれる部位が、炎症を起こす病気です。みぞおちの辺りに痛みが生じ、進行すると右下腹部に強い痛みが現れるのが、典型的な症状です。ごく軽い炎症の場合、薬物治療のみで症状を抑えることもあります。しかし再発の可能性が高いため、基本的には手術で虫垂を切除します。

胆石症

胆石症は、肝臓やその付近の胆嚢(たんのう)・胆管という臓器に、胆石(コレステロールなどの塊)が生じる病気です。胆石の大半は、胆嚢にみられます。脂肪分の多い食事が原因となることが多いため、近年日本人に増加しています。胆石を持っていても、無症状の人がほとんどです。しかし、胆石が胆管を塞いでしまうことで、色々な症状が出ます。

胆石症では、食後にみぞおちの右下あたりに痛みが生じます。痛みは背中・肩・腰など上半身に広がります。悪化すると黄疸(おうだん)という症状が引き起こされ、皮膚や眼が黄色に変色したり、発熱がみられます。無症状の場合は治療は必要ありません。症状が進行すると、手術により胆嚢を切除します。

まとめ

胃痙攣・上腹部痛は、胃以外にも様々な臓器の異常のサインとして現れます。そして、原因を調べることで、病気に気付くことができます。気になるみぞおちの痛みを放置せずに、検査で原因を調べましょう。